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毎年、春と秋に行われる叙勲。著名な文化人やスポーツ選手が皇居に招かれている様子をニュースで目にしたことがある人も多いのでは。しかし、一体「叙勲」とは何のことなのか、どういう人が選ばれるのかは意外と知られていない。
そこで本記事では、日本における叙勲について、勲章・褒章の種類や選定の基準などの基礎知識、身近な人が受賞した場合のお祝い方法について詳しく解説する。
叙勲とは?制度の内容と授与の対象者
まず、そもそも叙勲とはどのような制度なのかを見ていこう。また、叙勲と一緒に話題になることが多い褒章についても併せて紹介する。
叙勲とは日本の国や公共の場において功労を挙げた人を表彰する内閣府の制度
叙勲は、わかりやすく言うと天皇から勲章や褒章が授与されること。勲章は、国家や公共に長年に渡って貢献してきた人や、顕著な功績を挙げた人に授与されるもので、70歳以上、または所定の条件に該当する55歳以上の対象者に贈られ、毎回4,000人ほどが選ばれる。
また褒章とは、文化や社会の福祉など、特定の分野の発展に多大な貢献や功績が認められた対象者に対して授与されるもの。褒賞に年齢制限はなく、団体や外国人も対象となる。
「文化勲章」や「紺綬褒章」など叙勲で授与される勲章、褒章にはどんな種類がある?
勲章、褒章にはそれぞれ種類や等級が存在する。勲章は功績の大きさによって等級が変わり、褒章は貢献した分野の違いで種類が変わる。
<叙勲で授与される勲章の種類>
・大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)
・大勲位菊花大綬章(だいくんいきっかだいじゅしょう)
・桐花大綬章(とうかだいじゅしょう)
この3つは、特に国家へ多大な貢献をした人に贈られる高位の勲章で、歴代天皇や総理大臣、海外の国王や大使に授与されている。
・旭日章(きょくじつしょう)
功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた人に授与される勲章。全部で6段階の勲等(勲位の等級)があり、勲等の高い順に、大綬章、重光章、中綬章、小綬章、双日章、単光章と呼ばれている。
・瑞宝章(ずいほうしょう)
公務などに長年従事し、成績をあげた人が対象となる勲章。こちらも、旭日章と同様、6つの勲等に分かれている。
・文化勲章
芸術や科学技術など、文化の発展に多大な貢献をした人に授与される勲章。
・宝冠章(ほうかんしょう)
2003年以前は受賞者を女性に限っていたが、栄典制度の改正により、それまで男性限定だった旭日章・菊花章・桐花章の女性への授与が可能になったため、現在は日本の女性皇族と外国人に対して授与される。
<叙勲で授与される褒章の種類>
・紅綬褒章(こうじゅほうしょう)
自己の危険を顧みず、人命の救助に尽力した人に授与される。
・緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)
長年に渡り社会奉仕(ボランティア)活動に従事し、多大な功績を挙げた人が対象。2008年には、受刑者更生支援の活動が評価され、芸能人として初めて杉良太郎氏が授与された。
・黄綬褒章(おうじゅほうしょう)
農業や商業、工業などの公務に精励し、他の模範となるような技術や事績をもつ人に授与される。
・紫綬褒章(しじゅほうしょう)
科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ、芸術文化の分野において優れた業績をあげた人が対象。オリンピックのメダリストや俳優が受賞することが多い。
・藍綬褒章(らんじゅほうしょう)
会社経営や団体活動を通じて、産業の振興や地域福祉の向上に優れた業績を挙げた人や、保護司、民生・児童委員など国や地方公共団体から依頼された公共の事務に尽力した人に授与される。
・紺綬褒章(こんじゅほうしょう)
公益のために、私財を寄付した人に授与される。他の褒章と違い、春秋の叙勲以外にも受賞機会がある。公的機関などに500万円以上の寄付をした個人、1,000万円以上の寄付をした団体が主な対象となる。
実際に勲章、褒章を授与された人は?
今まで多くの著名人が叙勲を受けている。過去に受賞した人の例を挙げてみよう。
・大隅良典(ノーベル生理学・医学賞受賞/文化勲章)
・蜷川幸雄(演劇/文化勲章)
・羽生結弦(フィギュアスケート選手、ソチ・平昌金メダリスト/紫綬褒章)
・吉永小百合(俳優/紫綬褒章)
・隈研吾(建築家/紫綬褒章)
なお、2020年には漫画家の高橋留美子、落語家の春風亭小朝などが紫綬褒章受章者に選ばれている。
身近な人が叙勲を受章した場合の対応
叙勲は著名人だけではなく、一般の人も受ける可能性がある。そこで、最後に父母や親戚、上司など身近な人が受賞者に選ばれた場合の、お祝いに関するマナーを紹介したい。
家族や知り合いも叙勲者になるかも!公務員の叙勲基準と高齢者叙勲
公務員、特に教育や福祉に直接携わる仕事や、警察、消防などの公安職に就いている人は、役職や勤務年数が選定の基準に達していれば叙勲の対象となることがある。それぞれの職業によっても異なるが、例えば警察官なら、巡査部長以上で20年以上勤続している者が対象。退職後に叙勲を受けることになる。
また、春秋叙勲で叙勲を受けていない功労者に対しては、88歳になった際、春秋の叙勲とは別に勲章、褒章が贈られることがある。これを「高齢者叙勲」「米寿受勲」と呼ぶ。
叙勲のお祝いはどうすればいい?
身近な人が受勲や褒章を受けることが決まったら、まずは手紙や電話でお祝いのメッセージを伝えよう。祝電(お祝いの電報)を贈る場合は、相手に受け取ってもらえる場所と日時を事前に確認しておくのが良い。
叙勲の受章者に贈るお祝い品、お祝い金の目安
祝賀パーティーに参加する場合はお祝い金を包み、出席できない場合は贈り物をするのが一般的。お祝い品を贈る場合は、報告を受けてから10日以内が目安となる。
お祝い品やお祝い金の相場は、知り合い程度なら1万円、親しい間柄なら5万円程度。のしの表書きは「御祝」や「御授章御祝」、水引は紅白の蝶結びを用いる。花を贈る場合は、「栄光」「名誉」の意味を持つ蘭の鉢植えや、記念になるプリザーブドフラワーなどが人気だ。
勲章の対象者が亡くなった場合に授与される死亡叙勲・遺族追賞
勲章の対象となるべき人が死亡した場合は、随時勲章が授与される。これは「死亡叙勲」と呼ばれ、時期が決まっている春秋叙勲とは別に贈られる。また、褒章を授与されるべき人が死亡した場合も、遺族に対して「遺族追賞」として杯または褒状が授けられる。
文/oki