2021年1月1日より改正著作権法が施行され、違法ダウンロードなどの対象が拡大された。どのようなダウンロードが違法となるのか、またどのような刑罰があるのか知っておこう。
改正著作権法とは
著作権法とは、知的財産権の一つである著作権の範囲と内容について定める法律だ。2020年10月1日に改正法が成立し、2021年1月1日より施行された。
今回の改正の焦点としては、「侵害コンテンツのダウンロード違法化」のほか、「写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大」、「著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化」、「アクセスコントロールに関する保護の強化」などがある。
「侵害コンテンツのダウンロード違法化」では、違法にインターネット上に掲載された著作物のダウンロード規制の対象が、音楽・映像からすべての著作物に拡大された。
侵害コンテンツのダウンロード違法化の要点
虎ノ門法律特許事務所の弁護士であり、弁理士でもある大熊裕司氏は、「侵害コンテンツのダウンロード違法化」について次のように解説する。
「もともとは、違法にアップロードされた有償で提供されている音楽、映像をダウンロードする行為は違法とされていました。近時、漫画村をはじめとするリーチサイト、つまり侵害コンテンツのリンクを貼るなどして誘導するサイトの規制の必要性が、出版業界を中心に唱えられてきました。従来は、仮に違法なコンテンツであっても、そのリンクを貼る行為は必ずしも違法とはされていませんでした。そこで、リーチサイト規制が導入されることになりました。
実効性確保の観点から、リーチサイト規制のみならず、侵害コンテンツであることを知りながら、ダウンロードする行為も規制対象としました。ここでは、音楽や映像のみならず、すべての著作物が対象とされています」
どんなコンテンツをダウンロードすると違法となるのか。
これまでインターネット上に違法にアップロードされたものだと知りながらダウンロードを行う行為について、違法だったのが「音楽・映像」のみだったが、今回の法改正により、音楽・映像だけでなく、「漫画、雑誌、小説、写真、論文、コンピュータープログラム」など、「すべての著作物」に適用されるようになった。
例えば、発売されたばかりの漫画をネット上に無断公開しているサイトがあったとして、違法にアップロードされたことを知りながら、そこからダウンロードする行為は、たとえ個人でその漫画を楽しむだけだったとしても違法となる。
そして、正規版が有償で提供されている著作物に係る侵害コンテンツを、違法にアップロードされたことを知りながら、継続・反復してダウンロードした場合には、刑事罰、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその両方)の対象にもなる。
ちなみに権利者の許可なく著作物をインターネット上にアップロードする行為は、引用などの権利制限規定に該当するなどの場合を除き、違法であり、刑事罰、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(またはその両方)の対象にもなっている。
除外される場合
しかし侵害コンテンツをダウンロードした場合であっても、違法化の対象から除外される場合がある。
「侵害コンテンツのダウンロードやスクリーンショットが、一律に処罰の対象となると、国民の日常生活や日常業務が脅かされることになります。そのため、『軽微なもの』、『二次創作やパロディ』、『著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合』のダウンロードやスクリーンショットへの写り込みは違法としない手当をしました」(大熊氏)
以下の事由に該当する場合は、違法化の対象から除外される。
(1)スクリーンショットを行う際の違法画像等の写り込み
スクリーンショットを行う際に、違法画像等が映り込んでしまった場合でも、それが軽微な部分であり、正当な範囲内であれば、違法とはならない。
(2)数十頁で構成される漫画の1コマから数コマなど「軽微なもの」
ダウンロードした分量が少ない場合と画質が粗い場合は「軽微なもの」とされ、そのダウンロードは違法にはならない。
(3)二次創作・パロディ
原作を元にファンなどが新たに創作を行う「二次創作・パロディ」については、原作者の許諾なく二次創作者が違法にアップロードしたものであると知りながらダウンロードした場合であっても、違法とはならない。
(4)著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
この要件に該当するか否かは、「著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度」と「ダウンロードの目的・必要性なども含めた態様」という2つの要素によって判断される。
例えば、詐欺集団の作った詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに違法にアップロードされていたところ、それを自分や家族を守る目的でダウンロードする場合は違法にはならない。
・著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度
…詐欺集団の作った詐欺マニュアルであることから、保護の必要性が低い。
・ダウンロードの目的・必要性
…詐欺被害から自分や家族を守る目的であることから、正当な目的。
これらの点より、著作権者の利益を不当に害しないということになり、違法ではない。
刑事罰は要件がある・すべて「親告罪」
ちなみに刑事罰には要件があり、すべて親告罪であるという。
「刑事罰については、特に悪質な行為に限定する趣旨から、『正規版が有償で提供されているもののダウンロードであること』、『継続的に又は反復してダウンロードを行っている場合であること』、『違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合であること』という要件を付加しています。また、すべて親告罪であり、著作権者等の告訴が必要となります」(大熊氏)
本改正内容の詳細については、政府の公式サイトで動画やリーフレットなど、多数資料が容易されている。ダウンロードコンテンツをよく利用する場合には、参照して理解を深めておきたい。
出典:政府広報オンライン「漫画、小説、写真、論文…海賊版と知りながら行うダウンロードは違法です!令和3年1月から著作権法が変わります。」
【取材協力・監修】
大熊裕司氏
虎ノ門法律特許事務所 弁護士・弁理士、第一東京弁護士会所属弁護士・弁理士、所属委員会(弁護士会:民事介入暴力対策委員会)(弁理士会:不正競争防止法委員会)
医療系ベンチャー企業、ゼネコン勤務を経て、弁護士登録。知的財産関係、インターネット問題(ネット上の名誉毀損、誹謗中傷対策など)を中心に扱っている。
http://www.toranomon-law.jp
取材・文/石原亜香利