スポーティスクーターが大人気となった1980年代中盤。そこには新たな時代の変化の波が押し寄せていた。
原動機付自転車の運転者に対する乗車用ヘルメットの着用義務規定が、昭和61年(1986年)7月5日から施行されたのだ。
今では考えられないことだが、1986年までは50cc以下のバイク、いわゆる“原チャリ”は、ヘルメットをかぶらなくても運転できたのである。
しかし、同日よりヘルメットが着用義務になったことで注目されたのが、「メットイン」機能だ。
「メットイン」を実現すべく、スクーターをはじめ多くのバイクが、ヘルメットを収納できる様に設計。駐停車での利便性を高めることとした。
スポーティスクーターも、その例外ではなかった。しかし、当時のホンダの人気車種、「DJ・1」シリーズはメットインではなかったのだ。
メットインのスポーティスクーターが登場
そんな中、ホンダ期待のスポーティスクーターとして誕生したのが、「ホンダ・ディオ(Dio)」だ。
フルフェイス・ヘルメットや小物が収納できる、24Lセンタートランクをシート下に内蔵。
4Lの燃料タンクをフロアステップ下に配置し、収納スペースを確保しながらも足つき性の良い、700mmのシート高を実現している。
エンジンは、新設計の空冷・2サイクルを搭載。6.4ps/6500rpmの最高出力を達成する。
また、足まわりはフロントにテレスコピックサスペンションと大径95mmのブレーキを採用する。
価格が12万6000円と抑えられたこともあり、「ホンダ・ディオ」は大ヒット作となる。
その人気を受けて、「ホンダ・ディオ」はロングセラーモデルとなった。
1992年2月20日には、ハイマウント・ストップランプ内蔵のリア・スポイラーや、7.0ps/7000rpmを発揮する新エンジン、フロントディスクブレーキを搭載する「ホンダディオZX」を発売。
オフロードイメージの装備を採用した「ホンダDioXR BAJA」は1994年3月4日に発売された。
コンパクトで軽量、足着き性に優れた低いシートを採用した、「ホンダ Dio Fit」は1997年6月1日に発売。
さらに、水冷4ストローク50ccエンジンを搭載した新「Dio」を、2001年3月10日より発売するなど、時代の変化に対応していく。
現在、50ccのラインアップはなくなったが、「Dio110」としてその名は継承されている。
1988年の登場から33年もの年月を重ねてきた、ディオ。今後もこの名前が廃れることなくホンダのスクーターであり続けることに期待したい。
文/中馬幹弘