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ドコモとソフトバンクの社長が交代、通信大手4社の戦略はどう変わる?

2021.02.20

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。ドコモ・ソフトバンクの新社長について話していきます。

※新型コロナウイルス対策を行っております

ドコモ・井伊新社長は固定概念を壊す風雲児?

房野氏:昨年末、NTTドコモの代表取締役社長に井伊基之氏が就任。そして、ソフトバンクの代表取締役副社長執行役員 兼 CTOの宮川潤一氏が、4月より同代表取締役社長執行役員 兼 CEOに就任すると発表されました。

 まずは、ドコモの新社長である井伊 基之氏にみなさんは取材されましたが、どのような印象ですか。

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 井伊基之氏

ソフトバンク代表取締役社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙氏

ソフトバンク代表取締役副社長執行役員 兼 CTO 宮川潤一氏

房野氏

石川氏:井伊社長とお話したところ、とても気さくな印象を受けました。ahamoの改定がインタビューの中で明らかになったりとリップサービスも旺盛で、「これからのドコモは大きく変わる」と印象づけられました。また、井伊社長がある程度自由に采配を振れる環境が整っているようにも感じました。個人的には、今までNTT東西への配慮でできなかった、「Softbank Air」(コンセントに挿せば工事不要で使えるおうちWi-Fi)に対抗する〝docomo Air〟に注目しています。一方で、KDDIやソフトバンクが恐れている「強すぎるNTTグループ」という構図になりかねないという懸念もあります。

Softbank Air

石川氏

石野氏:前社長の吉澤和弘氏(現NTTドコモ 取締役 特命担当)にdocomo Airについて質問した時は消極的な印象でしたが、ガラッと変わりました。

石野氏

法林氏:ドコモは従来、NTT東西の領域に立ち入ることへの気兼ねがありましたが、NTTから赴任した井伊社長は、今までの携帯電話会社の慣習を取っ払っている。これまでの固定概念を覆してくれる、そんな期待を持てました。

法林氏

石川氏:いい意味でドコモが変わる気がしています。ahamoの発表会に若手社員が登壇したのも井伊社長の発案という話ですし、社長が変わって新しいことができるようになったなと感じます。ドコモの社員としてもポジティブな印象の人が多いようです。

石野氏:行動にスピード感がありますよね。

法林氏:ドコモの社員から「いい人だ」というウワサを聞いていましたが、実際に会ってみて納得しましたね。気づかないうちに「携帯電話会社はこうあるべき」と固着していた部分を、発想を変えるべきだと思えました。

ただ、NTTの人だなと感じるのは、他社がドコモの完全子会社化をどう警戒しているのかが理解されていないようにも見受けられました。それでも、今までの社長とはまた違ったタイプの人ではあるので期待しています。

石川氏:ahamoのプレゼンもうまかったですし、このキャラクターが前面にでると面白くなると思います。

石野氏:NTT持株会社との連携もできるという意味では、適任でしょうね。

法林氏:これまでNTTとドコモは会社として別の方向を向いていましたが、それが1つになるというところで明確な指針を示せたと思います。

石野氏:もともとNTTコミュニケーションズにいたこともある人なので、2021年夏に予定される、NTTコミュニケーションズのNTTドコモ子会社化もスムーズにいくでしょう。

石川氏:これからはただ回線サービスを販売するだけではなく、決済サービスなども含めた総合力の戦いになる。そういう意味だとすべてを自分たちで作るのではなく、いろいろなパートナー会社を伴う「通信キャリア経済圏」での戦いでもあるので、NTTグループは様々な回線やソリューションを統合していくでしょう。ただし、ユーザーに楽しいサービスを提供できるかとなると、そこはまだKDDIやソフトバンクのほうが上手な印象もあります。魅力的なセットサービスを作れるかが勝負でしょう。

石野氏:井伊社長から「PayPay」についての話が出たのですが、率直にドコモの強み・弱みを把握されている印象です。いらないサービスもたくさんあると明言していたので、そこは整理されるかもしれません。

PayPay

法林氏:注力するサービスとそうでないサービスの区別がはっきりしそうです。金融が弱いことを認識しているので手を入れてくるでしょうし、これからの井伊社長の手腕に注目です。

石川氏:今までのドコモはどこかと協業しながらドコモ色を出そうとするも、専門分野でないためにいまいちな結果に終わることがありました。そういう無駄なサービスをスパっとカットする、そんなタイミングなのかもしれません。
 その点KDDIは積極的に協業他社と手を組んで、人気のサービスをより安く、使いやすく提供しています。ソフトバンクはLINEやYahoo!と組んで「自前主義」になる可能性もあるので、そこをユーザーに評価されるかがポイント。楽天モバイルは完全に自前主義でやってきていて、4社の戦いが今後どうなるかは見ものです。

石野氏:ソフトバンクはPayPayのように話題性のあるサービスを実現するなど、自前でサービスを作るのがうまいですよね。ドコモも変われるのか? といったところでしょう。

石川氏:「d払い」に関しては、ドコモユーザーのみに焦点を当てても十分やっていけると思います。一方、KDDIの「au Pay」は、FeliCaでもApple Payでも使えて、QRコード決算もできる使いやすいサービスで、もっと衆知されてもいいんですけど、少々地味な展開になっています。

au Pay

石野氏:au Payは本当に便利なサービスで、僕はじぶん銀行をメインで利用しています。ただ、キャンペーンの内容や期間が利用者にわかりにくいという問題はあって、そこはもう少しうまくやってほしいところですね。

