現実では起こりえないような設定、世界観についつい引き込まれてしまうSF小説。宇宙人やロボット、タイムトラベルなど、お馴染みのテーマだけでワクワクさせられる人も多いのでは。最初にSF小説が登場したのは、なんと2世紀頃とされており、長い間愛され続けているジャンルと言えるだろう。
本記事では、そんなSF小説をこれから読む人に向けて、おすすめの選び方や日本・海外それぞれの名作を紹介する。
【目次】
・そもそもSFとは?初心者におすすめのお気に入り作品の選び方
そもそもSFとは?初心者におすすめのお気に入り作品の選び方
SFとはScience Fiction、つまり「空想科学小説」という意味。その名の通り、科学的な空想をテーマにした作品で、描かれた方もさまざま。一般的なのは、タイムマシンを使った時間移動を扱う「時間SF」や、超能力を持った人間を描いた「超能力SF」、未来世界を描く「未来SF」などがある。
ファンタジーとの違い
同じように、現実には起こらないような設定の小説のジャンルとしてファンタジーがあるが、この二つの違いは主に「作中の現象に作品内での科学的な根拠があるか」という点だ。呪文を唱えたり手をかざすだけで魔法が使えるのはファンタジー、その魔法の根拠が科学的に説明できるものならSF、といった具合だ。この場合、現実世界で通用する根拠かどうかは重要ではない。なお、現実世界でも理論上は起こりえるような、最新の科学技術や知識を用いてより綿密に作られた作品は「ハードSF」と呼ばれている。
短編、映像化されている作品から入るのもおすすめ
SF小説はその性質上、科学知識の解説や専門用語などが出てくることも多い。そのため、最初に読むならまず短編集などの短いものや、興味のあるテーマなど、読み切れそうなものを選ぶのがおすすめ。映像化されている作品も、世界観を理解しやすいはずだ。
SFの醍醐味を味わいたいなら所謂古典と呼ばれる作品を選ぶのも〇。ただし、ほとんどが海外で出版されているため文体が少し古くて読みにくい場合もある。少し慣れたらチャレンジしてみるのもいいだろう。
日本のSF小説
日本の場合、本格的にSF小説のジャンルが確立したのが比較的最近ということもあり、文章も読みやすくとっつきやすいものが多い。初心者でも戸惑うことなく読み進められるだろう。
know 野崎まど
野崎まど初の本格SFである『know』は、超情報化対策として人造の脳波「電子葉」の移植が義務化された2081年の京都が舞台。情報庁で働く主人公、御野・連レルは、行方不明の恩師、道終が遺した暗号を追っていくうちに一人の少女と出会う。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知るため」に彼女と行動をともにする。読みやすい文体としっかりした内容で、読者からの評価も高い作品だ。
出典 公式サイト|know 野崎まど
ボッコちゃん 星新一
「ボッコちゃん」は、”ショート・ショートの神様”と言われるSF作家、星新一の代表的短編集。筆者自らが選んだ50編により構成されている。なるべくバラエティを多くするよう心掛けた、と本人が語っている通りSFはもちろん、寓話的なものやミステリーがかった話もあり、多様な切り口から展開された世界観が楽しめる。表題作の「ボッコちゃん」は、ある秘密を隠してバーで働く美人店員の話。
出典 公式サイト|ボッコちゃん 星新一
星を動かす者達 流山晶
無料小説投稿サイト、「小説家になろう」で読むことができる本格ハードSF。22世紀後半、木星系に進出した人類は衛星イオを拠点にエウロパを開発しようとしていた。エウロパに蓄えられている水をイオに運搬するという巨大プロジェクトを担うのが、主人公リュウイチ・タニヤマをはじめとする作業船のクルー達。「星を動かす者達」に待ち受ける運命とは。SFの要素がふんだんに盛り込まれた宇宙規模のダイナミックな展開は、無料とは思えないクオリティだ。
出典 公式サイト|星を動かす者達 流山晶
新世界より 貴志祐介
貴志祐介の『新世界より』は、第29回日本SF大賞を受賞した作品。舞台は、人間すべてが「呪力」という超能力を操るようになった1,000年後の日本。争いのない理想郷のような世界で、主人公の少年少女たちは穏やかな生活を送っていた。仲間たちとの夏季キャンプの途中、偶然見つけた「ミノシロモドキ」から、この世界のおぞましい真実を聞くまでは……。物語は三部構成の長編作品だが、怒涛の展開に最後まで一気に読んでしまうという声が多い。
出典 公式サイト|新世界より 貴志祐介
海外のSF小説
1950年代には黄金世代を迎えていたと言われる海外SF小説には、長く読み継がれてきた名作が多数存在する。今読んでも色褪せないストーリーの数々を、ぜひ体験してみてほしい。
星を継ぐもの ジェームズ・P・ホーガン
2chやSNSのおすすめ作品や、読者ランキングにもたびたび上がる名作『星を継ぐもの』は、計5作品に渡る壮大なシリーズの第一作目。月面調査員が発見した、5万年も前に死んだ真紅の宇宙服の死体。そして、木星の衛星ガニメデで発見された地球のものではない宇宙船の残骸。これらと人類はいかなる関係があるのか?人類や太陽系の生い立ちの謎を巡る、筆者ジェームズ・P・ホーガンの出世作。
出典 公式サイト|星を継ぐもの ジェームズ・P・ホーガン
1984年 ジョージ・オーウェル
『1984年』は、ユートピア(理想郷)とは反対の社会を描くディストピア系SFの傑作。舞台は核戦争の後、<ビッグ・ブラザー>が率いる党に支配された近未来の世界。主人公ウィンストン・スミスは、以前から完璧な服従を強いる体制に不満を抱いていた。そんなある時、とある美女と知り合ったことをきっかけに、伝説的な裏切り者が組織したという反政府活動に惹かれていく。
出典 公式サイト|1984年 ジョージ・オーウェル
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック
名作映画『ブレードランナー』の原作としても有名な、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。第3次世界大戦後、放射能に汚染された地球では、生きた動物を持っているかが地位の象徴となっていた。人口の電気羊しか持っていない主人公・リックは、火星から逃亡したアンドロイドにかかった賞金を得るため狩りに参加する。人間とアンドロイドの違いを通じて、「人間とは何か?」を考えさせられる作品。
出典 公式サイト|アンドロイドは電気羊の夢を見るか? フィリップ・K・ディック
アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス
日本でも何度か映像化されている『アルジャーノンに花束を』は、1959年に発表されてから世代を超えて多くの人に読み継がれてきた名作。32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ。担任の大学教授に勧められ、ネズミのアルジャーノンとともに脳の手術を受ける。その結果、チャーリイのIQは飛躍的に向上するのだが……。愛や憎しみ、孤独を知った主人公の姿を通して、「幸せとは何か」を問いかける感動作。
出典 公式サイト|アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス
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文/oki