「イベント当日の動きをシミュレーションする」「ローン返済のシミュレーションを見る」のように、日常生活でよく使われるシミュレーションという言葉。当たり前に使っている言葉だが、そもそもシミュレーションとは何か、正確な意味や由来まで知っている人はそう多くはないだろう。
そこで本記事では、シミュレーションの語源や関連語、それぞれの業界でどのように使われているのかを詳しく解説する。
そもそもシミュレーションとはどんな意味?由来と類語
まず、シミュレーションの由来、類語についてを見ていこう。ちなみに、時折「シュミレーション」と表記されていることがあるが、これは日本人にとって「シミュ」が非常に発音しづらいため、発音しやすい「シュミ」に入れ替わった「音位転換」という現象。意味は通じるが、表記としては誤りである。
シミュレーションは英語の「simulation」が由来
シミュレーションの語源は、英語の「simulation」。この単語は、「似る、似せる」という意味のラテン語「simil」が派生した「simul」に、「~する行為、した状態」を表す接尾語の「ation」が合わさったもの。日本語では「真似、擬態、模擬実験」などの意味を持つ。
シミュレーションの類語は?
「模擬実験、想定実験」の意味でのシミュレーションに似た言葉に、「リハーサル」「デモンストレーション」がある。シミュレーションが主に訓練や機器の操縦、状況の再現に使われるのに対して、リハーサルは、演奏・演劇・放送など芸能関係の分野において予行練習という意味で使われることが多い。またデモンストレーションは、備わっている機能を実演し、見せること自体が目的であるものを指す。
さまざまな分野で用いられているシミュレーション技術
では、実際にどのような場面でシミュレーションが用いられているのか、具体例を参考に解説していこう。ここでは、医療業界やIT業界で取り入れられているシミュレーションを紹介したい。
医療業界におけるシミュレーション教育
医療の分野において、シミュレーションを用いた教育は重要視されている。臨床技術の向上には座学だけでなく実際の患者に接することが必要不可欠。そのため、以前は鎮静状態の患者や末期患者を利用した訓練も行われていた。
シミュレーション技術の発達により、実際に遭遇する臨床場面や症例を体験することが可能になり、知識や技術の強化、医療チームのコミュニケーション力を養えるようになった。具体的には、手術や救命措置を再現するシミュレータやバーチャルリアリティー機器、コンピュータ制御された等身大マネキンなどを状況に合わせて使い分け、適切な訓練が行破れている。
IT業界で使われている1Dシミュレーションとは
IT業界やシステム設計の分野で広く使われている、1Dシミュレーション。3Dシミュレーションが形状を再現した立体的な構造をしているのに対して、1Dシミュレーションは製品の動作原理や機能を発揮する条件を、ブロック図などで表した抽象的な計算モデルを使ってシミュレーションを行う。3Dモデルに比べて計算時の負荷が小さいため、さまざまな修正を行いながら繰り返しシミュレーションを行うことができる。
シミュレーションソフトウェアとはどういうものを指す?
シミュレーションソフトウェアとは、その名の通りシミュレーションをするために開発されたソフトのこと。「離散系モデル」「連続系モデル」など複数の種類が存在し、Web上から無料で入手できるものもある。これらのソフトウェアを活用することで、より効率的なシミュレーションが行える。
ビジネス用語以外で使われているシミュレーションとは
ここまで、ビジネスにおけるシミュレーションについて見てきたが、最後にビジネス以外の場面で使われるシミュレーションについて紹介しよう。
サッカーにおけるシミュレーションとは
サッカー用語のシミュレーションは、これまで見てきた「模擬実験」ではなく「真似、擬態」の意味で使われる。本当はファウルを受けていないにも関わらず、ファウルを受けたように見せかけ、審判を欺く反則行為のこと。PKを受けるために攻撃側が相手のペナルティエリア内で故意に転んでみせる行為が代表的だ。シミュレーションと判断されると即イエローカードが出される。
シミュレーションゲームとは
TVやアプリゲームの人気ジャンルの一つでもあるシミュレーションゲームは、ゲームの中でさまざまな状況を疑似体験するゲームのこと。日本では「SLG」、海外では「SIM」の略語で表記されることもある。
シミュレーションゲームの中でもジャンルは細分化されており、特に戦争を題材に扱った「ウォー・シミュレーションゲーム」や、街を発展させたりチームを育成する「経営・育成シミュレーションゲーム」、恋愛を軸にした「恋愛シミュレーションゲーム」などが有名。
文/oki