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【金子浩久のくるまコンシェルジュ】ポルシェ「カイエン クーペ」

2021.02.06

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 最近のクルマの多機能、高機能ぶりには眼を見張るばかりだ。特に、運転支援技術やパワートレインの電動化、インターネットへの接続などは、どれもこれも新しいものばかり。新しいから、その更新ぶりも日進月歩。「そんなことまでできてしまうのか!?」と、日頃から多くのクルマを取材している専門家でさえも驚かされてしまっている。まだまだ馴染みの薄い新技術や走りっぷりを自動車評論家の金子浩久が相談者とともに運転しながら試し、その効能と真価を探っていこうという読者参加型企画です。

◎今回の相談者  KSさん
◎今回のクルマ  ポルシェ「カイエン クーペ」

 KSさんは50代。外資系企業勤務。現在、2013年式アウディ「S6アバント」を所有。クルマの使い途は、片道約50kmの通勤の他、オフタイムのゴルフや妻とワンコ2匹と一緒に東北や四国への長距離ドライブ旅行を楽しんでいる。

 今回、コンシェルジュを訪ねた目的は2つ。SUVに買い替えようかと検討していることと、その際には運転支援機能に代表される最新の安全装備が充実しているクルマを選びたいが、それらがどのようなものなのかを運転して体験してみたいというものだ。

 新車から7年乗り続けているアウディ「S6アバント」からSUVに乗り換えてみたいと相談を受けた金子浩久が読者代表KSさんのもとに持ち込んだクルマ第5弾は、ポルシェ「カイエン クーペ」だ。

 スポーツカーメーカーが造り出すSUVのパイオニアである「カイエン」のクーペ版だ。ルーフの後ろ半分がなだらかに傾斜していて、スタンダードの「カイエン」とはサイドビューの違いが一目瞭然。ポルシェには「マカン」というクーペっぽいSUVが存在しているのにもかかわらず、ニッチにニッチを刻み込んで昨今のドイツの高級車メーカーらしく、2019年にデビューした。

 グレードは全部で5つある。より高性能な「S」から「GTS」、「ターボ」があり、プラグインハイブリッドの「E-Hybrid」も用意されている。搭載するエンジンは、3.0L、V型6気筒(ターボ)。340馬力の最高出力で、最高速度243km/h、0-100km/hの加速が6.0秒を実現する韋駄天ぶりだ。4輪を駆動し、オプションでエアサスペンションも選べる。

 KSさんはもちろん、この「カイエン」の存在は知っていたが、運転したことはない。ポルシェを代表するスポーツカーの「911」と「ボクスター」の助手席に乗せてもらったことがあるだけだという。KSさんを助手席に乗せて、住宅街を抜けて国道に出た。「カイエン クーペ」は、ベーシックグレードとはいえ、加速性能は十分以上。クルマの流れをリードするのに余りある。また、車線変更や合流、ゆるやかなカーブを曲がるぐらいの時でも、ポルシェらしいスポーティーな身のこなしぶりが伝わってくる。

「助手席に座っていても、それは伝わってきますよ。加速が鋭く、キビキビと向きを変えるのはこれまでの4台のSUVとは違いますね」

 ランドローバーの「レンジローバー」「ディフェンダー」、シトロエン「C5 AIRCROSS」、ボルボ「XC60」などには望み得なかったスポーティーさが「カイエン クーペ」には備わっている。

「これまでの4台は、どれも速さやスポーティーな走りとは違うものを訴求していましたからね」

 国道から高速道路に乗った。料金所のバーをくぐったところでアクセルペダルを深く踏み込んでいくと、エンジンの排気音が主張を強めていく。金属部品が奏でる高音部から排ガスが空気を震わせる中低音部までが調和しながら響き合っていく。

 これまでの4台は特にエンジンそのものの存在や働きぶりを主張することはなかったが、「カイエン クーペ」は違う。ドライバーとクルマが一体となってクルマを走らせていくことを強く認識させようとしている。この一体感こそがスポーツカーの醍醐味であり、それはSUVであっても変わらない。

「ポルシェユーザーの金子さんから見て、この『カイエン』ってどんなクルマですか?」

「カイエン」は、ポルシェの製品ラインナップを拡充した立役者であるばかりではなく、昨今のSUVのあり方を決めた、とても重要なクルマだと思っている。もちろん、「カイエン」以前にも「レンジローバー」や三菱「パジェロ」などは存在していた。

