パソコンやスマホでインターネットを閲覧したり、メールを送信する際などに目にする「プロトコル」という言葉。これらの場合は「通信をする際の手順、規格」という意味で使われているが、実はその他にもさまざまな分野や業界で用いられている言葉なのをご存知だろうか。
本記事では、知っているようで知らないプロトコルの起源や意味、使い方を解説する。
プロトコルとは何を表す?その由来と主な意味
最初に、プロトコルという言葉の起源について紹介したい。その成り立ちを追っていくと、使い方が少しずつ変化してきたことがわかる。
プロトコルの語源は英語の「protokollon」
日本で使われているプロトコルは、英語の「protokollon(プロトコル)」から来ている。この単語の語源は古く、古代ギリシア時代、パピルスで作られた巻物の最初の一枚目を「protokollon」と呼んでいたことに由来するそうだ。
ちなみに、protoは「最初の」、kollonは「糊」という意味で“表紙に糊付けされた紙”を表している。ここから、「議事録」という意味に発展し、その後「議定書」、後述の「外交儀礼」へと意味が変化していった。
政治用語として使われるプロトコルは「外交儀礼」を指す
プロトコル(プロトコール)は現在、「外交儀礼」の意味合いで使われる。国家間の儀礼上のルールや国際的な場で主催者側が提示するルールのことを指し、「国旗の取り扱い方法」や「服装の規定」「席の配置方法」などが示されている。
法的な拘束力はなく、運用国の慣習や状況に応じてその内容は柔軟に変化する。プロトコルは本来このように「人間同士のやり取りのみに使われる言葉」だったが、時代の変遷に伴い、少しずつその他のシーンでも使用されるようになってきた。
医療業界で使われるプロトコルとは
外交以外には、医療業界や心理学の分野でも「プロトコル 」という言葉が使われている。それぞれどういった意味になるのか見てみよう。
医療業界で使われるプロトコルは「治験実施計画書」の意味
医療業界では、プロトコルは目的や根拠、方法などが仔細に記された「治験実施計画書」や「治療計画書」のことを指す。特に治験の場合、実施者である医療機関や依頼者であるメーカーは、治験を行う際に遵守しなければならない要件をプロトコルに記載することが求められており、それらをきちんと守って治験を行わなくてはならない。
プロトコルに違反したことが認められた場合、治験そのものの停止に加えて、治験を実施した機関、企業は薬事法により営業停止などの厳しい処罰を受けることになる。
心理学で使われるプロトコル分析は人間の思考の流れを知るための手法
認知心理学の分野では、「プロトコル分析」という方法がよく用いられている。これは、「被験者が何かをする際に頭に浮かんだことをすべて口に出していき、それを記録してデータとして解析をする方法」のことで、普段は見ることのできない”思考の過程”を明らかにしようとするものだ。
被験者が口に出した思考の記録(沈黙や言いよどみなどの行動記録も含む)をプロトコルと呼び、心理学実験の方法としてだけではなく、企業の商品開発などでもこの方法が使われることがある。
IT用語のプロトコルは「両者間の取り決め」を指す
1968年に開発されたARPANET(アーパネット)は、インターネットの起源としても知られているが、このARPANETのエンジニアがコンピューター間での取り決めを「プロトコル」と呼んだことから、通信の世界でもプロトコルという言葉が使われるようになった。
現在でも、プロトコルはコンピューター同士でやり取りをする際のデータ形式やパケットの構成、エラーの対処などを定めた両者間の取り決めという意味で使われている。もう少し噛み砕いて言うと、コンピューター同士の「言語」のようなもの。これを定めることで、違う機種やメーカーのコンピューターともやり取りができるようになった。
主なプロトコルの種類
プロトコルにはさまざまな種類が存在する。例えば、「IPアドレス」の「IP」はインターネットプロトコルのことを指す。このインターネットプロトコルとは「通信プロトコル」の一つで、ネットワーク上の各機器にアドレスという住所を割り当て、そこにデータを送る役割をしている。
なお、インターネット接続の際、IPのみでは不十分なデータ通信を、より信頼性の高いものにするために「トランスミッションコントロールプロトコル(TCP)」と併せて使われることがほとんどで、「TCP/IP」のような表記で表されるのが一般的だ。
他にも、Webサーバー同士のやり取りに使われる「ハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP)」や、インターネットを介したメールで使用される「シンプルメールトランスファープロトコル(SMTP)」「ポストオフィスプロトコルバージョン3(POP3)」などもある。
プロトコルは階層により分けられている
少しマニアックな話になるが、インターネット接続の際に使用するTCP/IPの通信は、全部で4つの階層に分かれている。
1.アプリケーション層
Webにアクセスする際に使うHTTP、メール通信の際に使うSMTP、POP3
2.トランスポート層
他のコンピューターにデータを送る際に使われるTCP、他のホストにデータグラムを送るUDP(ユーザーデータグラムプロトコル)
3.インターネット層
他のコンピューターにデータを送るIP
4.ネットワークインターフェース層
ネットワークの規格であるEthernet(イーサネット)など
これらの階層のプロトコルがそれぞれ機能し、連携することで快適なインターネットの通信が保たれる。
文/oki