「オノマトペ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。耳慣れない単語と感じる人もいるかもしれないが、実はこれ「ニコニコ笑う」「雨がパラパラ降る」など、私たちが日頃から何気なく使っている擬音語や擬声語、擬態語を総称したものだ。
世界から見ても、特に日本語はオノマトペの数が多い言語と言われており、円滑なコミュニケーションを取る上で大きな助けとなっている。本記事では、そんなオノマトペの由来などの基礎知識とオノマトペがもたらす意外な効果について解説する。
オノマトペとは何?
オノマトペは、物事の状態を表す擬態語(ふっくら、すべすべなど)、音を言葉で表した擬音語(ガチャン、ドカンなど)、人や動物の発する声を表した擬声語(ワンワン、ブーブー)の3つの種類に分けられる。形容詞としてだけでなく、時には名詞や動詞としても使われることがある。
オノマトペの由来
元々の語源は、古代ギリシア語の「onoma(名前)」と「poiein(作る)」が融合してできた「onomatopoiia(オノマトポイーア)」に由来する。英語では「onomatopoeia(オノマトペア)」、フランス語では「onomatopēe(オノマトペ)」となり、日本では「オノマトペ」と言われることが多いが、「オノマトピア」「オノマトペア」を用いる場合もある。
オノマトペを使うとどんな効果がある?
普段、意識してオノマトペを使うという場面はあまりないかもしれない。しかし実は、オノマトペは上手に使うと、色々な効果が期待できる「魔法の言葉」でもあるのだ。
やる気アップ、表現力向上
オノマトペは子育ての場面で使われることが多いため幼児語と思われがちだが、オノマトペ研究が進んできた昨今では、子供だけでなく大人にもさまざまなプラスの作用をもたらすことが分かっている。
オノマトペは脳に直接働きかけ、イメージを喚起させやすいため、勉強や仕事の前にオノマトペを使って行動をイメージするとやる気が上がりやすいそうだ。例えば、「これからパッと机に向かって、テキパキ課題を終わらせてササッと帰ろう」といった具合。
また、大人数の前でプレゼンや発表を行う際も、オノマトペを適切に使うと見ている人の印象に残りやすい。Appleの創始者スティーブ・ジョブズは「オノマトペの魔術師」とも呼ばれ、特に注目してほしい時や素晴らしさを伝えたい時、「ブン」「ボン」というオノマトペを使い、観客を楽しませ、想像力を膨らませるプレゼンを行っていた。
訴求力が増す
上手にオノマトペを利用することで、広告やPOPなどの表現力が上がり、顧客の購買欲を高めることができる。例えば、食品であれば「もちもち」「サクサク」「とろとろ」のような“美味しそうに感じる”オノマトペを、掃除道具なら「ぴかぴか」「ツルツル」といった“清潔感を連想させる”オノマトペを使う、という具合だ。当然だが、品物に合ったオノマトペを使用しないと、逆効果になることもあるので注意。
オリジナリティを高める
創作の世界、特に小説や漫画では、その作品独自のオノマトペ(擬音)が読者により強い印象を与え、大きな魅力の一つとなることがある。
詩人、童話作家として知られる文豪、宮沢賢治。「どっどど どどうど どどうど どどう(風の又三郎)」や「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ(やまなし)」など、その独特なオノマトペの使い方がたびたび注目され、宮沢賢治のオノマトペだけを集めた本が出版されるほど。
また漫画においても、「ゴゴゴゴゴ」「ズキュゥゥゥン」が有名な『ジョジョの奇妙な冒険シリーズ』、「ざわ…」の福本信行作品といったように、聞いただけでどの作品か分かるほどイメージと結びついたオノマトペは多く、その作品の代名詞としての役割も果たしている。
日本語と英語のオノマトペの違い
日本語は他の言語と比べて圧倒的にオノマトペの種類が多く、日常会話でも頻繁に使われている。その理由として、日本語は動詞の種類が少ないことが挙げられる。
「私は○○を見る」という例文を元に考えてみると、英語なら「see」「look」「watch」のように状況によって動詞を使い分けるのに対して、日本語は「見る」という動詞しかない。そこで、「じろじろ見る」「ぼんやり見る」などのオノマトペを用いることで状況をより簡単に、分かりやすく表現していると考えられる。
また、日本語と英語のオノマトペの違いは、擬声語でより顕著に表れる。同じ生き物の鳴き声でも、言語が違うとまったく違うものになるのが面白い。
【一例】
・犬の鳴き声:ワンワン、キャンキャン/Bow wow(バウワウ)、Ruff Ruff(ルーフルーフ)
・小鳥の囀る声:ピィピィ、チチチ/Tweet Tweet(トゥイートトゥイート)
・馬のいななき:ヒヒーン/Neigh(ネーイ)
オノマトペを学ぶのにおすすめの方法
上手にオノマトペを使いこなすためには、意識的にさまざまなオノマトペの種類、使い方を学ぶのも良い。最後に、楽しみながらオノマトペの知識が身に付くおすすめの方法を紹介する。
オノマトペ絵本
・『日本語オノマトペのえほん』高野紀子
「ぷるぷる」と「ぷりぷり」、「ことこと」と「ぐつぐつ」など、日本語のオノマトペの違いが学べる絵本。子供だけでなく、家族みんなで楽しめる。
・『もじもじさんのことば劇場 オノマトペの巻』西村敏雄
「のこのこ」「ぱんぱん」など、耳慣れたオノマトペを絵と共に楽しい例文と解説で紹介。言葉遊びでオノマトペの面白さが味わえる。
オノマトペゲーム
・オノマトペサウンドカルタ
スピーカーが読み上げた効果音を聞き、オノマトペが書かれた札をカルタの要領で取っていくゲーム。その他に、「空想ストーリーリレー」「音ことばクイズ」という遊び方もあり、みんなでワイワイ盛り上がりながらオノマトペを学べる。小学生以上が対象。
文/oki