今まで株式は東証一部、東証二部、東証マザーズ等に規模等により上場場所が異なっていましたが、その区分が2022年から変わります。
今までの区分
株式は証券取引所に上場し、買い注文と売り注文を合致させ取引を成立させています。
証券取引所として、東京証券取引所(以下東証という)をはじめ、名古屋、福岡、札幌の4つがあります。
日本の株式のほとんどの約97%が東証に上場しています。
東証にも名古屋証券取引所にも重複して上場している企業もありますが、名古屋、福岡、札幌のみに上場しているという企業は全体の3%程度です。
(参考)新規上場基本情報 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)
ほとんどの株式が上場する東証では、一部、二部、新興市場の区分があります。特に東証一部に上場、市場変更するには株主数、時価総額または利益の規模が大きいことなどの厳しい水準をクリアする必要があるため、東証一部上場企業は知名度が高い会社が多く、企業側も東証一部上場となればイメージや知名度をアップさせることができます。それに対して、マザーズ、ジャスダックは新興市場となっており、新規上場して間もない企業が多くなっています。
しかしながら、国際的に投資を行う機関投資家にとって、東証一部の現状は投資に適切であるとされるコーポレートガバナンス、新興市場からの昇格基準が緩く、日本市場で上場基準が最も厳しいとされる東証一部は全体の58%と過半数を占めており、実際の東証一部への上場や昇格は厳しいとはいえませんでした。
今までの東証の主な問題点
・マザーズに上場した企業は10年後に時価総額40億円以上などの基準を満たせば、同じ新興市場であるジャスダックに較べて緩い基準で東証一部昇格できる。
・個人投資家にとって東証一部は優良企業のみが上場しているイメージだが、実際には時価総額等実質大企業とはいえない企業も上場している。
・東証一部上場会社はTOPIXの採用銘柄でもあるため、TOPIXに連動する投資信託など多くあり、時価総額の規模や優良企業ではない企業まで総じて買われてしまう。
・新興企業が上場するマザーズとジャスダック(グロース)の2つがあり、中小企業においても東証二部とジャスダック(スタンダード)があり、市場区分が混雑、違いも明確に分からない状態だった。
・東証一部企業であっても、株の流動性の基準が国際的な投資基準を満たしていない企業が多く、持ち合い株など政策目的の保有により、実際に流通している株の割合が低い。
今度は東証はこう変わる!
(参考)金融庁 nlsgeu000004kjhc.pdf (jpx.co.jp)
東証は2022年4月から3つの市場になり、プライム、スタンダード、グロ-スの3市場となります。
プライム市場は、東証一部より厳しい上場基準となり、上場できるのは海外投資家が投資対象とする大企業が想定されます。
そして、東証二部・ジャスダック(スタンダード)に上場するような中小企業は、スタンダードに上場することが想定され、新興企業はグロースに上場することが想定されます。
東証一部とプライム市場の相違点
・新たなコーポレートガバナンス・コードを適用し、海外市場と同水準の基準を求める。
具体的には、新たな時価総額(流通)、流動性、ガバナンス基準)を策定し、以前より厳し基準とする。
・流動性
流動性は一般の投資家が売買できる流通株の比率が高いどうかを示し、この流動性基準が厳格化される。今までは、保有比率が10%未満の政策保有株は流通しているとみなされていたが、この政策保有株が除外される。
・ガバナンス
具体的には、取締役会の独立性、諮問委員会の設置やその独立性があることが求められる。
・投資家が満足する情報開示
具体的には、透明性の高き企業情報開示、英文の情報開示、決算説明会等にCEOの登壇など、また経営判断や経営陣の報酬、政策保有株式の保有目的や保有状況の明確化が求められる。
・マザーズに上場すると10年後に緩い基準で東証一部に昇格できるルールの廃止
マザーズに上場して10年後には時価総額40億円以上など通常の基準より緩い基準で東証一部に昇格できたが、今後はプライムの厳しい新基準を満たしていないとプライムになれない。
課題も
経過措置として東証一部上場企業ならプライムの基準を満たしていなくても、希望すればプライム市場に上場することが可能です。東証一部と現状変わらないのでは?という懸念もあります。ただ、この措置は経過的であることと、プライムの上場基準を近いうちに満たすことができるための取組を策定、開示することが必要であることから、基準を満たすことが難しい会社はプライム市場を選ばないと想定されます。
また、マザーズにおいて上場後10年後に時価総額10億円以上であれば上場を継続できましたが、グロースでは10年後に40億円以上でないと上場を維持できないという厳しい基準となります。そのため、この厳しい基準を緩和するか、基準を満たさなくなったときに売買できる受け皿となる市場を整備するのか検討されています。
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文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。