「卵はひとつのカゴに盛るな」とか「落ちてくるナイフはつかむな」といった相場の格言はよく耳にする話。ほかにも先人たちが残した経験則を言葉でまとめたものは投資初心者にとって役立つ言葉でもあり、相場の動きを読むのに適している。金融市場でネガティブなニュースが飛び交った時には、円が買われやすいというように、仕組み的に必然で動くこともある。そんな経験則や仕組みを「定石」としてまとめた。知っておいて損はないどころか、投資の糧になること間違いなし!
【定石01】相場は平時が7割
アベノミクスやバブル景気といった相場急騰や、リーマンショックなどの相場急落は人々の心に残るので、相場はいつでも動いているように思いがち。しかし実はこれ、値動きが小さい。おおむね1日の動きが±1%以下になる日は1年のうち7割を占めるので、急騰急落に賭けてはいけないし、それに一喜一憂しないのがよい。
【定石02】有事のドル買い。リスク回避の円買い
戦争勃発やテロ被害が起きると、リスク回避として基軸通貨であるドルが買われやすく、経済危機の局面では、対外債権の額が世界1位である日本円が買われやすい。米国内での戦争やテロでは米ドルが売られやすくなるので、世界全体を見渡して、買われる通貨の国に有事が発生していないことを注視することが必要。
【定石03】上がり百日、下げ三日
相場の下落局面は一気に下げてしまう一方で、上昇相場は短期目線での買いと中長期の利益確定売りが入り交じるため、じわじわと少しずつ上げていくのが相場の状態であることをいう。相場が過熱し価格の天井が近づいてくると、信用取引の買い残が増えてくるので、投資を始めようとする時や、天井をつかみたくない場合に調べてみるのが有益。
【定石04】二番底は黙って買え
株価の下落が進み、一度最安値を更新。その後価格が戻り始めたものの、1度目の最安値くらいまで価格を下げた場合、そこが相場の底として判断できる場合が多い。したがってその時点で買っておけば、利益を得られやすい。相場によっては三番底が発生することもあるので、上下を繰り返して赤字になったからといって狼狽売りせず、様子見も必要、ということでもある。
【定石05】落ちてくるナイフはつかむな
相場が急落した時は、垂直落下してくるナイフをつかむようなもので、ナイフの刃部分をつかむと大量出血して投資に失敗してしまうという例え。きちんと最安値を付け、価格が戻り始めたのを確認してから投資をすれば十分に間に合うので、慌てて投資を始めてはいけない。
引用元:TradingView(http://jp.tradingview.com/)
NYダウ平均株価の日足チャート。コロナショックで2万ドル割れしたが、3月上旬からの下げ相場で焦って買った人は月末にかけて損が大きくなったことがわかる。
【定石06】三割高下に向かえ
利益を極限まで取ろうとするのではなく、価格が購入時点の3割増になったら、売却したほうがよい。利益を追いすぎると相場が転換して大損してしまうことがあるからだ。利益を確定するまでが投資。長期で積み立てようと考えていても3割増くらいになったところで一度利益確定を行ない、ポートフォリオのリバランスを考えよう。
引用元:TradingView(http://jp.tradingview.com/)
アップル社の株価チャートに価格ラインを引いてみると、2020年3月から3割上がり、4月中旬に5ドルほどの下げがあった。また9月の最高値以降、3割ほど株価を下げて上がり始めている。これも例のひとつ。
【定石07】暴落相場の赤札銘柄は買い
赤札とは、価格が高い株銘柄のこと。IT化が進んでいなかった時代、証券会社内の株価ボードに、価格が高いと赤字で値段が書かれていたことから、その名がついた。下落相場で、逆行して価格が上がっている銘柄を買っておけば、新製品・サービスの発表があるなど、さらに上がっていく情報が出やすい。
【定石08】頭と尻尾はくれてやれ
相場の天井と底は誰にもわからないし、調べようがない。後々になって、あの時が天井だった、底だった、という答え合わせができるのみ。天井や底を狙い撃ちしようとすると失敗することが多いため、買う時も売る時も少し時間を置いたほうがリスクが小さくなる、という考え方。頭と尻尾はコストの一部だと思えばよい。
【定石09】上がった相場は自らの重みで落ちる
どんな相場も未来永劫上げ続けることはない。いつか下がる時が来るもので、高く上がった時ほど落ちるのも早かったりする。そのため、上昇が続くから一気に投資を始めて積み立てていこうという考えを持つのはよいが、急落後、大きな赤字を見るのが嫌で、すぐに損切りすることにならないよう気をつけたい。
【定石10】卵はひとつのカゴに盛るな
卵の殻は割れやすいので、ひとつのカゴに盛っておくと、そのカゴを落とした場合にはすべての卵が割れてしまう。複数のカゴに分けて持っておけば、ひとつのカゴを落とした時にほかの卵は無事である、というリスク分散、分散投資の考え方。分散の仕方が大事で、国単位、業種単位で分けるようにすること。よくあるミスは、運用ファンドが異なるだけで、投資している金融商品はほとんど同じ投資信託を買ってしまうことだ。
出典:日本証券業協会(http://www.jsda.or.jp/jikan/lesson5/)の資料をもとに編集部作成
分散手法の一例。証券会社が加盟する日本証券業協会の解説では、(1)異なる資産、(2)異なる地域、(3)時間、という3つの分散にするとよいと解説している。
【定石11】指値は取り消すな
最初に決めた「買い価格」「売り価格」は想像より的を射ていることが多い。そのため、いくらになったら買おう、売ろうと決めたら、その値段を変更するのは得策ではない。あまり情報源がない中、素直な視点で投資先の評価をしているので、人間の思考のクセ的に実は有効な値段であることが多い。
【定石12】棒上げは棒下げにつながる
ほかの日や週に比べて2倍、3倍と一気に価格が上がった株価は、高値を維持し続けるのは難しく、短期間で元の価格近くまで戻すことが多い。そのため、急騰している銘柄の新規投資は待つほうがよい。
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取材・文/編集部