ダイエットブームの1つのトレンドとして今注目の「大豆ミート」。肉の代替食品を意味する「フェイクミート」の一種だが、世界市場が約2500憶円規模と、このジャンルの主流となっている。
もともと、欧米の「肥満大国」といわれる国々で大豆ミートは普及したが、意外にもコロナ禍が需要を加速。「基礎疾患が重症化リスクを高める」とわかり、ヘルシーな大豆ミートがもてはやされるようになったという。
日本でも数年前に大豆ミートが発売されたが、味の面ではいまひとつだったため、ニーズはごく一部の健康意識の高い人にとどまった。
それが風味の改良と、コロナ禍による意識の変化により、じわじわと人気の食材に。飲食店のメニューやレトルト食品だけでなく、家庭料理に使える未加工の商品も発売されている。
ダイエットの名医がすすめる最強食材
そして、医師の観点から「大豆ミートは最強のダイエット食材です!」と太鼓判を押すのが、池谷医院の池谷敏郎院長だ。池谷院長は、著書『お腹いっぱい食べて内臓脂肪を落とす 大豆ミートダイエット』(アスコム)の中で、タンパク質は確保しつつ(肉に比べ)摂取カロリーの大幅な減少がはかられ、食物繊維やビタミン群など、必要な栄養素も摂れて、若返りもはかられるなどと絶賛する。
50代ながら体脂肪率は約10%という「ダイエットの名医」だけあって、こうした言葉には説得力がある。また、本書のモニターさんらの体験談では18日間で体重は2.9kg減など、短期間で無理なく痩せられることがわかる。
大豆ミートのダイエット効果をさらに強化
池谷院長は、自ら大豆ミートを食生活に取り入れているが、単に大豆ミートをほめて終わりではない。本書では、「大豆ミートの戻し方をひと工夫して、さらにダイエット効果の高い“やせる大豆ミート”」を紹介している。これは市販の大豆ミートに、かつお粉としょうがを加えたもので、脂肪燃焼や血行を促進するなどの健康効果があり、食味もアップするという。作り方は以下のとおりだ。
【材料】
・大豆ミート(乾燥):15g
・かつお粉:小さじ1(大さじ1の1/3)
・しょうが(すりおろし):小さじ1
・水:300ml(ミンチタイプの場合は200ml)
※大豆ミートを倍量の30gで作る場合、水は同量で、かつお粉としょうがを倍の小さじ2にする。
【作り方】
1 少し大きめの耐熱容器に大豆ミートと水を入れる。
2 電子レンジに入れ600wで加熱。加熱時間の目安は、ブロックタイプで8分、フィレタイプで5分、ミンチタイプで3分。
3 時間が経ったら電子レンジから取り出し、湯切りする。流水でやさしく洗い、ザルをふって軽く水気を切る。
4 かつお粉としょうがを加え、手でなじませる。およそ4倍にふくらんで完成。
大豆ミートで実際に料理を作る
本書には、やせる大豆ミートを基本の下ごしらえにした料理のレシピ集も載っている(冒頭の写真はその1つ「ブロッコリーそぼろ」)。
筆者は、その中の1品「チンジャオロース風炒め」を実際に作り、味も確認してみた。
【チンジャオロース風炒めの材料(1人分)】
・ピーマン:2個
・やせる大豆ミート:フィレタイプ15g分
・A-酒、しょうゆ:各小さじ1
・片栗粉:小さじ1/2
・ごま油:小さじ1
・B-オイスターソース、しょうゆ、砂糖、酒:各小さじ1
【作り方】
1 ピーマンは種とワタを取り、千切りにする。
2 大豆ミートにAで下味をつけ、片栗粉をまぶしておく。
3 フライパンにごま油を入れて1を炒め、2を加えてさらに炒め、よく混ぜ合わせたBで味付けする。
大豆ミートは、何社かの食品メーカーから発売されている。一番メジャーなのは、マルコメの「大豆のお肉」だろう。この商品は、加工された大豆の形状から「ブロックタイプ」、「フィレタイプ」、「ミンチタイプ」の3種類あり、本書の各レシピも、いずれかのタイプを使用する。
あいにく筆者宅の近所には「大豆のお肉」を販売している店が見つからず、オーガニックショップにあった、かるなぁというメーカーの「大豆まるごとミート」を用いることにした。
「大豆まるごとミート」も、形状によって何種類かのタイプがあるが、「フィレタイプ」にぴったり相当するものがなかったため、やせる大豆ミートを作った段階で、縦に切り刻んだ。地域によっては、望むタイプの大豆ミートが入手できるとは限らず、こうした臨機応変さが必要となるかもしれない(もっとも手間はほとんどかからない)。
本書のレシピはどれも、ほぼ3ステップで調理できるシンプルさ。チンジャオロース風炒めも、料理が苦手な筆者でもラクに作れるものであった。下が出来上がりの写真。
これを、カフェを営む知人が、ベジランチセットとしてアレンジして、以下のように変身した(右上にあるのが取り分けたチンジャオロース風炒め)。
肉と遜色ないおいしさ
このベジランチセットを何皿か作り、カフェの常連でもある友人たちに食べていただき、率直な感想をもらったが、異口同音に「とてもおいしい」の声が飛んだ。最初は、大豆ミートが素材であることを伏せていたが、「肉だと思って食べていた」と言われるほど、自然な味わいであったようだ。池谷院長も「肉のような満足感があるから続けられる」と述べているように、ここは重要なポイント。特に肉好きにとっては、同じ大豆食品でも納豆や豆腐ばかりでは継続が難しいと感じる人が大半だろうから。
なお、大豆ミートでダイエットに成功するコツとして池谷院長が唱えるのが「大豆ミートファースト」。食事の際に大豆ミートの料理を最初に食べることで、血糖値の急激な上昇を抑え、かつ食後の満腹感も得られるという。これに、主食(米やパン)を半分程度に減らした「ゆる糖質制限」を組み合わせれば、ダイエット効果はさらに増す。我慢の多いダイエットで挫折してきた人は、今日から大豆ミートダイエットを始めてみては?
池谷敏郎院長 プロフィール
池谷医院院長、医学博士。1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。専門は内科、循環器科。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。血管、心臓などの循環器系のエキスパートとして、現在も臨床現場に立つ。30代のころ15kgの減量に成功した経験を基に、健康的に無理なくやせる独自のダイエット理論を確立。50歳を超えてからも体脂肪率10.6%をキープする「ダイエットの名医」として数多くのテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演会などでのわかりやすい医学解説が好評を博している。
調理協力/SAKURA CAFE
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)