法林氏:ポイントだけで自動的に運用できるサービスをやっている中で、auは成績がいいそうです。金融は楽天が強いですが、KDDIもうまくやっているんじゃないでしょうか。

石野氏:各社がキャンペーンをバラバラに行うので、例えばこのドラッグストアはいまどの決済サービスのポイント還元率が高いんだっけと、いちいち調べなければならない。これがわかりにくいです。

法林氏:調べるのが面倒くさくてサービスから離れてしまうこともあるからね。もう少し整理してほしいところです。

石川氏:各社決済サービスだけじゃなくて、ショッピングモールでの競争も激化すると思います。楽天モバイルはそこがグループの強みなので狙っているでしょう。auマーケットも頑張っていると思います。

ソフトバンクの新社長は驚きの人選!

房野氏:さて、ソフトバンクの宮川潤一氏が今年4月から社長に就任すると発表されました。こちらにはどのような印象をお持ちですか。

石川氏:びっくりの人事でしたね。もともと副社長として榛葉淳氏と今井康之氏が抜け出した形で、コンシューマー向けの会見は榛葉さん、法人向けは今井さんという形でした。宮川さんは技術畑の人で、違う方向にいたのがいきなり社長になります。

石野氏:本当にびっくりしましたね。

石川氏:グループ会社で社長経験もあるので、そういう意味では妥当な人事ではありますが。これからは技術がわかっていないと務まらない時代にはなるので、そういう意味での人選なのかなとも考えられます。

法林氏:宮川さんといえば、ADSLサービスの先駆者だった「東京めたりっく通信」の社長というイメージが強いですね。これがのちのちYahoo!BBになり、ソフトバンクになっていくわけです。そんな経歴の人がソフトバンクの社長になったと考えれば、ちょっと感慨深いかな。

石野氏:東京めたりっく通信の前はご自身で「ももたろうインターネット」を起業されてますね。いわゆる通信畑出身の方です。

房野氏:宮川氏が社長になられたことで、ソフトバンクに何を期待していますか。

石野氏:ソフトバンクがそこまで技術系を重視しているとは思っていなかったので、意外な人選でした。宮川さん本人もそうおっしゃっていましたが(笑)

石川氏:営業の会社というイメージが強いので、意外な人事ではありますが、宮川さんはHAPSモバイルの代表をやられていたりと、未来の技術に対する知見も豊富です。これからの同社の成長を考えての人選なのではないでしょうか。

法林氏:古くから通信を見てきた技術的な裏付けがある人なので、営業畑出身の人とはベクトルが違う感じですかね。僕も意外でした。

石野氏:そうですね。宮川さんが新料金プランをプレゼンしているイメージがないです。

法林氏:否定的な意味ではなく、経営者っぽくはないですね。

石野氏:ほかの会社もここまで純粋な技術者らしい人が社長になることはなかったかなと思います。ドコモの井伊さんは理系出身ですが、CTOからダイレクトにCEOになるのは驚きです。

4キャリアの社長たちが描くそれぞれの方針とは

房野氏:新しく社長になったドコモの井伊氏、これからなるソフトバンクの宮川氏に加え、KDDIの高橋誠氏、楽天モバイルの山田善久氏らの今後の舵取りとして期待されることはありますか。

法林氏:ドコモの井伊さんは先ほどの話でも出た通り、携帯電話会社としての枠組みを取っ払ってくれる期待感はあります。ソフトバンクは新技術を取り入れる力はもともとありますが、営業を重視していた印象はあるので、そこが変わるかもしれない。KDDIの高橋さんは、グループ内で「DDI」としてのカウンターカルチャー、ヤンチャ感をどこまで引き出せるかじゃないですかね。

石川氏:NTTグループの巨大化が進む中で井伊さんは大きな動きをするでしょう。KDDI内ではNTTへの対抗心が芽生えているとのウワサを聞いていますし、モチベーションは上がっているはず。ここ数年は平穏でしたが、巨大組織と戦う緊張感がKDDIに生まれている中、高橋さんがどこまで頑張れるかでしょう。ソフトバンクはもともと営業がうまい会社で、新しい技術に対する嗅覚があるので、宮川さんが社長になってより技術的に新しいものを取り込んでくれば面白い。楽天モバイルの山田さんはもう、とにかく頑張れの一言です。

石野氏:楽天モバイルとしては三木谷さんの印象がどうしても強くて、山田社長はネガティブな発表ばかり任されている気がします。

石川氏:楽天モバイルとしては、タレック・アミン氏だけじゃない、技術に強い人が必要な気もしますね。

法林氏:山田さんはもともと経理畑の人なので金勘定は正確でも、通信のビジョンを描けるかといわれれば疑問。今は三木谷さんが風呂敷を広げて、タレック・アミン氏が技術担当で、商売上の帳尻合わせを山田さんがしている形になってしまっています。人の良さはすごく感じるのですが、通信会社の社長としては厳しい印象もあります。

石野氏:社長なのにCEOじゃないところに、権限の少なさを感じてしまいます。

法林氏:もし三木谷さんが直々に楽天モバイルを指揮して、山田さんのような立場の人がいなかったらと考えると、それはそれでまずい気もします。コントロールできる人がいるのは大切です。

石川氏:山田さんを支える、業界を熟知している技術系に強い人が楽天には必要でしょう。

……続く!

次回は、2021年のハイエンドスマホのトレンドを話し合う予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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