地方移住は新たな人生の幕開け。住居地だけでなく職業も変えるのであれば、引っ越し感覚ではいられない。まず着手すべきは移住計画の地固めだ。地方移住希望者を支援する総合窓口で移住にまつわる素朴な質問を投げてみた。
[教えてくれた人]
移住・交流情報ガーデン
移住相談員 北川侑子さん
Q. 都会暮らしに疲れました。どこに移住したらいい?
A. どういった環境で何をしたいのかを考えましょう
総務省が設置している移住・交流情報ガーデンは、地方移住の玄関口。IターンやJターンなどに興味を持ち始めた利用者が数多く来訪することから、移住、就業、就農に関した幅広い情報を提供する。
では、地方移住計画を始めるうえで、最初に手をつけるべきことは何か? 同ガーデン・移住相談員の北川さんは「まず考慮すべきなのは、ハード面よりソフト面です。人生設計に合わせて、1年以上かけて移住計画を練るのが一般的です」とアドバイスする。
ハード面とは、仕事やマネープランのこと。引っ越し費用やクルマの購入費、それから空き家を住居にする場合、補修費などが予想以上にかかることもあり、自身の移住計画に合った貯金が不可欠だ。だが、貯蓄が多ければ地方移住は必ず成功するというわけではない。移住の目的やスタイル、パートナーへの同意といったソフト面を整理することが移住で失敗しないコツだという。
「とにかく都会から離れたいという一心で、移住を検討する人は多くいますが、それだけでは理想の暮らしに近づけません。移住先でしたいこと、環境などの譲れない条件、定住あるいは二地域居住など移住のスタイルをはっきりさせることです。こうすることで移住地を絞り込みやすくなります」
条件次第では準備金を想定よりも安く抑えることもできる。
Q. 移住先の情報収集の手段はネットだけで十分?
A. 現地へ足を運ぶことをおすすめします
移住情報はネットでも得られるが、それだけでは不十分。地元の人と接点を持つことが重要とも。
「自治体の移住相談窓口を訪ねることが早道ですが、移住体験ツアーやお試し住居を活用し、現地の人たちと交流することもおすすめしています。地方移住計画をスムーズに進めるための基本ステップを紹介していますので、ぜひ参考にしてください」
移住・交流情報ガーデンでは自治体主催の移住セミナーほか、全国の自治体が実施する移住体験ツアーの情報も扱う。
移住相談員が直伝!移住の基本ステップ
【1】どんな生活をしたいのか具体的に思い浮かべる
漠然とした理由では移住先が絞れない。サーフィンに没頭したい、農業を始めたいなど、目的を明確にすることが地方移住の第一歩だ。
【2】定住移住?二地域居住?スタイルを決めよう
定住だけが移住ではない。別荘移住や往来移住など、セカンドハウスを持ち生活拠点を往来する二地域居住という選択肢もある。
【3】譲れない条件をまずは3つリストアップする
「雪のない地域で補修不要な古民家を格安で」など、無理な要望は移住を遠ざける。譲れない条件を挙げて現実味を持たせよう。
【4】移住相談窓口で情報を収集する
地域を絞った各自治体の移住相談窓口へ。41道府県2市の移住相談窓口を設ける「ふるさと回帰支援センター」を利用しよう。
【5】目当ての地域に直接足を運ぶ
地域によって受け入れ方に温度差がある。お試し住居などを活用して何度も通うなど、地域と積極的に交わる姿勢を持ちたい。
【6】これから住む住居を下見する
最近は空き家バンク制度を設ける自治体が急増。格安で物件を購入・賃貸できるが、傷んでいる物件も多いため、下見は必須。
【7】必要なモノ・コトを改めて見直あす
移住すれば何とかなるという考えは捨てよう。就業、就農、住居や移動手段だけでなく、パートナーの理解を得ることも重要。
【8】引っ越し後は挨拶回りへ
田舎に移住する場合は、引っ越し後に手土産を持参して地区の区長へ挨拶に伺うのが普通。周辺住民への挨拶回りも忘れずに。
今さら聞けない地方移住のU・I・J
Uターン
地方から別の地域へ移り住み、しばらくしてからもとの地域へ移り住むこと。
Iターン
生まれ育った地域(主に大都市)から、別の地域へと移り住むこと。
Jターン
大都市などへ移り住んだ後、地元近くの都市や地方都市圏へと移り住むこと。