「カイエン」のどこが画期的だったかというと、オフロードで「レンジローバー」や「パジェロ」とは変わらない悪路踏破力を有しながら、オンロードではポルシェらしい速さとスポーティーなドラインビングフィールを確保していたことだった。

 僕は、それを2007年と2008年にナビゲーターとして参加した「トランスシベリア・ラリー」でみっちり体験させてもらったことがある。アドベンチャーラリー用にツッフェンハウゼンのポルシェワークスで2シーターのラリーカーに改造された「カイエンS」で、ロシアのモスクワからモンゴルのウランバートルまで2週間、競った。

 毎日、流れの早い川を渡り、岩山を登り、ぬかるみを走り抜けた。その一方で、地平線まで見渡せる草原を150km/h以上のスピードで何時間も走り続けたりするタフネスも併せ持っていた。

 オンロードとオフロードをシームレスに走る、それも高性能を発揮しながらできるのが「カイエン」の偉大さであり、本質だった。そんなクルマは「カイエン」以前には存在しなかった。だから、他社は「カイエン」をベンチマークとしてそれぞれのSUVを開発している。

「今は、SUVを出していないメーカーのほうが珍しいくらいになっちゃいましたもんね」

 ロールス・ロイスやベントレーといった、格式を重じていた超高級車メーカーやランボルギーニのようなスーパーカーメーカーですら、SUVを造っている。参入を明らかにしていないのはマクラーレンぐらいだ。ポルシェ社自身も「カイエン」を皮切りに「パナメーラ」「マカン」、そしてEVの「タイカン」とラインナップを拡げることに成功し、年間の総生産台数を「カイエン」発表前とは較べものにならないくらい増加させている。「カイエン」は、ポルシェ社の中興の祖と呼ぶべきクルマでもあるのだ。

 その後、SUVの「カイエン」のような高級車セグメントでなくてもSUVが急増してきたのは偶然のことでもないだろう。

「SUVは使い勝手がいいから、様々な人の眼に魅力的に映ったのでしょうね」

 SUVを買ったからといって、誰もがジャングルに行くわけではない。ほとんどの人はスキーやキャンプ止まりだ。スーパーカーを買った人が最高速を出してみようとしないのと同じことだ。それでも人気が続いているのは、車高が高く、車内や荷室も広いことの実用性の高さもあるからだろう。

「使い勝手が良さそうですからね」

 KSさんが乗っているアウディ「S6アバント」だって、4輪駆動のステーションワゴンだから実用性はとても高い。違うのは車高の高さぐらいだ。

「着座位置が高いから、夜の運転で対向車のヘッドライトの眩しさから解放されるとうれしいです。あと『S6アバント』にないのは、最新の運転支援機能です」

 高速道路に乗って、運転支援機能を試してみる。ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)をONにするにはステアリングホイール左裏のレバーで設定する。表示は、タコメーター左側のデジタル画面を切り替えると現れる。働き方はスムーズで確実だ。

 LKAS(レーンキープアシスト)は、車線を逸脱しそうになると表示とステアリングホイールに細かな振動を起こして警告を発したのちに、さらにそれでも逸脱すると判断されるとステアリングホイールを切って車線内に戻してくれる機能を有している。これが「カイエン クーペ」には、9万8000円のオプション装備として設定されているが、今回の試乗車には装着されていなかったので試せなかった。

「ポルシェのレーンキープアシストがどんなものなのか、ぜひ試してみたかったですね」

 高速道路を降り、いつもの山に向かった。登り勾配が続く峠道での運転が気持ちいい。背の高さや車体の大きさや重さを感じさせない。移動手段としてではなく、運転操作そのものが目的になってしまってもおかしくはない。山頂の駐車場に停め、各部分を見てみた。エクステリアとインテリアのデザインにも、カイエンクーペは独自のものを打ち出しているのがわかる。

 画像で見ると、ルーフラインが傾斜しているクーペスタイルが他社のものと似ているように見えたが、実物はずいぶんと違っていて、十分に個性的だ。クーペスタイルも極端ではなく、こちらが「カイエン」の標準ボディーだと言われても違和感がない。

