■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
「ハンモック泊」、「車中泊」という近頃人気の言葉を組み合わせたプロダクトが「カーハンモック」だ。
フェス会場で、休憩のためにエアコンの効いた車内で過ごしていたアメリカ人、ハンソンが、シートの上は荷物でいっぱいだけれど屋根付近には大きな空間が余っていることに気づいた。これがクルマの中にハンモックを吊るして眠る「カーハンモック」の原点。
2017年に100個限定で販売したところ完売し、2018年に大手クラウドファンディングにプロジェクトを登録。日本でもいくつかのWebサイトで紹介されている。
日本でも同様のことを考える人はおり、車内にフックを取り付けてハンモックを吊るしている様子を動画サイトやブログで見ることができる。車中泊向きのDIYといえばベッド製作が主流だが、積みっぱなしにしていても軽いこと、簡単に取り外しできるので乗車人数を犠牲にせず、また、大きな物を載せられることが車内ハンモックの利点。
ただ、動画やブログは非常に参考になるのだが、内装に手を加えるのでクルマを持っていないカーシェア派や飛行機を使う旅先でのレンタカーでは対応できない。
そこで、アメリカから「カーハンモック」を取り寄せてみた。
大統領選と新型コロナウイルスの影響で発送も郵便事情も滞り気味で、手に入ったのは注文から約1か月後。4ドアセダンとスモールSUV用の「カーハンモックOG」は日本までの送料込で121ドル75セント(約1万2600円)だった。
背負える巾着タイプの収納袋。34×40cmほどのマチなし袋で総重量は約1.4kg。
生地には6本のバックル付きベルトが付いている。↑上写真の右下はバックルとフックが付いた短いベルト。
シートは実測約156.5×121.8cmで、ロゴもなにもなく両面真っ黒。どちらを上にするか悩むが、販売サイトの画像を見ると両脇(121.8cm側)に縫い付けられた黒いテープが見えているものが多いので、テープの有無で判断するしかなさそう。ひと回り大きなサイズのものは、台形で幅広が前らしい。
フロントガラスの前でベルトをバックルで留め、分岐しているベルトをボンネット側に垂らす。バックルとフックが付いた短いベルトをボンネットの縁に引っ掛け、分岐したベルトをバックルに通して長さを調整する。後ろ側も同様で、フックはリアゲートの下側縁に引っ掛ける。
AピラーとCピラーにベルトを巻き付け、ボンネットやリアゲートで高さを固定するわけだが、販売サイトのギャラリーではリアゲートからベルトを出している写真もある。
生地の真ん中あたりにもベルトが通っているので、それはルーフの上を通して反対側のバックルで留める。これで完成だ。生地の向きに悩まなければ、5分もすれば取り付けられるほど簡単だった。
ハンモックを付けたままドアを開閉できるし、夏などは窓を開けっ放しにして窓から乗り込んでもよさそう。
公式なテストを行っていないそうだが、255ポンド(115kg)の人も使っているそう。恐る恐る乗ってみたが特段破れそうな気配はない。ただ、カローラーフィールダーは運転席があまり低く倒れず、また、後ろのドア位置のためなのか生地が前よりになって運転席に少し干渉してしまった。
生地は身長よりも短く、斜め方向に横たわるしかないので助手席側に足を伸ばせば影響はないが、気になるといえば気になる。小さな子となら2人でも眠れるが、大人のソロ利用と考えたほうがいいだろう。
気になるボディへの影響だが、フックは傷がつきにくいソフトな感触の塗装で、使用後も車体の傷や歪みは見られなかった。
ただ、最近のクルマはボンネットやリアゲートが斜めに伸びていたり、曲線を描いたりしているので、傷予防とズレ防止を兼ねて滑り止めシートをかませておくほうがいいかも。また、各ベルトは結構長く、ベルトの端が風でバタつくことも。これも傷の原因になりかねないため手持ちの布などで養生するほうがいい。
クルマに傷がつくのではと不安だったが、寝返りを打っても大丈夫。まずまずの寝心地だが天井が近く感じ、正直、外にテントをたてたりハンモックを吊るしたりできるなら、そのほうがのびのび眠れる。
カーハンモックはテントや一般的なハンモックよりも素早くセットできるので、快適な寝心地を求めるというよりは、トレッキングの後や長距離ドライブ中など、短時間でも体を横たえて休憩したいときに活用したくなるアイテムだ。スキーやスノーボード、サーフィンでは、濡れたままの板やブーツ、ウエアを車内に置いたままでも、濡れや汚れを気にすることなく寝転べることもカーハンモックの利点。
半面、コンパクトカーは生地がたるんでいると寝転がったときに下のシートや荷物に触れることがある。カーシェア&レンタカーでの車中泊の手段として、カーハンモックは決してベストではないが、ベターな道具だ。
取材・文/大森弘恵