正月にはさまざまな行事があり、『鏡開き』もその一つです。鏡開きを行う際、由来を知らずになんとなくやっている方もいるのではないでしょうか。鏡開きの意味やマナーについて解説するので、今後行う際には留意してみてください。
そもそも鏡開きとは?
『鏡開き』は新年の無病息災などを祈願するための行事の一つです。昔から続く行事には、意味や願いが込められています。
その意味を知らないまま、形式だけで鏡開きを行ってはいないでしょうか。鏡開きと向き合うためにも、鏡開きの意味や由来、きちんとしたやり方について知っておきましょう。
鏡開きの意味と由来
古くから、お餅は稲の神様が宿るものであり、神様に捧げる供物とも考えられていました。白は汚れを祓う神聖な色であると同時に、餅の丸さは円満の象徴でもあります。日本人の文化として古くから根付いていた鏡餅は、やがて縁起物として正月に飾られるようになったのです。
特に家に床の間が作られるようになった室町時代からは、装飾が豪華になっていきました。
鏡餅は、新年の神様である『年神様』が宿る御神体とされています。その鏡餅を、松の内が過ぎたら雑煮やお汁粉にして食べる行事が鏡開きです。
鏡開きのやり方
鏡開きは次の手順で行います。
まずは、鏡餅を神棚から下げます。神様に対する感謝の心を忘れないようにしましょう。続いて、埃をかぶってしまっているかもしれないので、乾燥したふきんなどで拭きます。
それから、金槌やすりこぎなどで鏡餅を割ります。しっかり乾燥していない場合はなかなか割れません。うまく割れない場合は、水を含ませて電子レンジで温め、柔らかくしてからちぎると良いでしょう。温める時間は数十秒程度で十分です。
小さくなったお餅をお汁粉や雑煮にして食べれば、鏡開きは完了です。
2023年の鏡開きはいつ?
鏡開きの日にちは、地方によっても異なることがあります。2023年の鏡開きはいつなのか、知っておきましょう。
関東では1月11日
関東では、鏡開きは1月11日に行います。それまでに鏡餅を下げてしまったり、逆に11日を過ぎてもいつまでも放っておくのは良くないこととされています。
元々は1月20日に行われていましたが、江戸時代の3代将軍である徳川家光の命日と重なってしまったため、変更されたといういきさつがあります。
関西では1月15日か20日が多い
一方、関西では、1月15日か20日に鏡開きを行うことが多いようです。
鏡開きは地方に関係なく、松の内が終わってから行います。関東では7日頃、関西では15日頃に松の内が終わるため、日にちにこのような違いが出るのです。
ではなぜ、松の内の終わる日付が、関東と関西で違うのでしょうか。これは先に解説した、徳川家光の命日と重なったことに理由があります。
関東で鏡開きを11日に行うようになったものの、それでは松の内が終わるよりも前に、鏡開きを迎えることになってしまいます。松の内には神様が宿っているので、「神様がいるにもかかわらず鏡開きを行うのは失礼ではないか」という意見が出たことから、幕府から松の内を1月7日に終了するよう通達されました。
情報が伝わらなかった関西では、例年通りに松の内を行っていました。こうしたいきさつにより、関東と関西では、松の内の期間が変わってしまったと言われています。
鏡開きを行う上での注意点
鏡開きを行う上で、いくつかの注意点があります。注意点に気を配りつつ、鏡開きを行うようにしましょう。
包丁など刃物で切らない
昔の武家では、鏡開きで正月を区切り、仕事始めをするという風習がありました。武家では正月に兜や鎧を飾り、その前に鏡餅を供えていたのです。鏡開きは、武家から始まった行事とも言えます。
包丁や刃物で鏡餅を切るのは、武家にとって切腹を連想させるものでした。そのため、刃物で切るのは禁止とされて、金槌などで割るという風習が生まれました。
この名残によって、現在も鏡開きでは刃物を使わないのが一般的です。
ちなみに『割る』という表現を用いることも、あまり好ましくはありません。鏡餅とは鏡の見立てなので、「割る」という言葉は縁起が悪いためです。代わりに、末広がりで縁起の良い『開く』という言葉が用いられるようになりました。
食べずに捨てるのはNG
鏡餅は単なるお供え物ではなく、新年の神様である年神様の御神体だと考えられていました。そのため、鏡餅にも年神様の力が宿るとされます。
年神様の力が宿った鏡餅を食べることで、無病息災・祈願成就などの御利益を授けてもらい、1年を幸せに過ごすことができると考えられています。つまり、食べずに捨てるのは、御利益を捨ててしまう行為なのです。
そのため、口をつけずに捨てるのはNGと考えましょう。
小さなかけらも残さず食べる
上記のような経緯から、残すこともNGとされています。鏡餅を使った料理は、食べきるのが神様に対してのマナーです。
鏡餅を開いたときに出る、小さなかけらも捨ててはいけません。これらは汁物に入れるなどして、食べやすくすると良いでしょう。
構成/編集部