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【動画付き】世界で最もハイエンドなオープン4シーター、ロールス・ロイス「ドーン」の意外な素顔

2021.01.31

■連載/石川真禧照のラグジュアリーカーワールド

 スーパーリッチ市場の特徴のひとつにクーペベースの4人乗りのオープンカーを用意していることが挙げられる。その4人乗りも後席のスペースがきちんと確保されていることが条件だ。現在、これを満たしているのは、ロールス・ロイスだけ。ベントレーも「コンチネンタルGT」でコンバーチブルをラインアップに加えているが、フル4シーターにはちょっと後席が狭い。マセラティ、ランボ、メルセデス・マイバッハも、キャデラック、リンカーンも4シーターのオープンモデルは生産していない。

 ロールス・ロイスは1950年代からVIPサルーンのシルバークラウドをベースにしたオープンモデル、ドロップヘッドクーペを用意している。ドロップヘッドクーペというのは英国流のオープンカーの呼び方だ。ロールス・ロイスは、BMWの傘下に入ってからもファントムドロップヘッドクーペを開発している。「ドーン」はその発展型だ。

「ドーン」の実車を初めて見たのは2015年の夏。実はこの時、世界中で実車は公開されていなかった。まだオンラインでのローンチのみ。9月のフランクフルトショーが世界初公開と言われていた。しかし、ロールスは夏に、東京・六本木の某所で非公開のお披露目会を実施した。その会場に入るには2重のチェックがあり、中はホットユーザーと言うべき富裕層の人たちが何組かいた。日本がアジア太平洋地域で最も需要が高い市場であることをロールスはわかっていたのだ。

「ドーン」という車名は、夜明けの太陽のエネルギーに満ちた一条の日差しを意味する。ロールスの新しいパワーを感じさせる名称だ。幌と呼ぶにはあまりにもしっかりとした素材のルーフを閉じている「ドーン」は、美しいクーペと同じように見える。後ろヒンジのドアを手で開けて、運転席に座る。ドアを閉じる時はAピラーのつけ根にあるスイッチを押すと自動で閉じる。

 スターターボタンを押して、V型12気筒、6.6Lエンジンを目覚めさせる。エンジン回転計のない計器盤を見てもエンジンが始動したかはわからない。音も振動もない。コラムから生えている細かいレバーで、Dレンジを選択し、アクセルを軽く踏むと、2ドアコンバーチブルは優雅に、周囲を制するように動き出す。

 走り出したら、運転席はアクセルとブレーキだけに専念すればよい。パドルシフトやドライビングモードも一切関係ない。走行はGPSデータを利用して運転者の目に届かない前方の状況を把握する8速のATが最適なギアを最適のタイミングで選択してくれる。唯一、シフトレバーに内蔵される「LOW」ボタンを押すと、V12エンジンは低音の効いた音色を楽しませてくれる。

 ルーフが開閉するコンバーチブルで気になるのは、ボディー剛性だ。まして「ドーン」はホイールベースが3110mmもある。しかし、新開発のサスペンションシステムと高められたねじれ剛性のボディーは段差や目地を越えてもミシリとも言わない。乗り心地はやや硬めだが、21インチ径のタイヤを装着しているにもかかわらず、その影響はほとんど体感できなかった。

 幌は分厚く、閉じている時はクーペと大差ない快適性を提供してくれる。後席はやや低めの着座で左右セパレートされている。居住空間だが足元は狭くはない。頭上も身長170cmなら十分にロングドライブにも耐えられる広さが確保されている。幌は走行中でも約20秒で開閉できる。オープンにした「ドーン」も美しい。意外だったのはドアウインドウを閉めても時速50kmあたりから風が室内に入ってきたことだった。

 トランクは奥行きが変形しているが、ゴルフバッグが縦に入るぐらい奥が深い。幌が折り畳まれると高さが130mmほど犠牲になる。しかし、十分に実用になるぐらいの広さは確保されている。

 改めて動力性能を調べてみると、Dレンジでの0→100km/hの加速は5秒台半ば(カタログ値は4.9秒)。急加速中は若干エンジン系から音は高まるが、不快な振動や耳障りな音ではない。あくまでもジェントルに全長5.3m、全幅1.95m、全高1.5m、車重2.6tのオープンカーは加速する。このハイエンドすぎるオープン4シーターの価格は4085万円(消費税込み)。

 さらにV12、6.6Lのエンジンを30PS、40Nm強化し、全身をブラック系でまとめた「ドーン ブラックバッチ」は4690万円から購入できる。

■関連情報
https://www.rolls-roycemotorcars.com/ja_JP/showroom/dawn.html

文/石川真禧照 撮影/萩原文博 動画/吉田海夕

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