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〝そこそこの性能〟で売れているインドの二輪メーカー、ロイヤルエンフィールドが支持される理由

2021.02.18

〝そこそこのバイク〟が売れている

 今、ニッポンのバイク界を席巻しているのは、レブル250だ。26psの単気筒249ccエンジンを搭載したこのバイク、そこそこカッコよくてそこそこお求めやすく、気軽に乗れることで人気を呼んでいる。運動性能もそこそこだ。目新しいテクノロジーが搭載されているわけでもない。コアなバイクマニアを振り向かせる要素はゼロに等しい。だが、よく売れている。いや、「だからこそ」よく売れているのだ。

 バイクという乗り物は、実に生真面目に開発されている。メーカーの技術者たちは学者レベルの研究を積み重ね、その成果を製品開発に落とし込む。最近は電子制御が高度化の一途を辿っていて、ハンドルに設けられたスイッチボックスはボタンだらけ。精細なフル液晶メーターには多数の項目が表示され、メニューを覚えるのもひと苦労だ。エンジンも車体も、もちろん進化を続けている。だが、進化を続けるあまり、いろんな意味で「重い」。車重という意味ではなく、バイク本来の気軽さが損なわれているような感覚だ。技術面も価格面も、「え? バイクって、こんなに……?」という行き過ぎ感が強まっている。

 そんな中、スッキリアッサリサッパリとシンプルな構成のレブル250が売れているのが面白い。開発がテキトーだとはまったく思わないが、「そこそこ」レベルで抑えているのは確かだ。2017年のホンダのリリースには「いつでも気軽に楽しめるサイズ感で『ちょうどいい』モーターサイクルをめざした」と記されている。メーカー自ら「これぐらいがちょうどいいですよね?」と言っているわけだ。

 そしてユーザーも「そうそう、バイクってこれぐらいがちょうどいいんですよ!」と応えた。その反応はとても賢いものだったと思う。こと日本の公道に限っていえば、一般常識の範疇でバイクを走らせるならレブル250で何の不足もないのだ。そういう「そこそこ」のバイクが売れるということは、日本のバイク趣味もいよいよ成熟しつつあるのだろう。

世界最古のバイクブランドだから知っている〝これで十分〟

 さて、ここまでは「日本の二輪車市場はおおむねそんな流れになっている」ということを知っていただくための前置きだ。本題は、インドに本社を構えるバイクメーカー、ロイヤルエンフィールドが日本市場に力を入れようとしている、という話である。ロイヤルエンフィールドは現存するバイクメーカーでは世界最古と言われており、歴史を紐解くと興味深いストーリーがゴロゴロと転がっている。だが、もっとも注目すべきなのは「そこそこのスペックのバイクをラインナップしている」ということだ。

 現在同社が日本で展開しているラインナップは5モデル。クラシカルなネイキッドが4モデル、アドベンチャーテイストのデュアルパーパスが1モデルだ。スペックの分かりやすい指標としてエンジンの最高出力を並べてみると、ネイキッドは648ccの2モデルが47bhp、499ccの2モデルは27.2bhp。デュアルパーパスは411ccで24.3bhpだ。先に挙げたレブル250の26psさえハイパフォーマンスに思えるほどのロースペックぶりなのだ。

Continental GT 650(79万5000円〜)

INT 650(77万6000円〜・税込・以下同)

Himalayan(62万5000円〜)

Classic 500(71万3000円〜)

Bullet 500(71万3000円〜)

 だが、常人にとってはこれで十分だということは、レブル250のヒットが存分に示している。ローパフォーマンスにそっぽを向くのはコアなマニアだけで、一般的にはロイヤルエンフィールドのクラシカルでバイクらしいスタイルが受け入れられる可能性の方が高い。しかもロイヤルエンフィールドは日本でこそ「なんかよく分かんないけど古めかしいバイク造ってるんでしょ?」ぐらいの認知度だが、2020年は世界全体で約75万台を売り上げている。数が見込めるコミューターを販売していないことを考慮すれば、相当な規模と言っていい。また、スタイルこそクラシカルだが、2017年にはイギリスにロイヤルエンフィールド・テクノロジーセンターを開設するなどして技術を研鑽し、中身は現代的に洗練されているのだ。

イギリス・ブランティングソープにあるテクニカルセンター

販売台数の追求よりも価値観の共有を目指すショールーム

 そしてこのほど、本格的な日本進出に向け、ブランドショールーム「Royal Enfield Tokyo Show Room(ロイヤルエンフィールド東京ショールーム)」を東京・杉並にオープンすると発表した。1月下旬に行われたプレス向けのオンライン発表会には、同社CEOのビノッド・ダザリ氏とアジア太平洋地域を統括するビマル・サムブリー氏が登場し、ブランドヒストリーや各国での躍進ぶりをアピール。なみなみならぬ意気込みを感じさせた。

「Royal Enfield Tokyo Show Room(ロイヤルエンフィールド東京ショールーム)」

 ……のだが、面白かったのは、日本市場における戦略をメディアに尋ねられた際の回答だ。ダザリ氏は「どの国においても、戦略はシンプル。素晴らしいバイクを提供し、我々が提唱する『ピュア・モーターサイクリング』という価値観を広げていくことです」とダザリ氏。サムブリー氏はそれを補足するかたちで「日本においては東京ショールームを起点に、じっくりとネットワークを広げていきたい。『ネットワーク』と言っても、それは販売網というだけの意味ではありません。私たちはバイクを売ろうとは思っていない。私たちからバイクを買っていただけるようにしたいんです。私たちのバイクを通じた素晴らしい経験──ライディングやカスタマイズ──を、より楽しんでいただく。そのためのネットワーク作りです」

ロイヤルエンフィールド 最高経営責任者 CEO ビノッド・ダサリ氏

 さらに、日本における販売台数目標を聞かれたダザリ氏は、「セールスターゲットは設けていません」と即答。「お客さまにバイクを楽しんでいただき、ディーラーが潤い、その結果として日本において拡充していければいいと思っています」と続けた。もちろんこれはメディア向けの回答であり、本当に販売目標を掲げていないのか、実際のところは分からない。だが、販売台数の追求よりも価値観の共有に重きを置こうとしているロイヤルエンフィールドの姿勢は明確だ。焦らず、時間をかけて日本の二輪車市場に浸透していこうとしている。

 販売戦略や販売台数目標など数字を聞きたがる日本のメディアに、「まぁ、そうあくせくしないで、のんびり行きませんか」とでも言いたげに、決して「売る気」を見せようとしなかったロイヤルエンフィールドの重役たち。それはまさに「そこそこのスペック」のロイヤルエンフィールドのバイクそのものであり、今、レブル250を筆頭に日本でも求められているバイクのあり方そのものだ。

ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
〒168-0081 杉並区宮前4-25-19
※ロイヤルエンフィールド東京ショールームは3月上旬から一般公開予定

ロイヤルエンフィールド

取材・文/高橋 剛

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