日本三大都市の一つである大阪市に、千年の都・京都、おしゃれな港町・神戸など、関西には魅力あふれる街が多数ある。その中で、特に多くの住民から愛着を持たれている街はどこなのだろうか?
リクルート住まいカンパニーではこのほど、関西(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)に居住している人を対象に実施したWEBアンケート形式による「SUUMO住んでいる街 実感調査2020 関西版」を集計。その結果を以下にて紹介していく。
[関西]住民に愛されている街(駅)ランキング
・1位「苦楽園口」、3位「甲陽園」、6位「夙川」、8位「香櫨園」、9位「さくら夙川」とTOP10の中で西宮市の駅が5つランクイン。
・TOP20のうち、兵庫県の駅が12駅ランクインするという結果に。
・TOP20にランクインした大阪府の駅は、2位の「中之島」、7位の「四ツ橋」。2駅とも文化の拠点でありながら、オフィスやタワーマンションも立ち並ぶ川べりの街。
・TOP20にランクインした京都府の駅は、5位「神宮丸太町」と20位「烏丸御池」。2駅とも京都の文化や歴史を感じられる住宅街。
[関西]住民に愛されている街(駅)ランキング<府県別>
【大阪府】
・1位「中之島」、2位「四ツ橋」、4位「四天王寺前夕陽ヶ丘」、5位「中崎町」、10位「大阪天満宮」など、大阪市内の中心部の駅が多くランクイン。
・大阪都市圏へのアクセスが良いベッドタウンの「箕面」が3位、「南千里」が6位にランクイン。
【京都府】
・閑静な住宅地の中に京都の歴史やカルチャーが感じられる駅が多数ランクイン。
・京都地下鉄烏丸線がTOP10のうち5つランクイン。
【兵庫県】
・TOP10すべての駅が「地域の人がその街のことを好きそう」という魅力項目が高評価の街。
・「資産価値がありそう」という魅力項目が高評価の街が多数ランクイン。
【奈良県・和歌山県・滋賀県】
・奈良県1位の「学研奈良登美ヶ丘」は、駅前にショッピングセンターがあり、大阪にも1本で行くことができる利便性が高い街。
・和歌山県は「和歌山市」が1位、「和歌山」が3位と市内の中心に位置する駅が上位にランクイン。
・滋賀県は琵琶湖周辺の「膳所」、「京阪膳所」がTOP2、住みたい街ランキング滋賀県民で3年連続2位の「南草津」が3位にランクイン。
「住民に愛されている街(駅)」上位の注目の街をPick Up
■①六甲山系の豊かな自然が広がる、歴史のある住宅街「苦楽園口」(1位)「甲陽園」(3位)
苦楽園口・甲陽園の魅力項目TOP5
<苦楽園口>
①テニスコートや体育館などの運動施設が充実している➁人からうらやましがられそう
③魅力的な人たちと出会える
④地域の人がその街のことを好きそう
⑤多様な建物や景観がここちよい
<甲陽園>
①地域の見守りがしっかりしている
➁地域の人がその街のことを好きそう
③人からうらやましがられそう
④緑や海、川などの自然が豊富
⑤資産価値がありそう
桜の名所として知られる夙川に沿い、自然豊かな六甲山裾に住宅街が広がる苦楽園口・甲陽園。ゆるやかな曲線を描く坂の多い街並みが印象的で、「人からうらやましがられそう」という声の通り、個性的な邸宅や高台から望む眺望も魅力的。阪神間の住宅街としてのブランド力も高い。苦楽園口駅前の並木道も美しく、パン店やお洒落な雑貨店、洋菓子店など昔から地元民に愛される店も多い。
■②文化の拠点でありながら、オフィスやタワーマンションが立ち並ぶ、水の都「中之島」(2位)
中之島の魅力項目TOP5
①今後発展しそう
➁カルチャーを感じる店がある
③映画館や美術館、動物園などの施設が充実している
④テニスコートや体育館などの運動施設が充実している
⑤病院や診療所、介護施設が充実している
商都と水都の魅力が集まった中之島。大阪市中央公会堂(重要文化財)などの近代建築と企業の超高層ビル群で有名だ。
