「北枕は縁起が悪い」などと耳にしたことがある人は多いでしょう。しかし、なぜ北向きに寝ると縁起が悪いと言われるのでしょうか?北枕がタブーとされる理由や風水的な意味、さらには、北以外の方角に枕を向けて寝るとどのような効果があるのかを紹介します。
北枕はなぜ縁起が悪いと言われる?
一般的に北枕は「縁起が悪い」と言われるため、気にしている人は多いかもしれません。実際に北枕にはどのような意味があるのでしょうか。北枕の由来について解説します。
お釈迦様の涅槃が由来
北に枕を向けて眠るルーツは、仏教にあります。北枕は『お釈迦様の涅槃(ねはん)』、すなわち亡くなったときと同じ状態を模したものです。
お釈迦様は亡くなるとき、頭を北、顔を西、右わきを下にして横たわったとされています。この姿勢は『頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)』と呼ばれ、仏陀入滅を描いた『涅槃図』によく見られます。
仏教ではお釈迦様の死にちなみ、『亡くなるときお釈迦様と同じ姿勢を取ると極楽浄土に行ける』という考えが生まれました。そして、誰かが亡くなったときには、その人の頭を北に向けて寝かせる風習が生まれます。
人々は頭を北にして安置した故人に手を合わせ、「この世への未練や煩悩を断ち切って成仏できますように」「迷わずにお釈迦様の元にたどり着けますように」と祈りました。
死を連想させるため
日本において「北枕は縁起が悪い」と言われるのは、北枕が『死』に関わるもののためです。
日本では、古来より死に関する迷信がたくさんありました。『友引に葬儀を行うのは縁起がよくないため避ける』『葬儀に参列したら塩をまいて清める』などは、今も習わしとして残っています。
北枕がよくないと言われるのは、『生きている人間が死者と同じ向きで眠ることは縁起が悪い』と考えられたためです。死者と共通点を持つことで、死を呼び寄せてしまうのではと恐れられたのです。
日本家屋の構造上の問題も
北枕が避けられるのは、かつての日本家屋ならではの事情に起因するという説もあります。
昔の障子や木材で造られた日本家屋は気密性が低く、冬に北から吹く寒風を完全に防ぐことができません。窓や扉をしっかりと閉めても、隙間風が容易に入り込んできたでしょう。
このような隙間だらけの家屋で枕を北に向けて眠ると、冷たい風を直接頭に浴びることになります。それゆえ、当時の人々は頭を冷やしすぎて体を壊さないよう北枕を忌避したのです。
風水では運気アップの方角
風水的観点から見ると、北は縁起がよいとされる方角です。北枕が風水的にどのような効果があるのかを見ていきましょう。
頭寒足熱で健康運アップ
風水では、寝るときの北枕は健康運アップにつながるとされています。これは全く根拠のないものではなく、『頭寒足熱(ずかんそくねつ)』という考え方にも適っています。
頭寒足熱とは、頭が冷たく足が温かい状態を指す四字熟語です。この状態になると人の体は血の巡りがよくなって、さまざまなよい効果が期待できると考えられています。
例えば慢性的な頭痛に悩まされている人は、頭を冷やすと症状が和らぐかもしれません。あるいは冷え性の人は、足をしっかり温めることで症状の緩和が期待できるでしょう。
金運アップ
北は金運を上げたい人にもおすすめの方角です。
一般に、風水では『西』が『金運を呼び込む方角』です。しかし、呼び込んだ金運を端から使っていては、いつまでも蓄財ができません。いくら金運がアップしても、お金が貯まったり暮らしが豊かになったりしている実感が得にくいでしょう。
金運を高めて財を成すには、西の方角から呼び込んだ金運を使い果たすのではなく、貯め込む必要があります。お金を蓄える気を持つとされる方角が北です。北枕にすることで、貯蓄に関わる金運アップが期待できるでしょう。
恋愛運アップ
風水における北は、恋愛や子宝に恵まれやすい方角でもあります。北枕で眠れば、恋愛運アップが期待できるでしょう。
恋愛運のさらなる向上を望むなら、北枕だけではなくピンクを活用するのが効果的です。ベッドカバーや枕カバー、シーツなどを明るいピンクの花柄などにしてみてはいかがでしょうか。
結婚を考える相手がいる場合は、やわらかい色味のサーモンピンクなどがおすすめです。パジャマやベッド回りに取り入れると、結婚運の向上が期待できるでしょう。
寝る方角で風水上の運気は変わる?
風水的に北枕は問題ないとはいえ、昔からの習わしで何となく避けたいと感じる人も多いかもしれません。どの方角で眠ればよいのか気になる人は、北以外の方角の運気をチェックしてみましょう。
枕の方角にどのような意味があるのか、東、西、南枕についてそれぞれ見ていきます。
東枕の場合
東は、風水では『木』の気に属し、仕事運・学業運・発展運を司るとされる方角です。「仕事を頑張っても評価されない」「勉強を頑張っているけど効果が上がらない」という人は東枕がよいでしょう。
また、東は太陽が昇ってくる方角でもあります。東枕で眠ることで、エネルギーがみなぎって来たり元気になったりといった効果も期待できるでしょう。
東のラッキーカラーは赤や青です。枕カバーに取り入れたいところですが、就寝時には色味が強すぎると感じるかもしれません。そのような場合は、時計などの枕元に置く小物に色を取り入れることをおすすめします。
西枕の場合
西は、風水では『金(ごん)』の方位とされ、金運を司ります。
商売繁盛によい方角といわれるため、経営者や個人事業主などは西枕にするとよいでしょう。より金運アップを目指すなら、枕カバーやシーツの色はパステルイエローを選ぶのがおすすめです。
また、西は太陽の沈む方角です。落ち着きや安息の気を持つとされ、ゆったりした気分で眠りやすくなります。
ただし、エネルギーで満ちあふれた人が西枕で眠ると、疲れやすくなったりやる気がなくなったりすることもあるようです。仕事やプライベートでエネルギッシュに動きたい人は、西枕は避けた方がよいかもしれません。
南枕の場合
南は、風水では『火』の気を持つとされる方角です。太陽のエネルギーが強く、人気や名誉を求める人にはよい方角とされています。
ただし、火は金とは相性がよくないとされるため、金運は下がりやすいかもしれません。南は健康運のよい北と反対の方角にあり、健康運もあまりよくないといわれます。南枕は、できることなら避けた方が無難でしょう。
南向きに寝るしかない場合は、『寝室の掃除や換気を徹底する』『原色の枕カバーを使わない』などを実践することが気の改善につながります。
海外では北枕に意味はある?
北枕は縁起が悪いと考えるのは、日本ならではの習わしです。同じ仏教徒でも、国によって寝るときの方角についてはさまざまな考え方があります。北枕について、海外ではどのように考えられているのか紹介します。
仏教国では北は極楽浄土の方角
仏教発祥の地であるインドでは、北枕はタブーではありません。インドでは、『北に楽園があり、南には死者の国がある』と考えられています。日本とは異なり、好んで北枕にする人も少なくありません。
一方、国民の約94%が仏教徒であるタイでは、西枕を縁起が悪いと考えます。タイの葬儀では、遺体は西枕で安置されるのが一般的です。そのため、「西枕は死者と同じで縁起が悪い」と考えて忌避されます。
また、風水の考えが浸透している中国では、北は運気が流れ出る方角です。北枕は縁起が悪いとは考えず、むしろ好ましいと捉えています。