仕事、地域、住居選びは、地方移住計画の核ともいえる3大要素。そこで地方移住経験者でもあるファイナンシャルプランナーに直撃。地方移住で得するテクニックを伝授する。
FP事務所f-design
代表 清水 斐さん
東京での仕事を継続することが減収を回避する近道
地方移住に際して、地元企業への就業や就農を考える人は多いだろう。しかし、安易な転職は大きな減収につながる、と清水さんはアドバイスする。
「職業柄、移住相談を受けることは多々ありますが、〝移住先でもなるべく現在の仕事を継続できるように努めてください〟と伝えるようにしています。というのも、移住先が地方都市であっても、東京と比べるとどうしても仕事の絶対数は少なくなりますし、年収600万円を超える人はまれです。つまり、収入ダウンは避けられません。ただ、フリーランスやテレワークを認めている企業に勤めるビジネスパーソンは、大きく減収することはないでしょうし、地方移住に向くといえるでしょう」
移住者の新規就業や開業、農業、漁業、林業といった第一次産業への就労支援を積極的に行なっている自治体は多い。それらを活用して就業・起業するのは得策だろうか?
「転職希望者には、自治体の支援制度の積極的な活用をおすすめします。ただ、仕事の向き・不向きはありますし、移住者だからといって必ずしも優遇されるとは限りません。すぐに決断せず、現地を訪れるなどして1年単位で検討することをおすすめします。東京と比べて地方は、商工会議所や企業、経営者同士の結びつきが強く、つながりを重要する傾向があります。新たに起業するにせよ、今と同じ仕事を続けるにせよ、地元組織や役所へ足を運ぶなどして、顔を覚えてもらうことが大切です。移住者を対象とした補助金だけでなく、様々な助成制度を教えてくれることもありますし、地域とつながるきっかけにもなります」
地方移住を成功させるのに必要なのは、地域とつながること。仕事の面でもそれは大前提のようだ。
就業・起業の3つのポイント
【1】現在の仕事を続けながらの移住がベター
【2】移住に合わせて転職する際は年単位で検討すべし
【3】商工会議所や役場を通じて地域に溶け込むべし
就業・起業で得をする自治体制度の実例
2019年度にスタートした移住支援金は、秋田県のように規定額の100万円に自治体が金額を上乗せするケースも!
就農支援
●青森県蓬田村
夫婦共同経営を行なう50歳未満の新規就農者は最長5年間、年間最大225万円給付
●島根県飯南町
産業体験事業へ参加する新規就農者に最大2年間、月額15万円の研修費を支給
●福井県おおい町
町外からの新規就農(就漁)者は家賃の一部として月額5万3000円助成
福祉士就業支援
●島根県奥出雲町
町内の保育施設に就職した新規転入者の場合
奨励金としてIターン者に50万円、Uターン者に25万円
移住支援金
●秋田県
東京23区内在住または通勤者が新規転入に際して県内企業へ就業した場合、最大200万円助成
起業・開業支援
●北海道妹世牛町
新規転入者が町内で新規起業する場合
空き家店舗購入費および改修費用の一部として最大500万円助成
●埼玉県行田市
空き家などを賃借して新規起業を行なうUターン者の場合
最大3年間、家賃の一部として月額最大5万円および改修費として最大100万円助成
通勤
●鳥取県日野町
3年間町外に居住しており転入後3年が経過していない場合
町外への通勤費を月額最大2万円補助
※掲載した制度は2020年8月現在の適用条件などの詳細は各市町村の担当窓口にご確認ください。
東京都から静岡県熱海市へ移住した先輩移住者のホンネ
編集者 高須賀哲さん
移住者ならではの視点で地域の魅力を仕事に変える
移住をきっかけに熱海のレトロなホテルや喫茶店の魅力を伝えたいと思い、仲間とともに熱海の老舗のロゴを使った土産物をプロデュースする「LEGECLA」というブランドを立ち上げました。実際にやってみると僕たちの試みに共感してくれる地元の方が多く、順調に事業をスタートできました。移住者だからこそ気づける地域の魅力はたくさんあります。多くの人にとって地方移住は新しいチャレンジを始めるきっかけなるはずです。
取材・文/渡辺和博、廣田俊介