梅田に徒歩圏内というアクセスの良さから、タワーマンションも続々。「今後発展しそう」との期待も高い。2020年開業の「こども本の森中之島」や美術館など文化の情報発信地としても注目され、緑豊かな中之島公園など住環境もいい。川辺に軒を連ねる洗練されたカフェやレストランも愛される理由だ。
■③高層ビルなどの都市機能と豊かな自然が共存する人工島「アイランドセンター」(13位)
アイランドセンターの魅力項目TOP5
①魅力的な人たちと出会える
➁防災対策がしっかりしている
③テニスコートや体育館などの運動施設が充実している
④多様な建物や景観がここちよい
⑤地域の見守りがしっかりしている
インターナショナルスクールや外資系企業があることから、「魅力的な人たちと出会える」との声が挙がる、国際色豊かな人工島の街。「神戸ファッション美術館」などの文化施設や運動施設、商業施設がコンパクトに集約。「景観がここちよい」との評価通り、街区ごとに異なる、高層マンション群の個性的なファサードが街を彩る。海辺にはマリンパークが広がり、バードウォッチングが楽しめる「野鳥園」も魅力的だ。
今後発展しそうと感じる街(駅)ランキング
※複数路線が乗り入れている駅の代表的な沿線は、住民が最も多く選んだ路線を表示
※10位までの駅を掲載
■ランキングのポイント
北区再開発「うめきた」。グランフロント大阪など「うめきた1期」に続き、「うめきた2期」ではマンション群や都市公園などが建設予定で、今後発展しそうと感じる街に「梅田」はもちろん、近くの「福島」「中津」がランクイン。
高層ビルが並ぶ川辺の街「中之島」、お洒落な店が多い「四ツ橋」「肥後橋」は都心にいながら緑豊かで人気のエリアだが、新路線「なにわ筋線」計画が近くを通ることもあり、今後も進化が楽しみなエリアだ。
■注目の街をPick Up
<1位:新福島・2位福島・10位海老江>
下町と再開発が入り混じる街。昔ながらの安くて美味しい飲食店に加え、新進気鋭のお洒落なレストラン、ラーメン激戦区としても有名だ。
JR東西線新福島駅周辺は2008年に朝日放送が移転以来、「ほたるまち」の再開発で街が活性化。JR環状線福島駅の北側エリアは、北区再開発「うめきた」の近く。朝日放送跡地はタワーマンションを建設中。JR大阪駅の北側のエリアにできる北梅田駅は2023年開業を予定。「うめきた2期」の開発も続々進行中。
<5位:南草津>
新快速停車駅でもある南草津駅。駅前は再開発で誕生したマンション群が広がり、新規マンションも分譲中。大学や産業施設、公園、医療機関、ショッピングモールなどさまざまな施設が充実し、住宅街として利便性が高い。
さらに、湖岸沿いにはお洒落なカフェも増えていたり、矢橋帰帆島公園ではBBQや釣りなどのアクティビティが楽しめるとあって、今後も期待されるエリアだ。
教育環境が充実していると感じる街(駅)ランキング
■ランキングのポイント
学研奈良登美ヶ丘は「関西文化学術研究都市」、西神南は「神戸研究学園都市」が近いこともあり、上位に名を連ねた。明石は市の子育て支援制度が充実していることでも有名で、2020年から新制度スタート、保育料や医療費などの経済的軽減や子育て環境の整備や教育にも力を入れていることから、2位にランクイン。私立一貫校や有名校が近くにある文教エリアであることもランキング上位の特長だ。
■注目の街をPick Up
<1位:学研奈良登美ヶ丘>
近鉄けいはんな線学研奈良登美ヶ丘駅前に誕生した、比較的新しい大規模ニュータウン。自然豊かな「関西文化学術研究都市」につながる玄関口で、2013年に「近鉄学研奈良登美ヶ丘住宅地」を分譲開始し、子育て世帯が多く住まう。
独自の教育システムを構築する奈良学園登美ヶ丘(幼小中高一貫校)があり、文教エリアとしても知られ、塾などの教育環境も充実している。
<3位:西神南>
