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鹿島ユースの指導スタッフとして活躍するサッカー元日本代表・柳沢敦、小笠原満男の今

2020.12.17

 新型コロナウイルスに翻弄された2020年も師走に突入。サッカー界もラストを迎えつつある。全国一斉休校と緊急事態宣言の影響で長期間の活動休止を強いられた育成年代の戦いも最終盤を迎えている。

 日本ユース年代の2部リーグに相当する「高円宮杯JFA・U-18サッカー・プリンスリーグ2020関東」も12月13日が最終節。鹿島アントラーズユースは三菱養和と戦っていた。前日には今年の全国高校サッカー選手権優勝候補にも挙げられる昌平高校(埼玉)を4-0で下し、勢いに乗っていたが、この日は主力数人が出ていなかったこともあって前半から3失点。このまま0-3で敗れ、最終順位は7位。2018年にはユース年代日本一に輝いた名門としては、不本意な結果を強いられたのだ。

偉大な先輩たちにタフなメンタリティを学んで欲しい

「コロナ禍で昇降格なしというイレギュラーなルールで今年のリーグ戦を戦いましたが、僕らとしてはプリンス優勝を目指してやってきました。結果的にそれは達成できなかったですけど、U-18日本代表候補に選出された船橋佑はトップに上がりますし、それ以外にもプロに行く選手が2人いる。1年生にもU-16日本代表候補にも1年生の溝口修平と下田栄祐が選ばれている。『将来的にプロを目指して這い上がるんだ』というタフなメンタリティでやってもらいたいと思って指導しています」と中村幸聖監督は前を向いた。

 そんな鹿島ユースだが、指導スタッフは非常に豪華だ。指揮官の隣には柳沢敦コーチ、小笠原満男アカデミーアドバイザーの両日本代表経験者が陣取っているのだ。

 77年生まれの柳沢コーチは43歳、79年生まれの小笠原アドバイザーは41歳。81年生まれの中村監督より先輩で、現役時代の実績も上回っているが、指揮官は偉大なキャリアをリスペクトし、選手たちにできる限り、還元したいと考えているという。

「ヤナギさんと満男さんが来てくれて、代表に入って世界に羽ばたくっていうモデルを身近な存在として感じられるようにアプローチしてくれていますので、選手にとってはホントに贅沢な環境だと思います。鹿島の選手である以上、タイトルを取ってトップチームで活躍していることが1つの成功基準。そういう話をしてくれるのは、僕としても本当に有難いです」と中村監督はしみじみ語る。

 その期待に応えようと、2人はそれぞれに奮闘している。

メンタルの浮き沈みが激しい高校生にどう火を付けるか

 まず柳沢コーチだが、2014年の現役引退後、2015~2018年途中まで鹿島トップチームの指導に携わり、2019年からユースコーチに就任。丸3年を迎えた。現役時代からJFA公認C級指導者ライセンスを取得していたが、着実に勉強を重ね、今年は最高峰のS級ライセンス講習にも参加している。

「8月末から始まって、約4カ月が経ちました、授業はオンラインですけど、プロの指導者を目指すうえで自分のサッカー観がすごく大事だなと痛感する日々です。そのうえで現場に立つんですが、個人を育てることとチームを勝たせることを両立する難しさをつねに感じます。特に高校生は気持ちの部分に波があるんで、それをどうコントロールしていくか。個人差がある中で、グループとしての力も引き上げないといけないんで、やはり簡単には行かないですね」

 こう語る柳沢コーチにとっての悩みは、メンタルの浮き沈みが激しい高校生の気持ちにどう火をつけるかだという。彼が98年1月に日本代表に初招集された時の岡田武史監督(FC今治代表)を例に取ると、フランスワールドカップ初戦・アルゼンチン戦に挑む選手たちに「人間万事塞翁が馬」の話を引用し、一喜一憂せずにベストを尽くすことの重要性を説いたことが知られている。このように「人の心を動かす術を身に着けること」が指導者としての成功の条件。それが分かっているからこそ、苦悩するのだ。

「『心に火をつける』と言っても、そう簡単なことじゃないですよね。今の子供たちは『指示待ち』の傾向も強いし、僕ら指導者からのアクションがより重要だと分かっています。自立している子はどんどん伸びていくけど、そうじゃない子もいるし、彼らをどう導いてあげるかが課題です。自分はプロで長くやってきたけど、ホントにいっぱい失敗してきた(苦笑)。それが選手にとってはいいヒントになるかもしれないですね」と、柳沢コーチは2002年日韓・2006年ドイツ両ワールドカップでの天国と地獄など、ここまでの人生経験を全て駆使して、優れた選手を育てていく構えだ。

世界を相手に勝負していた経験を還元

 一方、小笠原アドバイザーは、2018年の現役引退後、1年目はユース、ジュニアユース、ジュニアなど幅広い角度からアカデミーを見て学んでいた。が、2年目となる2020年は柳沢コーチのS級ライセンス講習受講が決まったこともあり、ほぼユース専属のような状況になっているという。

 中村監督が現状を説明する。

「満男さんは毎週のように守備練習を担当してくれていますし、全体練習後には選手と個別トレーニングをしてくれることもあります。今日(13日)の午前中も居残り組にクラブハウスでしっかり話をしてから、三菱養和まで来てくれました。『1人でも多くの選手にトップで活躍してほしい』という熱意を持ってやってくれているのがよく分かりますし、その向上心に選手たちは負けないでほしいですね」

 柳沢コーチも「満男は鹿島ユースのスタッフの中で最も指導者らしい立ち振る舞いをしている」と太鼓判を押す。

「まだライセンスは取っていませんけど、一番コーチらしいです。ポイントポイントでいい話をしますしね。2年前にACL(AFCチャンピオンズリーグ)で優勝した時の話を出したり、世界を見渡して同世代で活躍している選手がどのくらいいるのか具体例を出したりする。トップで長くキャプテンをしていた満男が発言すれば、選手たちの聞く耳も違う。そこは大きいですね」

 確かに三菱養和戦の時も、小笠原アドバイザーは試合前やハーフタイムなどに選手のところに歩み寄り、ちょっとしたアドバイスを送っていた。柳沢コーチが鹿島で活躍していた時代を知らない高校生も多いだろうが、小笠原アドバイザーの方はまだ引退からあまり年月が経過していないため、選手たちも「あの偉大な小笠原さんから直々に指導してもらった」という喜びがあるのだろう。

 それだけ大きな影響力を示せる人物だから、今年8月に引退した内田篤人JFAロールモデルコーチ同様、いずれは指導者ライセンスを取得して、表舞台で活躍してほしいところ。まだ講習参加の予定はないようだが、本人がその気になれば、すぐに環境は整うだろう。

 かつて世界を相手に真っ向勝負していた彼らがより本格的に指導者の道を歩んでくれれば、鹿島にとっては大きなプラスだ。古くは曽ヶ端準や野沢拓也(ティアーモ枚方)土居聖真、近年だと鈴木優磨(シントトロイデン)、町田浩樹、沖悠哉といったユース出身者を輩出してきたが、そのスピードを引き上げ、日本代表としてワールドカップを戦うような選手を次々と送り出すことが肝心だ。常勝軍団をさらに発展させ、日本サッカーのレベルを引き上げるためにも、40代になった元日本代表の2人には貪欲に前進を続けてほしいものである。

取材・文/元川悦子

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