今後、日本でさらに加速すると言われる少子高齢化。働く世代にとっては、将来の年金はどうなるのか気になるところだ。
日本の年金制度は、よく「3階建て構造」と言われる。1階にあたるのが「国民年金」、2階が 「厚生年金」 や「国民年金基金」、3階が「企業年金」や「個人年金」だ。1、2階部分は国が運用に関わる公的年金で、3階部分は私的年金と呼ばれる。
中でも、私的年金の一つである「企業年金」は、複雑で理解しづらいという声も多い。そこで本記事では、企業年金の概要や種類、受け取り方などをわかりやすく解説する。しっかり理解して老後に備えよう。
企業年金とは?
企業年金を一言で言えば、企業が福利厚生の一つとして任意で設ける年金制度。3階建て構造の3階、私的年金に分類される。
企業年金は企業独自の「私的年金」
20歳以上の全国民が加入する国民年金をベースに、会社員や公務員が加入する厚生年金(自営業者が加入する国民年金基金)のいずれかが上乗せされる。これらは「公的年金」として国が運用する制度だ。
公的年金にさらに上乗せされるのが、「私的年金」。私的年金には、iDeCo(イデコ)のように個人で加入するものや、勤務先を通して加入する企業年金がある。
厚生年金と企業年金は、どちらも会社員が加入するものであるため「どちらか一方しかもらえないのでは?」と誤解されがちだが、会社が企業年金制度を設けていれば、「厚生年金に加えて企業年金も」受け取れる。
会社で働いていれば必ずもらえるもの?
企業年金はあくまでも”任意”の年金制度。導入するかどうかは企業ごとの判断に委ねられている。「加入しているつもりでいたのに、老後に受給できなかった」などの事態を避けるためにも、勤務先や就職先に「企業年金制度が設けられているのか」「自分は加入している状態なのか」を事前に確認しておこう。
もし、勤務する企業に企業年金が導入されていない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を検討するのも選択肢の一つだ。
企業年金の種類
企業年金はさらに「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」の3つに分類される。それぞれの特徴を見てみよう。
厚生年金基金
国の厚生年金の一部を、企業が独自に設けた基金で管理・運用し、国に代わって企業が独自の給付を上乗せして支給を行う制度。厚生年金保険法の改正によって平成26年4月1日以降は新設が認められなくなったため、これまでのものは代行返上して確定給付企業年金に移すか、解散するかの処理が進められている。
確定給付企業年金(規約型/基金型)
給付額があらかじめ約束されているのが、確定給付企業年金。企業から委託を受けた生命保険会社や金融機関などが掛金を預かり、管理や運用、給付を行う「規約型」と、企業が厚生労働大臣の認可を受けて企業年金基金を設立し掛金の管理や運用、給付を行う「基金型」がある。
企業型確定拠出年金
アメリカの税法401K条項をモデルにした「日本版401K」と呼ばれる制度。従業員自身が金融商品を選び、企業が拠出する掛金を自身で運用し積み立てる。企業は支払う掛金だけを約束し、従業員が将来受け取る給付額は自身の運用次第となる。
加入している企業年金の確認方法
在職中であれば、勤務先の就業規則や退職金規程、規約で企業年金の有無は確認できる。給与明細に項目が設けられていることもあるため併せてチェックしておきたい。それでも不明な場合は、人事や総務などの担当部署へ問い合わせよう。
すでに退職している場合、勤務先や受託機関から退職時に受け取った案内、もしくは加入員証や手帳を確認する。また、企業年金連合会のサイトで、企業年金の持ち運び(ポータビリティ)記録を確認することも可能だ。
いつから受け取れる?企業年金の受け取り方
退職時期が近付いたら、受給のための条件や手続きをよく確認し、受給漏れのないようにしよう。給付に関する事項は、それぞれの企業年金でルール(支給条件)が定められている。
確定給付企業年金の場合
退職年金である「老齢給付金」と、中途退職者のための「脱退一時金」は必ず給付しなければならないなど、最低限の条件は共通するが、支給対象となる加入期間など細かいルールについては、規約型では会社ごと、基金型ではそれぞれの企業年金基金ごとで定められている。
老齢年金の受給時期についても、規約型では「60~65歳までの間」で運用機関が定める。ただし、受給時期が定年年齢以外になっているケースもあるため注意が必要だ。基金型では、60歳あるいは公的年金が支給開始になったときに支給される。
また受給方法も、それぞれのルールによって「一時金」を選択できるケースもあるため、自分はどのような受け取り方ができ、どう受け取るのがお得になるのかを併せて確認しておこう。
企業型確定拠出年金の場合
確定拠出年金でいう給付とは、基本的に自分の運用口座に貯まっているお金を受け取ることを意味する。ただし、受け取りは60歳以降と決まっており、70歳までの間で任意の時期が選択可能だ。
規約型確定給付企業年金の場合は、退職時に会社が契約している生命保険会社や金融機関に手続きする。その他の企業年金の窓口は運用機関であるため、受給者本人による手続きが必須であるケースも多い。必要書類なども各運用機関で定められているため、自身でしっかりと確認し漏れのないようにしよう。
中途退職の場合
2005年より、退職した場合の企業年金の持ち運びが可能になった。相互に持ち運べるが、「転職先の企業年金で受け入れ期間が定められているケースがあること」と、「確定拠出年金からは、確定拠出年金か確定給付企業年金への持ち運びのみになること」には注意が必要だ。
次の職場が決まっていないときや、今後企業年金への加入を考えていない場合でも、「脱退一時金」や「退職一時金」は受給可能。勤続年数不足で年金の受給資格を得られない退職者が、年金の代わりに受給できるものなので、忘れずに手続きしたい。
文/oki