1993年に街開きした西神南ニュータウン(西神住宅第2団地)は、豊かな緑に包まれた住宅団地。ガラスの大屋根で覆われたクリスタルアリーナが印象的な駅前のビルには、便利な商業施設セリオや多数の塾や医療施設が入る西神南センタービルがある。
先端技術産業が集まる神戸サイエンスパークが隣接し、近くの「神戸研究学園都市」では、公立私立問わずさまざまな教育機関・学術機関が集まる。
物価が安いと感じる街(駅)ランキング
■ランキングのポイント
物価が安く、庶民的で美味しい店が見つかるといえば「尼崎」というイメージが強い。実際、ランキングの上位にランクインした出屋敷、杭瀬、大物も、すべて尼崎市だ。
また、大阪を代表するレトロな商店街で、大阪で1、2を争う活気で賑わう千林商店街、500の店舗がぎっしり立ち並ぶ湊川商店街、隠れた名店がいっぱいの杭瀬一番街商店街など、安く買い物を楽しめる大きな商店街があることがランキング上位の特徴のひとつだろう。
■ランキングのポイント
心斎橋(1位)やなんば(8位)は高級ブランドの路面店や百貨店、大型商業施設があり、老若男女問わない人気のショッピングエリア。そこから少し離れた2位の長堀橋や10位の四ツ橋(アメリカ村)は、お洒落な店が集まるエリアとして若い世代に人気だ。
6位の中崎町は、レトロな古い街並みとこじんまりとしたお洒落な店やこだわりの雑貨店、古着屋が融合し、散策にも楽しい外国人にも人気の街。 3位の京都の烏丸御池、5位の神戸の元町は、いずれも歴史ある、言わずと知れたお洒落スポットだ。
■ランキングのポイント
街区ごとに「個性」を演出したファサードが印象的な六甲アイランド(アイランドセンター・アイランド北口)。計画的に整備された、電柱のない美しい街並みが評価され、1位、2位にランクイン。
3位の学研奈良登美ヶ丘も同様だ。万博時代に開発された千里ニュータウン(4位北千里・7位南千里)は、街路樹の多い成熟した街並みが高評価。歴史のある住宅街として有名な9位の芦屋は、景観条例により美しい街並みが保たれている。
SUUMO副編集長コメント
■住民実感調査の総括
「愛されている街」で上位に挙がったのは「住みたい街」ランキング上位に登場した、全国的に知名度の高い大きな駅や再開発が進むエリアというよりは、比較的規模が小さいコンパクトな街でした。駅徒歩圏内に、印象的な風景や、人がちょっと立ち止まれるような場や店があり、古くから住んでいる人、新たに住み始めた人たちが程よく混じる、多世代型のコミュニティが形成されている街ともいえます。
また、それぞれの街の評価も、買い物の楽しさ、自然環境、教育環境など特化した異なる個性があげられています。あなたにとっての「愛したくなる街」を見つけるには、無難な特徴の街を選ぶよりも、特化した個性に着目すること。そして、その個性に共感し、どんな人たちが集まっているかが、あなたにとっての街の居心地の良さにつながるのかもしれません。
※参考:SUUMO住みたい街ランキング2020 関西版(2020/5/20発表)
http://www.recruit-sumai.co.jp/data/upload/bb4a3cfab1f2a59736cd3fe8fe8df88d_1.pdf
■コロナ禍で今後住民に愛される街の特徴
友人や職場の仲間と会ったり、遠出したりする機会が限られるなか住んでいる周辺で、いかに五感や精神的欲求が満たされるかが重要です。
それは単に、買い物に便利といった消費の利便性だけでなく、近所の人とあいさつを交わしたり、体を動かしたりといった健康的な生活、地域活動に参加したりといった当事者的活動、家事から解放されておいしいものが食べられるといった非日常感など、様々な感覚を満たせることが求められていくでしょう。消費欲を満たすだけでない、多様な側面を持つ街が、今後人気を集めていくと考えられます。
出典元:株式会社リクルート住まいカンパニー
構成/こじへい