
最近、特に新型コロナウイルスの報道で頻繁に耳にする「エビデンス」という言葉。一言で言えば「証拠」の意味だが、実はこの言葉、使用する場面によって意味が少しずつ異なる。
そこで本記事では、さまざまな使い方がされるエビデンスという言葉について、由来や使い方を解説する。
エビデンスとはどういう意味?ファクト、ソース、プルーフとはどう違う?
まずは、エビデンスという言葉がそもそもどういう意味なのか理解しておこう。元々は学術用語、業界用語として広く使用されていたものだが、近年では一般用語としても普及しつつある
日本で使われるエビデンスの由来は英語の「evidence」
エビデンスは、「証拠」「物証」「形跡」「(~の)跡」を意味する英語「evidence」が元になった言葉。基本的には日本語でもこれらの意味で用いられることも多いが、場面によっては英語と少し異なったニュアンスになることがある。
似ている言葉、ファクト、ソース、プルーフとの違いは?
エビデンスとよく混同される言葉に「ファクト」がある。ファクトは英語で「事実」を表す「fact」から来ており、日本語でもそのままの意味で用いられる。ファクトが単純に「事実のみ」を指す言葉であるのに対して、エビデンスはその事実を元に、さまざまな状況や事象が重なることで得られる「証拠」や「根拠」を表している。
「出典」「起源」という意味の「Source(ソース)」とも混同しやすい。これは日本語では主に「情報源」という意味で使われることが多く、エビデンスとは少しニュアンスが異なる。しかし、ソースがそのままエビデンスとして利用されるケースもあり、そこがややこしさの原因になっている。
エビデンスと最も意味が近いのが「proof(プルーフ)」。これも英語では「証拠」「証明」という意味を持つため、明確な区別がしづらい。しかし、エビデンスには「形跡」という意味もあり、プルーフはその意味を持たない。ビジネスにおいてはプルーフよりもエビデンスの方が使われやすい傾向にあるようだ。微妙な違いだが、どれもビジネス用語として使われるものなので、しっかりその違いを把握しておこう。
エビデンスの意味、使い方は使用されるシーンや業界によって異なる
エビデンスは、基本的に「証拠」などの意味で使われるというのは先述の通りだが、使用される場面や業界によってそれぞれ少しずつ違う意味合いになる。ここからは、その違いを詳しく解説していこう。
医療、看護の現場におけるエビデンスとは
医療や看護、心理学などの分野においては、エビデンスは「ある症例に対して、効果があることを示す根拠」を表している。つまり、実際にその薬や治療法を使った場合の臨床結果や検証結果のことを指す。
以前は、ある症例に対しての治療法を選択する際、生理学的な知識や原則が重要視される傾向にあったが、近年は臨床結果や過去の症例を参考にして選択する「エビデンスに基づいた医療」が広まりつつある。
今回の新型コロナウイルスのような未知の症例、それに対する新しい薬や治療方法など、日々変化していく医療現場では今後ますますエビデンスが重要視される可能性が高いだろう。
IT業界におけるエビデンスとは
IT業界でも、エビデンスは「証拠」という意味で用いられることが多い。具体的には、システム開発の過程などでシステムが正しく動作している、あるいはトラブルが生じたことを示すログデータや画面キャプチャなどの証拠資料をエビデンスと呼ぶ。
ただしこれ以外にも、日常的なやり取りにおいて相手から求められたことの証明や根拠となるメール、指示書などのこともエビデンスと呼ぶことがあり、日常的に使用するビジネス用語として定着している。
ビジネスシーンにおけるエビデンスとは
一般的なビジネスの場面で使われるエビデンスは主に「証拠資料」といった意味を持つが、それが指すものは状況や業種によって少しずつ異なっている。
営業の場面で使われるエビデンス
顧客訪問の際、「エビデンスを取る」という使い方をするが、この場合は「契約書類」を指す。また、「訪問先にエビデンスを残す」などといった場合は、名刺やダイレクトメールなどの「訪問した形跡」を表している。
社内のミーティングや取引先との会議の際のエビデンス
会議やミーティングの後で、「今日のエビデンスが欲しい」と言われた場合は「議事録」を指す。
金融・不動産分野のエビデンス
融資を受ける時、不動産を契約する時などに「必要なエビデンスを準備してほしい」と言われることがある。これは本人確認書類や通帳、収入状況などを証明できる公的な書類を指している。また、海外への送金の際、「送金目的」や「送金額の根拠」を記した書類のことをエビデンスと呼ぶこともある。
文/oki