2020年は新型コロナウィルス感染症の影響で3月~4月の株式市場一時的に悪かったものの、急回復し未上場株が上場するIPOは活況で、大きなプラスとなる銘柄が続出しました。
IPOは人気な投資方法で、抽選となるため当選するのは難しくなっています。そこで、IPOより前の有望な未上場株に投資する方法はないのでしょうか?
未上場株への投資方法
証券取引所に上場している会社は、四半期毎に決算報告、開示が必要であるなど厳しい条件のもと上場しています。それにより、投資家は透明性のある投資情報、平等な取引環境で安心して売買できるのです。
一方、未上場の会社は大会社を除き、決算報告書の開示義務はなく、債権者や議決権比率3%以上株主でなければ開示請求もできません。また、たまたま親族が法人を経営しているなど身近な人が経営していて未上場株を取得することはありませんが、個人が未上場の会社の情報を手に入れることは難しく、それゆえ投資するのも難しくなっています。
そのため、未上場株に投資できるのはエンジェル投資家と呼ばれる社長などの富裕層、プロの投資家であるベンチャーキャピタル等に限られていました。個人の場合はプロ投資家と呼ばれ、純資産・投資性金融資産が3億円以上等の条件があり、一般個人は未上場株に実質投資できませんでした。
そこで、以下のような方法で個人でも未上場株に投資できる制度ができました。
①株式投資型クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、創業間もない企業などがプロジェクトに必要な資金をインターネットを通じて少額で集め(1人あたり1社年間投資額50万円以下)、代わりに株式を発行する仕組みです。
株式投資型クラウドファンディングサービスを行う金融商品取引業者は、イークラウド、SBIエクイティクラウド、Angel Funding、DANベンチャーキャピタル、日本クラウドキャピタル、ユニコーンです。
株式投資型クラウドファンディング業務を行う金融商品取引業者 | 日本証券業協会 (jsda.or.jp)
②株主コミュニティ制度
証券会社が非上場株式の銘柄ごとに株主コミュニティを組成し、これに参加することで未上場株を購入することができます。未上場株は原則発行体に買い取ってもらうか、買ってくれる人を自分で探さなければなりませんが、このコミュニティ間でなら売買が可能となっています。
株主コミュニティは2020年9月までで21銘柄に達し、3,486人の人が参加しています。
運営証券会社は、今村証券、島大証券、大山日の丸証券、野村證券、みずほ証券、みらい證券です。
高リスクの未上場株式に個人が投資する価値とは?
上場前の有望な未上場株を保有でき、新規事業がうまくいき、その結果上場することができれば莫大な利益が得られます。
創業間もない企業などの株式の価値は非常に低く安く買うことができ、極めてまれではありますが上場するまでになるとさらに大きな利益を手に入れることができます。
しかし、上場できるのはほんの一部の企業に過ぎず、未上場のままとなります。
未上場の株式は、創業間もない、規模が小さい会社が多く財務基盤も危うく、最悪破産になる可能性が上場株式よりも非常に高いです。株式は倒産してしまうと価値はゼロになります。
また、未上場株は上場株式のように取引所が確立されているわけではないため、相場がなく、
換金するには原則発行会社に買い取ってもらうしかありません。
それでも未上場会社へ投資する価値は、資金を集めている企業の理念や事業の内容に賛同して、投資資金を通じて応援することにあります。株主になっているので、その企業の成長を子どものように、あるいは自分のチームのように応援することができます。
確かにIPOで大きな利益を得られる可能性はあるものの、その確率は非常に低いため、社会貢献や未来を担う企業への投資ということを第一目的として投資すると考えた方が良いでしょう。
未上場株投資での税制優遇「エンジェル税制」
リスクの高い未上場株への投資ですが、未上場の株が新たなサービス、商品を生み出すことは日本の成長につながります。米国は未上場株の市場が発達しているのに較べて日本は投資が上場株に偏っており、国は未上場株市場の発達を促していく政策を次々と打っています。
その中で、未上場株式への投資で個人投資家は税制優遇を受けることができます。
以下2つのうちいずれか有利な方を選ぶことができます。
①未上場会社が設立5年未満
投資額-2,000円を総所得金額から控除(上限:総所得金額40%、1,000万円の低い方)
②未上場会社が設立10年未満
投資金額全額を他の株式売却益(未上場、上場株含む)から控除(上限なし)
損失が出た場合には、他の株式売却益(未上場、上場株含む)を相殺でき、相殺しきれないときは3年間繰越控除することができます。
エンジェル税制の適用を受けるには、企業側(中小企業であること、風俗営業等でないなど)、個人投資家側(未上場の株式を取得など)の要件を満たす必要があります。
例えば、設立5年未満の未上場株式を10万円分取得した場合、①を選択すれば10万円-2,000円=9万8,000円を総所得金額から控除することができ、所得税の税率が33%なら約4万円(所得税+住民税)節税できます。
一方、①を選択すれば、株式の売却益が10万円あったとすると、その年の利益はゼロとなり、売却益にかかる20.315%(所得税、住民税、特別復興所得税)の約2万円が節税できます。
この例でいうと①を選択した方が節税になります。
未上場株の売却益は税率20.315%となり、配当金は税率20.42%(源泉徴収で差し引かれている)となり確定申告が必要です。上場会社のように特定口座源泉徴収あり口座を選んで、税金を自動徴収、確定申告なしにすることはできません。
配当金は1回に受ける金額が10万円以下だと確定申告不要を選べます(10万円×配当計算期間の月数÷12)が、確定申告して総合課税により申告することで配当控除を受けられることがあります。
注意!
本来、未上場株式の投資勧誘は禁止されています。未上場株の販売ができるのはその発行会社、登録を受けた証券会社のみとなっているため、「この未上場株は、上場して上がる可能性が高い!」などの勧誘は投資詐欺である可能性があるため知らない業者による勧誘は原則ことわりましょう。
また、未上場株は上場株と異なり元本欠損リスクが非常に高いです。
これは、上場株式のように自由に売買できず、売却するには原則発行会社に買い取ってもらうしかないため、正規の価格が付けられないからです。
リスクが非常に大きいことを承知の上、余裕資金での投資を考えましょう。
(参考)
金融庁 令和2年11月13日 「成長資金の供給のあり方に関する検討」
01.pdf (fsa.go.jp)
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フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。