 リアクォーターピラーからリアフェンダーにつながる曲面と曲線が自然で、最新の「パナメーラ」や「タイカン」(EV)、「911」などにも通じるものを感じ取ることができる。インテリアも、最新のポルシェの流儀が貫かれている。

 KSさんにこれまで乗ってもらったSUV4台は、メーターパネルがフルデジタル化されているのに対して、「カイエン クーペ」は、タコメーターはリアルな樹脂の針を持っている。タコメーターの左右はデジタルパネル化されていて、それぞれを切り替えながら多彩な機能を見やすく表示し、操作できるようになっている。タコメーターだけがデジタル化されていないのは「911」も同じで、エンジンパワーをダイレクトに感じてもらいたいというポルシェ流の“おもてなし”というか演出なのだろう。

 センターのデジタルパネルも12.3インチの大型で、ナビゲーションや様々な機能を表示し、タッチやボイスなどで切り替えながら操作できる。シフトレバーの周囲に設けられたエアコンやダンパー切り替えなどは、前の世代のポルシェ各社では独立したボタンが設けられていたが、現行の各モデルではフラットなパネルとなり、ここはタッチではなく、従来通りに押すことで操作できる。誤動作を防ぐためだろう。

 ドライバーインターフェイスに関しても、他メーカーの方法からひと味、ふた味変えていて、ポルシェ独自のやり方を貫いている。継続性を重視しているところもまた、ポルシェらしい。

 KSさんに運転を代わって、来た道を戻る。シートやミラーの位置を合わせ、走り出す。

「外見ほどに大きさを感じませんね。ヘッドアップディスプレイも見やすい」

 それは僕も感じていた。メーターパネルを見下ろすよりも、ヘッドアップディスプレイだけで走行中はほとんどがこと足りる。走行モードは、まずはノーマルから。コーナーが連続しながら下っていく。前後にクルマはほとんどいない。KSさんは慎重にカイエンクーペを進め、少しずつペースを上げていく。

「いいですねぇ。スポーティーさがみなぎっている。エンジンのレスポンスが鋭いし、曲がりやすい。助手席に座っているよりも、だんぜん運転している方がいい」

 助手席では運転操作は行わないけれども「カイエン クーペ」のスポーティなキャラクターは良く伝わってくる。

「プレーンな、もっと素っ気ない感じかと思っていましたが、しっかりとしたキャラクターがありますね」

 どこからキャラクターを感じるのだろうか?

「ボディーのカッチリした感じと加速とコーナリングがスーッとスムーズなところです。傾向としては自分の『S6アバント』に似ていますね。これまでの4台とは似ていなかったけれども『カイエン クーペ』には近いものがあります」

 コーナーを下っていきながら、自然と「カイエン クーペ」と「S6アバント」の比較となっていった。KSさんの「S6アバント」は最高出力420馬力を発生する4.0L、V型8気筒エンジンを搭載しているから、ハイパワーエンジンや速さには慣れている。それに対して「カイエン クーペ」は3.0L、V6で最高出力も340馬力と80馬力も少ない。

「でも、それで遅そうに感じることはまったくないし、見劣りもしない。もちろん、超高速域では差が出るのでしょうが、そんなに飛ばしませんから。ハハハハハハッ」

 前回、ボルボ「XC60」に乗った時に、路面の舗装の凹凸が大きなところがあって、そこを「XC60」は巧みにイナしがら通過し、車内の僕らに不快感を与えなかったことを高く評価した。もうじき、そこを通過する。果たして、「カイエン クーペ」はどうか?

「いいですねぇ。ボルボは凹凸によるショックをクルマがサスペンションできれいに吸収していました。でも、このクルマは違いますね。凹凸は感じるけど、イヤじゃないです」

「カイエン クーペ」は、凹凸からのショックはドライバーと乗っている人にある程度は伝えるのだが、伝える途中でショックのカドを丸め、勢いを削いでいる。つまり、ショックを完全になくしてしまおうとはせず、ある範囲の中でコントロールしようとしている。

 手の内にあって、バランスを取っているのだ。その範囲がポルシェが理想と想定しているドライビングで、結果として僕らはそれを“スポーティーで気持ち良いもの”と感じているに違いない。

「径の大きなコーナーの走り方が『S6』と違いますね。『S6』がコーナーの後半に、クルマが遠心力に抗って、ハンドルをしっかり持ち続けていなければならなくなるのに対して、『カイエン クーペ』はそれがなくて、スッと回り切ってしまいます。運転しやすい」

