■連載/阿部純子のトレンド探検隊
宮崎牛はもとより豚肉、ホルモンも衝撃価格で提供
黒毛和牛「宮崎牛」を中心に、手頃な価格で提供する食肉専門店として、福岡を中心に展開する「あんずお肉の工場直売所」の東京初出店となる「勝どき店」が1月29日にオープンした。
同店を運営するアトムは外食専門の食肉卸と、自社の外食事業を行っていたが、2018年より一般消費者向けに物販店の営業を開始。直営店の「あんずお肉の工場直売所」を福岡に4店舗、フランチャイズの「お肉の工場直売所」を静岡県・御殿場、横浜市・鶴見に展開。品質と驚きの価格から、福岡では行列のできる精肉店として知られており、初の東京進出となる勝どき店は直営の5店舗目となる。
同店の最大の特徴は、黒毛和牛「宮崎牛」の一頭買いによるお手頃価格での提供。宮崎牛とは、宮崎県内で生まれ育った黒毛和種で、日本食肉格付協会が定める格付基準の肉質等級5等級、4等級のみしか名乗ることができない日本を代表する和牛ブランド。
5年に一度開催される全国和牛能力共進会、通称「和牛のオリンピック」では、最高位の内閣総理大臣賞を史上初の3回連続で受賞。また、アカデミー賞授賞式のパーティーメニューにも3 年連続(2018年~2020年)で採用されるなど、海外でも高い評価を得ている。
宮崎牛は口に入れた瞬間に溶け出す柔らかさと、上品で芳醇な香りが特徴で、細かく入った霜降りと、ほどよく締まった滑らかな赤身の絶妙なバランスが作り出す舌触りが、宮崎牛の魅力だ。
「スーパーで売られている牛肉は3等級までで、4、5等級は鉄板焼き、すき焼き、フレンチといった高級外食店に卸されている。コロナ禍で外食向けは壊滅的な打撃を受けているが、自宅での食事が増えたことから小売りは非常に好調で、家庭でも良いものを食べていただきたいと、レストランでしか食べられない宮崎牛の5等級を身近な価格帯で提供している。
東京の直売店は初だが、勝どきを選んだ理由は、銀座から近く、周辺に高層マンションが多いので和牛需要が期待できることに加え、スタートの地として『勝どき』という言葉の響きも良かったため」(アトム 代表取締役社長 花田利喜氏)
ショーケースを見て驚いた。百貨店では100g・2000円ほどで販売されている、宮崎県産黒毛和牛A5等級の肩ロースがなんと680~780円!サーロインステーキが100g・680円、切り落としは100g・338円と、驚きを通り越した衝撃価格だ。
「この価格で1年間販売する。お求めやすい価格帯で宮崎牛のおいしさを多くの方に知ってもらい、厳しい中にある生産者の状況も改善してもらえればと期待している」(花田社長)
ここまで価格を抑えられるのは仕入、生産、加工、配送までを一貫して自社で行っていること、宮崎牛の取り扱い絶対量が多い上、フルセットという一頭買いをしていることにある。アメリカ向けに月間120頭輸出しているとのことで、海外と日本では好まれる部位が異なり、一頭買いしてステーキなどの部位に関してはアメリカ、シンガポール、香港といった海外に輸出して、日本人好みの部位に関しては直売所で販売するという方法で、余すところなく販売することで低価格を維持できる。
宮崎牛だけでなく、国産の豚肉、鶏肉もお手頃価格で提供。毎日の食卓で活躍する国産豚のバラスライスは100g・98円、国産豚切り落としは100g・78円。九州産の赤鶏「秋月 古処鶏」はぶつ切り100g・138円、もも身100g・198円。
また、小売店では都内でも珍しい牛肉、豚肉の内臓の品ぞろえも充実しており、国産牛の白ホルモン(小腸)が100g・198円、国産牛丸腸100g・298円、国産牛ミックスホルモン(小腸・ハツ・センマイ)が100g・228円。
「肉や野菜といった生鮮食品には市場相場があるが、相場の変動で赤字生産になっている生産者が多くいる。我々はこういったことをなくしたいと、6か月で屠畜される豚は半年間の値決めを行っている。半年間は同じ価格を維持して生産者に絶対にマイナスが出ないようにしており、市場相場が急激に上がった場合は、次の年にその分をプラスして買い取る形にしている。相場変動しないので同じ価格帯で納品でき、豚バラも年間グラム98円で販売。お客様にも国産のおいしい肉を提供できるし、相場に左右されないのは外食産業にとってもメリットになる。
ただし品質の確保は約束しており、エサの指定や、子豚の段階で微生物を食べさせて内蔵を育ててもらうといった我々の提案を受け入れてくれる群馬県の生産者さんを25年前から抱えて、年間2万頭ほどの買い取りを行っている。原価は80%ほどで利益率は低いが、数量を多く販売することで売上金額を取っていくというのが我々のやり方」(花田社長)
花田社長自ら、宮崎牛の内もものカッティングパフォーマンスを披露。もも肉は霜降りが入っていても見かけほど脂ぽくなくさっぱりと食べられる部位で人気もあり、花田社長もイチオシの部位。もも肉はロースの5倍ほどの量を販売している。
「よく動く部位はとてもおいしいが、もも肉は一番動くところであり、かつ霜降りも入っている。ヒレやロースのように柔らかくなく噛みごたえは若干あるが、味が濃くおいしく味わえる部位。もうひとつのおすすめがホルモンで、他店ではグラム350円ほどだがうちでは198円で販売している。今の時季はぜひもつ鍋で味わっていただきたい」(花田社長)
【AJの読み】肉のバラダイス!ご近所の人がうらやましい……
「あんずお肉の工場直売所」では宮崎牛、豚肉、鶏肉、ホルモンなどの精肉約300種類、九州を中心とした食品約150種類、総菜約50種類ほどを扱う。高品質の精肉に驚くほどの価格帯、豊富な品ぞろえと、まさに肉のパラダイス!近所だったら毎日通うのに、と口惜しいが、今後はまとめ買いなどのときに店舗からの宅配も予定しているとのことで、電車賃をかけても行く価値はあり!
「オンライン販売も『あんずのお取り寄せ』として、一部の商品を取り扱っているが、すべてをフォローできている状況ではなく、これからはオンラインも内容を充実させていきたいと考えている。福岡では店から30~40㎞離れているお客様が週に1~2回来られるということも多く、オンライン、通販のシステムの改善は今後の課題にしたい」(花田社長)
勝どき店オープン記念として「おうちでGO TO宮崎牛」キャンペーンを実施(2月4日で終了)。最上級A5ランクの「肉福袋」3種と宮崎牛焼肉弁当を販売。肉福袋は1万円相当が5000円、2万円相当が1万円、5万円相当が2万円で、焼肉弁当は1500円を300円で販売し、オープン初日は30分で完売した。キャンペーン期間中は連日、行列が絶えない状況で、入場制限を行うほどの盛況ぶりだった。
我が家も、タン・シンシン・トモサンカク・バラサンカクなど希少部位を盛り込んだ「スペシャル肉の三段重」肉福袋(2万円)を焼肉、すき焼きでいただいた。普段はニオイが苦手で牛肉をあまり食べない夫も「くさみがまったくなくて、今まで食べたことない牛肉」とペロリ。霜降りのバラサンカクは口の中に入れた途端にとろけて、「口の中がトロトロ祭じゃ~!」と彦摩呂状態に。個人的には赤身好きなのであっさりしたシンシンもおいしかった。嗚呼、なんて幸せな贅沢おうちごはんだろう……。
文/阿部純子