Kembo、SAIC、FAW
これらの名前を聞いてすぐ何の商品のことか分かるあなた、相当の中国通です。(笑)
実はこれ、全て中国の自動車のブランド。
そして、いま、これらのチャイナブランドが地球の裏側・南米チリの自動車業界を席巻しているという事実をご存知だろうか。
チリの輸出全体の33%が中国向け
チリに進出している中国の自動車メーカー、なんと23社!(autofact.cl調べ)
そして市場シェア23%!! チリで走っている車のおよそ4台に1台がなんと中国ブランドの車なのである。
首都サンティアゴあたりを走っていると、どおりで中国ブランドの車をたくさん見かけるはずである。
筆者も実際に現地で乗ったことがある。
感想は後ほど・・・
ところで、これは偶然ではなく、背後にはかなり戦略的な動きがある。
中国とチリの経済協定の歴史は深く、いまから15年前、2006年には自由貿易協定(FTA)を発効。
そのせいか、JETROのデータによれば、
チリから中国への年間輸出額は約252億ドル、なんと、チリの輸出全体の33%が中国向け。
逆もしかり。
チリの中国からの年間輸入額は約175億ドル、なんと、チリの輸入全体の24%が中国。
更に、2019年、チリと中国はかねてより結んでいたFTAを更に深化させるという協定を発効。この蜜月関係は更に拡大すると思われる。
なぜ中国はチリに着目するのか?
南米の大国というとブラジルやアルゼンチンのイメージがあるが、1人あたりの名目GDPという観点での2トップはウルグアイとチリ。そう、この2か国が相対的に裕福な国と言える。
特にチリは、太平洋側に面しており、かつ人口もウルグアイの約6倍(チリ:約1,870万人、ウルグアイ:約330万人)ということもあり、中国からすればチリに着目するのは極めて理に適った動きなのである。
まずは南米で経済レベルの高いチリで基盤を築き、ここから南米大陸へ浸透させていく。
これが上記FTA深化協定を踏まえた中国の戦略である。
実際、FTAもあり、チャイナブランドの自動車値段は同じ形式の欧州車の約半額。
チリ人にしてみれば、ある程度の距離を走れば充分に元を取ることができるわけである。
そして、この戦略はラテンのメンタリティ的にもなかなか良いところ突いていると思わせる出来事があった。
それが、冒頭に少し触れた、筆者が乗ったときのエピソードである。
筆者が乗ったのは、チリの知人の運転するFAW。
乗った瞬間からギーギーと異音がする・・・
(ブレーキかな? エンジンかな?)
”あのー、異音が・・・”
”いやー、やっぱりMade in Chinaだな、まあ、安いから仕方ないな、アハハ”
さすが、大らかなラテンの国である。
安い中国車は、ラテンのメンタリティにも合う。
そんなわけで、筆者はこの中国の南米進出戦略の正しさに脅威を覚えるのである。
このあたりの話は、筆者のYoutubeチャンネルでも触れています。
宜しければご覧ください。
文/小林邦宏
旅するビジネスマン。これまで行った国は100ヶ国以上。色んな国で新しいビジネスをつくるおじさん。
現在は新型コロナウィルスの影響で海外渡航制限中により国内で活動中。
オフィシャルサイト:https://kunihiro-kobayashi.com/
Youtubeチャンネル:「旅するビジネスマン 小林邦宏チャンネル」
Twitter: @kunikobagp
著書:『なぜ僕は「ケニアのバラ」を輸入したのか?』(幻冬舎)