不整地や雪道での力強い走りを目指したタフなスリーター(三輪車)が、「ホンダ ジャイロX」だ。
2サイクル49cc、5ps/6500rpmのエンジンを搭載。コーナーリング時にフロントボディが左右にスイングする、「ナイトハルト機構」により、3輪の安定性とバイクの軽快な操縦性を兼ね備えている。
また、ノンスリップデフ機構やワイルドパターンの低圧ワイドタイヤを装備し、不整地や雪道、坂道などで優れた走破性能を発揮する。
アウトドアライフイメージの外観を採用。さらに荷物を前後に積めるフロントデッキとリア大型キャリアで、実用性と使い勝手は抜群だ。
リア駆動軸にデファレンシャル・クラッチを装備、内輪と外輪の回転差数が自動的に調整されるため、思い通りのコーナーリングを実現する
全長1595×全幅625×全高1395mm。乾燥重量は81kgで燃料タンク容量は5.0Lとなっている。発売当時の価格は17万9000円だった。
「ホンダ ジャイロX」は当初、オフロードイメージのワイルドなスリーターだったが、スリーホイールでワンタッチ操作のパーキングロック機構をもつことで、2輪車のようなスタンドが不要。しかも荷物を搭載しやすいことからビジネスシーンでも重用されるようになっていく。
小荷物の配達に便利な「ホンダ・ジャイロ・アップ」が追加
大びん20本用のビールケースが積める、450×570mmの大型リアデッキを採用したビジネス用スリーター、「ホンダ・ジャイロ・アップ」が、1985年10月1日より発売された。
価格は24万9000円だった。
雨でも大丈夫! 大型風防付き「ホンダ ジャイロ キャノピー」を追加
そして、1990年12月1日より、ワイパー付ウインドスクリーン(風防)とルーフを装備した三輪ビジネスバイク「ホンダ ジャイロ キャノピー」が発売された。
大容量(62L)のキー付きトランクを装備した「ワゴンタイプ」(価格39万9000円・発売当時)と、
フラットな荷台形状の「デッキタイプ」(価格38万4000円・発売当時)の2タイプが設定された。
4ストロークOHC4バルブエンジンを搭載
そして、2008年に「ジャイロX」と「ジャイロキャノピー」は、従来の2ストロークエンジンから、水冷4ストロークOHC4バルブエンジンに一新。
電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)を採用し、燃費はジャイロXベーシックタイプで60km/L(30km/h定地走行テスト値)と、従来モデルに比べ32%の向上を実現した。
また、排気ガスを浄化する触媒装置(キャタライザー)をエキゾーストパイプに内蔵した。
1982年の登場からマイナーチェンジをくり返しながら40年近く作り続けられている「ホンダジャイロX」。
そして、派生車種でいながらすっかり日本の配送現場に定着した、「ホンダジャイロ キャノピー」も30年以上生産し続けた。
同社の代表的なモデル、「カブ」ほどメジャーな存在ではないが、当初のアウトドアイメージからビジネスユースへと使用されるシーンを変化させつつ、人気を維持してきた。
コロナ禍でデリバリー業態が注目される昨今、両車はますます存在感を高めている。
文/中馬幹弘