 ステアリングホイール上のノブを回して、運転モードをノーマルからスポーツに変えてみる。

「下の段のギアばかりを使いたがりますね」

 パワーが炸裂し、エンジンの存在感がこれまで以上に高まっていく。モードは他に、スポーツプラスとインディビデュアルもある。

「ベーシックモデルでも、スゴくいい。『S』や『ターボ』はもっといいのかもしれないけれども、このノーマルで不満感をまったく感じない。こんなに良いのだったら、スポーツカーの『911』ってどうなんだろう? 乗ってみたくなっちゃいますね」

「カイエン クーペ」の開発者にしてみれば、最高の評価だろう。クルマそのものを高く評価されたのと同時に、クルマ造りの背景にあるブランドの哲学や思想までにもシッカリと認知が及んでいるからだ。

 山を降り、再び高速道路に乗って戻る。

「こうして高速道路を巡航していても、反応がスポーティーだから運転していて楽しいですね。今までの4台とは違う」

 たしかに、今までの4台は運転そのものを楽しませようというタイプではない。

「“スポーティー”をどう表現すればいいのか、うまい言葉が思い浮かばないのですが……」

 言いたいことはよくわかる。「カイエン クーペ」のスポーティーさというのは、加速したり、ハンドルを切ったり、あるいはブレーキを踏んで減速したりという、あらゆる運転操作に対してのクルマ側からの反応が活き活きしていることではないだろうか。

 どんなに微細な操作にもポルシェ各車は他よりも速く、間髪を入れずに反応が返ってくる。その返り方もただ速いわけではなくて、一定のテンポやリズムのようなものがあり、それがポルシェらしい一体感を生み出している。

「その一体感が、このクルマのキャラクターを濃いものにしているんでしょうね。『レンジローバー』に濃いキャラクターを感じましたが、『カイエンクーペ』は正反対の方向性を持ったキャラクターです」

 7年乗り継いでいる「S6アバント」との親和性を高く感じているのならば、買い替えは「カイエン クーペ」に決まったのだろうか?

「『S6』を買う時は速さとキビキビ感を求めていましたけど、7年経って自分も加齢して、もうそれらは求めなくなりました」

 僕が1台目にリコメンドした「レンジローバー」の重厚かつトロケるような乗り心地や上質なインテリアデザイン、充実した運転支援機能などに、KSさんはだいぶ魅了されていた。

「『レンジローバー』も魅力的ですが、『カイエン クーペ』も同じくらいいい。どちらもいいのですが、レーンキープアシストを試してみたかったですね。今までの4台はそれぞれ違いがありましたから」

 そして、KSさんは「カイエン クーペ」に買い替えたら愛着が湧いてくるかもしれないという。

「『S6』には愛着があるんです。その前までは、3年や4年とか短い間隔でアウディを何台も買い替えていたのに、7年も乗り続けたのは気に入っているからで、愛着もできました。スペックとかではなく、“肌が合う”というのでしょうか、ずっと乗り続けたくなる何かがあるんです。『カイエン クーペ』にも、そんな予感がします」

 高速道路を降り、国道に移ると、陽も暮れてきた。

「対向車のヘッドライトをチェックしたいんですよ」

 SUVは着座位置が高いから、対向車のヘッドライトに眩しい思いをさせられずに済むのではないか? という疑問をずっとKSさんは持っていた。

「少しは気にならなくなりますね。それよりも、着座位置が高いことによる視界の良さは暗くなってからの方が感じます」

 自宅に戻り、エンジンを切り、再びエンジンを掛けて外に出た。アイドリングの音がどれぐらいに聞こえるか試している。

「うるさくはないですね」

 かなり本格的に購入の検討段階に入っているようだ。「レンジローバー」と「カイエンクーペ」の比較になるのだろうか?

「どちらを選んでも後悔はないような気がします」

 翌日、KSさんからメッセージが来た。

「昨日はありがとうございました。『カイエン クーペ』を金子さんのようにコンフィギュレーターで自分好みの仕様で注文した場合、納車はどれぐらいかかりそうですか?」

 本気で購入しようとしていることは間違いなさそうだ。

◆関連情報
https://www.porsche.com/japan/jp/models/cayenne/cayenne-models/cayenne-coupe/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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