「HR」と聞いて、いくつの意味を挙げられるだろうか。実はこの略語、ビジネス用語では主に人材を扱う業務のことを指すが、他にも時間の単位、臨床試験に関する統計用語など使用される分野によって意味が大きく異なっている。そこで本記事では、使われるシーンごとにHRの意味を紹介する。
HRとは、ビジネスシーンで人材に関する業務を指す
ビジネスシーンにおけるHRは、人的資源つまり人材のことを指す。英語「human resource」の頭文字をとった略語だ。なお、転職サイトに表記されているHRは「人事部」を指していることが多い。
HRと人事の違いは?
先述の通り、日本では人事部の意味で使われることもあるHR。しかし、言葉本来の意味を考慮すると必ずしも人事とHRは同義ではない。「人的”資源”」には資金や情報と同じように、「会社にとって優秀な人材は大事な財産だ」というニュアンスが含まれているからだ。つまり、企業にとって重要な資源である人材をどのように育成し、活用していくかを担っている部署がHR。
一方、人事は人材採用や人事評価、労務管理といった管理業務を行う「部署」のこと。HR業務の一部ではあるが、必ずしもイコールではない。わかりやすく言うと、育成や管理など人材に関わる業務全般を「HR業界」と呼び、その中の一部として人事があるイメージだ。
ちなみに、同じような言葉として「人材業界」があるが、こちらは主に人材派遣や人材コンサルティングなど、採用に関するサービスを行う業界を指すことが多い。
近年注目を集めるHRテックとは
近年、企業の経営戦略の中で人材育成や管理の重要度が増し、人事業務に最新のテクノロジーを導入する「HRテック」が世界的に注目されている。
HRテックとは、HRとテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉で、ビッグデータ解析やAI、クラウドといった最先端の技術を活用して、これまで以上に効率的かつ効果的な人事業務を展開していくこと。
HRが注目されるようになった背景には、少子化による人材不足や、働き方改革による効率化が求められるようになったことが挙げられる。また、テクノロジーの発展に伴いクラウドサービスが普及し、コスト面で負担をかけずに導入が可能になった点も背景の一つだ。
HRはビジネス以外にこんな場面で使われている
ビジネスシーンでのHRは、ここまで紹介してきた意味を指すケースがほとんとだ。しかし、医療や統計学の世界ではまったく違う意味で使われている。ここからは専門用語として使用されるHRの例をいくつか挙げ、その意味を解説していこう。
医療、看護用語では心拍数または排尿を表す
医療や看護の用語としてよく使われるHRは、表記が大文字か小文字かで意味が異なる。大文字で記載されるHRは「Heart Rate(ハートレート)」の略で心拍数を表す。心拍数とは、1分間に心臓が血液を全身に送り出すために収縮する回数のこと。健康な人であれば、1分当たり60回~80回が正常値だ。同じような意味を持つ言葉に「脈拍」があるが、これは皮膚の表面近くにある動脈を触って測る数値であり、厳密には心拍とは異なる。
一方、小文字表記の「hr」はドイツ語で尿という意味の「Harn」を略したもの。「ハルン」と読み、主に腎臓が正常に機能しているかを判断するのに役立てられている。健常な状態なら体重1kgにつき1時間で1mlの尿が排出され、1日で1,000~2.000mlになるとされるという。看護記録では「Hr〜ml」のように記載するほか、「hr排出不良」のように”尿そのもの”を意味することもある。
時間を表す単位記号
Hrは、時間を表す単位としても使われる。これは、英語で1時間を表す「hour」を略したもの。しかし、この表記は世界共通の単位体系であるSIでは認められておらず、かろうじて「h」という表記が慣用的に認められているのみ。国際的に統一化された表記ではないが、学術論文などで用いられることも多い。
学校での活動を意味する言葉
教育現場におけるHR(homeroom activity)は、クラス内で行う教育、学習活動の意味で使用される。具体例としては、学校生活の向上を目指す話し合いの活動や、全員が集まって行う集会やイベント活動、生徒の学習や人生の指針となるガイダンス活動などがあり、特に中学や高校で行われるものをHRと呼ぶ。
SNSのプロフィールでは”所属”を表す
HRの新しい使い方として、インスタグラムやTwitter上のプロフィール欄に「13HR」などのかたちで使用される例がある。この場合は、自分が所属している学年やクラス名を指し、頭の数字は学年を、後の数字はクラスを表している。例に挙げた「13HR」なら、1年3組という意味だ。
統計学ではハザード比の略称
統計学では、HRはハザード比(Hezard Ratio)の略として用いられる。これは臨床試験に関する数値で、相対的な危険度(ハザード)を客観的に判断する際に使われる。
この場合のハザードとは、発症率や罹患率、死亡率であり、例えばインフルエンザに効果のあるとされる試薬AとBを飲んだ時、ハザード比が1であれば「2つの試薬にほとんど違いはない」と判断され、1未満ならより効果が高く、数値が小さければ小さいほど有効であることを示す。反対に数値が1より大きい場合、インフルエンザへの罹患率が通常よりも高めと判断される。
文/oki