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私がBMW ALPINA「B3」に満点を投じた理由

2021.01.16

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの特別賞「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」を獲得したのが、BMW ALPINA「B3」。筆者も満点を投じた。BMWをベースにして独自のチューニングによって、高性能車を仕立て上げていくというALPINAの手法とコンセプトは、これまでと変わらない。

機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 新型「B3」用のエンジンも、BMW「M3セダン/M4クーペ」に搭載されている「S58」型ユニットをベースとしている。3.0L 直列6気筒ツインターボで、最高出力462PS/5500~7000rpmと、最大トルク700Nm/2500-4500を発生する。「M3セダン/M4クーペ」は、最高出力が480PS/6250rpm、最大トルクが550Nm/2650-6130rpm。

 新型「B3」は、最高出力では「M3セダン/M4クーペ」に及ばないものの、最大トルクでは大きく上回っている。回転数を高めて得られる最高出力ではなく、最大トルクを追求する方向性がALPINA流だ。それも2500rpmから発生するというから、一般道をゆっくりと流すような場合でも、アクセルペダルをほとんど踏むことなく余裕たっぷりに加速していく。

 高速道路に上がって、前方の交通が空いていることを見計らって右足を少し深く踏み込んでいくと、「B3」は力強く加速していく。回転の上昇とともにパワーが高まっていき、そこにターボパワーが上乗せられていく。ドカンと一気に増強されるのではなく、滑らかに少しずつ強まっていく。時間にすればわずかなものなのに、永遠に続いていくかのように息が長い。「B3」の加速はジェントルそのものだ。0-100km/hの加速が3.8秒、0-200km/hの加速が13.4秒、最高速度303km/hという超俊足なのにガサツな振る舞いを一切感じさせない。

 エンジンパワーが極めて滑らかにトランスミッションやデフなどのコンポーネンツを伝わって、4本のタイヤに伝えられていく様子が可視化されてイメージできそうなほどだ。超絶スムーズで強力な加速にZF社製の8段ATの貢献も大きい。状況に応じて、キメ細かに変速していく。

 走行モードは「コンフォート・プラス」「コンフォート」「スポーツ」から選べる。他の高性能車ならば、ここにほぼ必ず「スポーツ・プラス」も加えて、これ見よがしな強烈な加速を見せ付けられるところだが、アルピナはそうした不躾な振る舞いはしないのである。新設計のスプリングにプログラミングが最適化された電子制御ダンパーが組み合わされており、アンチロールバーにも独自のチューニングが施されている。

 BMWのxDriveをベースとした4輪駆動システムはトルクを前後のアクスルに連続的に可変配分している。タイヤは、「クラシック」ホイールを履いたピレリの「Pゼロ」20インチだったが、「ダイナミック」ホイールを履いた19インチ仕様も用意されている。20インチもの大径ホイールを履いた太いタイヤでは、タイヤの上下動がボディーの揺れを拡大させてしまうのではないかと心配してしまうが、新型「B3」にとっては杞憂で終わった。不快な振動もなく、タイヤとサスペンションが路面からの入力を受け止めても、乗員が感じる前にすべて吸収してしまっている。

 豊饒でありながら繊細なパワーを洗練された所作でいつでも発揮できる安心感がある。超高性能を有しながら快適な乗り心地という矛盾のように聞こえる乗り心地もこれまで通りのALPINA流の大きな魅力だ。最新のBMWをベースにしているだけあって、ACCやLKASなどの運転支援機能もそのまま「B3」に引き継がれている。運転中の安全に寄与し、特に長距離走行でのドライバーの負担を軽減する運転支援機能は最新のものを選びたい。その点でも、B3は抜かりない。

商品として魅力的か? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 筆者が2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤーの特別賞「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」として、ALPINA「B3」に満点を投じた理由について書いてみたい。まず第一は、文字通り「B3」のパフォーマンスが素晴らしいことにある。前述した通り、「B3」の走行パフォーマンスは唯一無二のもので、他のクルマでは堪能できない素晴らしさが備わっている。

 第2の理由は、ALPINA流のクルマ造りの可能性の大きさに着目したからだ。ALPINAというメーカーは、創業以来、既存のBMW各車に手を加え、元のBMWよりも魅力的なクルマを生み出すという手法を採ってきた。この手法が、これからの時代に大きな可能性を秘めているように思えてならないのだ。

 これからの時代の自動車は「CASE」と略称される運転の自動化や電動化、インターネットへの常時接続などといった新しい課題を克服していかなければならない。それらを克服するためには技術や資本を集約しなければならないだろう。でき上がったクルマは事故を起こさず、CO2排出量もゼロかゼロに近く、所有しなくてもシェアリングで便利に使えて、移動のためだけにはことが足りるようになる。99%の人たちはその状況を大歓迎するはずだ。

 しかし、それでは満足できない1%の人たちがいて、その人たちがALPINAのような特別仕立てのクルマを熱烈に歓迎するに違いないのだ。その時代に、BMWがどんなクルマを造っているかわからないから、ALPINAもどんなクルマを造っているかはわからない。だが、「自動車メーカーが大量生産したクルマに独自のノウハウにもとずくチューニングを加えて特別のクルマを少数台数だけ造っていく」という方法は、近未来にこそ生きてくるのではないか?

 それは、ALPINAだけにとどまらず、すでにポールスターがボルボをベースに、独自のクルマを造り始めている。モーターとバッテリーだけで走る電気自動車(EV)ともなれば、一台を構成するパーツの数は現在のエンジン車の数分の一で済むようになり、バッテリーも乾電池の「単一、単二、単三」のように規格化されるかもしれない。モーターや補機類なども規格化されたら、“もはや大量生産されるクルマに違いはない。どれも同じだ”と言われるようになるかもしれない。そうした時にこそ、アルピナの方法は輝きを増すに違いない。

 現在でさえ、クルマは大量生産される工業製品だが、近未来にはメーカーの数が減り、車種が集約されればされるほど、それとは反対の少数台数しか造られない特別なクルマの価値が増してくる。そうなったら何もボディーからパワートレインまで独自のものを造る必要はなく、既存のクルマをチューニングすればよい。電動化が進めばパーツの数が減り、チューニングもやりやすくなっているはずだ。

 130年以上前に自動車が生まれ、これまでおびただしい数の自動車メーカーが生まれ、消えていった。現存するメーカー数は、もっと減っていくことだろう。電動化や自動化などのCASEを克服するためには、寡占化せざるを得ない。寡占化して、車種の数も減っていけばいくほど、それで物足りない人たちがALPINAやポールスターのような少数台数生産のクルマを求めることになる。

 また、CASEによって所有されるクルマの数が減っていくのならば、大量生産&大量消費といった20世紀から続く経済モデルそのものも根本から見直されることだろう。だから、これからの時代では、ALPINAの価値は増してくるし、ALPINAのような少数台数生産という方法が見直され、後を追うメーカーが生まれてくるだろう。

 そのように、ALPINAの存在と方法は示唆に富んでいる。B3のパフォーマンスに圧倒されながら、その有望な近未来について考えた。「パフォーマンスカー・オブ・ザ・イヤー」受賞は、大いに的を射ていると思った。

■関連情報
https://alpina.co.jp/models/b3/highlights/

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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