野球界でFAと言えば、「フリーエージェント権」を指すことはご存知の方も多いだろう。しかしこのFAという言葉、FAとはそれ以外にも医療業界や金融業界など、さまざまな業界で使われている略語だ。
本記事では、FAがそれぞれの業界でどのような意味を持つ言葉なのか、具体的な例を挙げながら解説していく。
ビジネス、医療用語として使われているFAとは
まず、ビジネス、医療用語としての「FA」はどのような意味で使われているのかを見ていこう。特に、略語を使って業務を行うことの多い医療業界では、複数の意味を持っている点に注目だ。
金融業界におけるFAはフィナンシャル・アドバイザーの略
金融業界でFAは、フィナンシャル・アドバイザーを指す。財務アドバイザーとも呼ばれ、企業の財務関連の問題についてアドバイスをする人のこと。
近年、企業のM&A取引が一般化しつつあるが、財務アドバイザーはM&Aを行う際、相手方との交渉や調整といった推進役となる。投資銀行系、銀行系、会計事務所系など、どの組織に属しているかによって、得意とする業務が少しずつ異なるのが特徴。
「ファイナンシャル・アドバイザー」と表記されることもあるが、これは英語の「Financial Adviser」をアメリカ式に発音するかイギリス式に発音するかの違いだ。
主に工場で使われるFAはファクトリーオートメーションのこと
工場におけるFAとは、「ファクトリーオートメーション(Factory Automation)」の意味。生産工程を自動化するシステムのことで、従来は人が行っていた作業を産業ロボットが代わりに行うことを表している。
人間が行うには危険が伴う作業、例えば石油の精製や金属加工などは早くからFA化された分野だ。以前は、人員を減らし生産コストを削減する目的でFAが導入されていたが、雇用を守る必要性などから、近年では品質向上、生産工程の柔軟性向上のために導入されるケースが多い。FAにはさまざまなメリットがあるが、導入時に莫大なコストがかかるのが欠点。
医療用語としてのFAは”家族”や”乳腺の良性腫瘍”を表す
先述したように、医療業界で使われるFAには複数の意味がある。一般的な意味は「家族(family)」の略で、「FA来院」のように表記され、介護業界でも同じ意味で使われることが多い。また、英語で応急手当を表す「First Aid」の頭文字を取って、応急手当、初期治療を表すこともある。
症例として使われるFAは、「線維線種(Fibroadenoma)」を指す。これは、10代後半~20代後半の女性によく見られる、乳腺に腫瘍ができる病気。まれにがん化することもあるが、良性であることがほとんどで手術をしないケースも多い。急速に肥大化する、痛みがある、がんの可能性が疑われる場合は切除手術が行われる。
SNS、ゲーム、スポーツで使われるFAの意味
ビジネス、医療用語以外で使われるFAは、SNSやゲーム、野球とエンターテイメントに関連する意味が多い。雑学、豆知識として覚えておいて損はないはず。
TwitterでのFAはファンアートを表す
SNS、特にTwitter上で見られる「FAください」「FA返し」という言葉。この場合のFAは「ファンアート」の意味で、いわゆる二次創作のイラストを指している。作者に対する感謝の気持ちを表すために制作されることが多い。
ちなみに二次創作とは、題材となった作品で収入を得ていない作者によるイラストや文章のことで、例えば、アニメや映画を商業的に漫画化したものはファンアートとは呼ばない。
これらの作品は厳密には著作権違反となる可能性もあるが、あくまでもファン活動の一環であることや、題材作品の宣伝になる要素もあることから、ほとんどが黙認されているのが現状だ。
ゲーム用語のFAはゲームによって意味が異なる
ネットゲームやテレビゲームで使われるFAは、「ファーストアタック」「ファイナルアタック」の略であることがほとんどだが、その意味はゲームによって異なる。
例えば、ネットを介して複数の仲間と冒険をするMMORPGのFA(ファーストアタック)は、敵を最初に攻撃して自分が標的となる役割を担う人を指す。また、対戦型格闘ゲームのFA(ファーストアタック)は、対戦の開始後に最初に相手にダメージを与えた方にボーナスが与えられるシステムだ。
代表的なRPGの一つであるFFシリーズでは、対象者が死亡した際に発動する術や魔法のことをFA(ファイナルアタック)と呼ばれている。
野球選手が行使するFAはフリーエージェント権のこと
冒頭でも触れたが、プロスポーツ界でFAはフリーエージェント権のことを指す。日本においては野球が有名だが、プロバスケットボールにもこのシステムが存在する。
フリーエージェント権とは、所属チームとの契約を解消し、自由に他のチームと契約できる権利で、一軍登録された日数が規定に達すると取得できる。日本プロ野球の場合、入団からずっと一軍登録されていれば、7~8年で国内FA権を取得する計算になる。なお、海外へのFA権は9年ほど。
FA権を取得後にこれを行使した場合、現所属球団を含め、獲得を希望した球団と契約の交渉が可能になる。有力選手は提示年俸が高額になるため、複数の球団でマネーゲームになるケースも少なくない。
文/oki