レプリカバイクブームに沸いた日本。走りを磨いたスクーターも数多く誕生した。
ホンダは1983年11月18日に「ホンダ・ビート」を発表。同年12月1日から発売を開始した。
ビートというと、軽自動車のオープンカーを思い出す浮かべる人が多いだろうが、あちらは1991年の発売。スクーターが先輩になるわけだ。
常識を覆すハイパワースクーターが登場
「ホンダ・ビート」はコンパクトな半球型燃焼室を採用した最高出力7.2馬力の水冷2サイクル49ccエンジンを搭載。低回転域と高回転域でトルクの2段階切り替えができるV-TACS(可変トルク増幅排気システム)を採用したのも話題となった。
本格的なエキスパンジョンチャンバーの装着も、ライダーの心を熱くした。
エンジンだけではない。サスペンションは前輪にスタビライザーを装着する本格仕様のテレスコピック式、後輪にはユニットスイング式を採用と足周りも充実。
また、斬新なデザインも注目を集めた。
防風効果に優れた半透明のカウリングを装着し、50ccクラスのスクーターで世界初のデュアルハロゲンヘッドライト(18W×2)も装備する。価格は15万9000円。
50ccバイクの馬力自主規制上限の7.2psを発揮する2ストロークエンジンを搭載する、現代ではおそらく二度と生まれることのないスクーターが、かつてはこの日本に存在したのだ。
文/中馬幹弘