バイト情報誌や転職サイトの求人で、給与の欄に「固定給+インセンティブ」「インセンティブ制度あり」という記載を目にしたことはないだろうか。なんとなく給料に関係することであることは見当がつくが、通常の給与体系とは何が違うのか、正確にその違いを説明するのは意外と難しい。
そこで本記事では、インセンティブの正しい意味、そしてインセンティブ制度の具体例を詳しく解説する。企業でインセンティブ制度の導入を検討している場合は、最後に紹介するインセンティブのメリット、デメリットもぜひチェックしてほしい。
インセンティブとは何?元々の意味と具体例
まず、「インセンティブ」という言葉の意味や由来、よく間違われやすい「モチベーション」との違い、実際にどんなインセンティブ制度があるのかを順に見ていこう。
インセンティブは英語の「incentive」に由来する
日本で使われているインセンティブの由来は、英単語「incentive」。これは「励ます」を意味するラテン語の「incentivus」から派生した言葉で、日本語では「刺激や動機、やる気」などと訳される。心理学用語では「誘因」や「動因」という意味で使われるようだ。
ビジネス用語としてのインセンティブの場合、「目標達成の際の報奨金、奨励金」という意味で用いられることが多い。また、「奨励金を渡す制度そのもの」を指していることもある。
混同されがちな「モチベーション」との違い
インセンティブとよく似た言葉に、モチベーションがある。これも日本語で「やる気、動機付け」といった意味を持つが、インセンティブは外部からの刺激(報奨金など)によって上下するものであるのに対して、モチベーションは自分の気持ちや考え方といった「内発的な理由」で上下する場合も含まれている。
インセンティブ制度とは?企業で採用されている例
では、具体的にインセンティブ制度とはどんなものがあるのだろうか。実際に企業で実施されている例をいくつか見てみよう。
GIB制度
人材派遣企業の最大手、リクルートが実施しているGIB(Goal in Bonus)制度。これは、四半期ごとに会社が設定する目標を達成すれば、一定額の報奨金や社員旅行が支給されるというインセンティブ制度。GIBで設定される目標は、会社全体や部門ごとなど複数にわたっており、組織全体で目標に向かって協働し、努力し合う環境づくりに役立っている。
インセンティブ・ポイント
株式会社ベネフィット・ワンが提供している「インセンティブ・ポイントサービス」は、ソフトバンクやPanasonicなど、各業界の大手企業をはじめ、約500社が導入している社内ポイント制度。目標の達成だけではなく、そこに至るプロセスや日々の細かい業務に対する評価を細かくポイント化する。
従来のように上司から部下、という一方通行の評価ではなく、社員同士の”360°の評価制度”を仕組み化しているのも特徴の一つ。日頃から社員が積極的に相互評価することで、社内のコミュケーションが活発になり、導入した企業の多くで業績アップにつながっているという。
インセンティブと賞与の違い
インセンティブは、先述のように報奨金などのかたちで給与とは別に支給されることが多い。では、ボーナス(賞与)とはどう違うのだだろうか。
まず、インセンティブは金銭だけではなく、表彰や賞品、労働環境の改善といった”社員の労働意欲の向上に繋がるものすべて”が含まれる点が賞与との違い。また、賞与は基本的に会社全体の業績によって金額が左右されるが、インセンティブは個人やチームの成果が評価される。
必ずしも「賞与(ボーナス)=インセンティブ」とは言い切れないが、会社によっては賞与そのものをインセンティブとして捉えているケースもある。また、例えば営業部門などでは「賞与+インセンティブ」とし、個人の成績を加味した分を賞与として上乗せすることも少なくない。
インセンティブのメリット、デメリット
それでは実際に企業がインセンティブ制度を取り入れた場合、どういったメリットが得られるのだろうか。また、同時に起こりうるデメリットについても理解しておこう。
インセンティブのメリット
・モチベーションアップにつながる
成果に応じて報酬が得られるインセンティブ制度は、自分やチームの目標が明確に提示され、やるべきことが具体化されることから、モチベーションアップに期待できる。また、具体的な数値で目標が設定されている場合、評価の基準が人によって変化することがなく、努力や実力が正当に評価されるため労働意欲の向上につながりやすい。
・会社が求める人材や働き方が明確になる
企業が設定するインセンティブの目標は、つまり「会社側が理想とする働き方や人材の評価点」。これを共有することで企業方針が社員にも浸透しやすく、新規採用の際に具体的なモデルとして提示することもできる。
インセンティブのデメリット
・社内の人間関係に悪影響を及ぼす可能性がある
個人の成績に対するインセンティブ制度の場合、一部の社員のみに報酬が偏ってしまうケースや、社員同士の過剰な競争を生んでしまう可能性もある。過剰な競争状態になると、社員間でのコミュケーション不足や、有用なノウハウを共有しづらい環境になることも考えられる。
・目標の数字や指標に縛られてしまう
成果を求めるあまり評価される指標ばかりを重視すると、仕事に対する柔軟な思考や広い視野が持てなくなることも考えられる。また、評価対象である自分やチーム以外に無関心になるなど、連携がとりづらくなるケースも起こり得るだろう。
・報酬内容によっては課税対象になることも
金銭以外の報酬、具体的には譲渡制限株式や自社株購入権などのかたちでインセンティブを受け取る場合、社員自身が確定申告を行わなくてはならない。これを忘れてしまうと「申告漏れ」の状態になってしまうため注意が必要だ。
文/oki