父親の健康状態が妊娠喪失に関連
子どもを持つ計画がある男性は、自身の体調管理にも気を付けた方が良いかもしれない。出産予定のある女性の夫に高血圧や肥満などの健康問題があると、流産や死産に至るリスクが高まる可能性があるとする研究結果を、米スタンフォード大学のMichael Eisenberg氏らが、「Human Reproduction」に12月18日発表した。
Eisenberg氏らは今回、米国の2009〜2016年の保険請求データを用いて、95万8,804件の妊娠に関するデータを解析した。このうち17万2,995件は、流産や死産、子宮外妊娠により妊娠喪失に至っていた。
Eisenberg氏らが、妊娠前に診断された父親の疾患と母親の妊娠喪失リスクとの関連について検討した結果、父親が抱える健康上の問題が増えるごとに妊娠喪失リスクが高まることが明らかになった。
例えば、妊娠喪失リスクは、男性がメタボリックシンドロームの構成要素を1つ持っていると10%、2つ持っていると15%、3つ以上持っていると19%、それぞれ上昇していた。
なお、メタボリックシンドロームとは、肥満や高血圧、脂質異常症、2型糖尿病といった心疾患や脳卒中のリスクに関連する因子が複数重なった状態を指す。
これまでに、父親の高齢と妊娠転帰の悪化との関連を示す研究結果が報告されており、加齢に伴う精子の質の低下がその原因である可能性が示唆されてきた。しかし、「今回の研究では、年齢に関係なく、父親の不良な健康状態が妊娠転帰に関与していることが示された」とEisenberg氏は強調する。
また、男性に健康上の問題がある場合、そのパートナーの健康状態も悪い可能性はある。しかし、Eisenberg氏らの研究では、女性の健康状態も考慮した上で解析が行われており、このことだけでは結果を十分に説明できないことが分かった。
Eisenberg氏らは、「この研究では、男性の健康問題と妊娠喪失との関連が示されたに過ぎず、因果関係が明らかになったわけではない」としながらも、「得られた知見から言えることは、父親の健康状態が妊娠転帰に影響を及ぼす可能性があるということだ。したがって、母親だけでなく父親に対しても妊娠前にカウンセリングを行うべきだ」との見解を示している。
非営利団体マーチ・オブ・ダイムズのRahul Gupta氏は、「家族の健康は、子どもの健康にも重要であることは知られている。子どもは周りの大人たちから食事や運動などの生活習慣を学ぶからだ」と指摘。
また、「今回報告された研究結果は、子どもは受胎時から既に父親の影響を受け始めていることを示したものだ」と評価している。
現時点ではこうした結果が得られた要因ははっきり分かっていない。ただ、Gupta氏によると、過去の研究で父親の遺伝子が胎盤の形成に関与していることが示されている。
また、妊娠喪失は胎盤の問題に関連していることが多いという。同氏は、「この研究分野は今後さらに掘り下げる必要がある」と話している。
一方、Eisenberg氏は、「妊娠転帰を考えると、最も重要なのは女性の健康だが、父親になる男性も自身の健康に気を配るべきだ」との見解を示している。(HealthDay News 2020年12月23日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/humrep/advance-article/doi/10.1093/humrep/deaa332/6041183?searchresult=1
Press Release
https://www.eshre.eu/Press-Room/Press-releases-2020/Health-fathers-risk-pregnancy-loss
構成/DIME編集部