2015年に発表したデビュー作『君の膵臓をたべたい』が大ヒット、300万部のベストセラー作家となった小説家、住野よる。10代のみずみずしい感性を鮮やかに表現し、若い世代、特に中高生を中心に絶大な人気を集めている。
本記事では、2020年にデビュー5周年を迎えた住野よるのこれまでの経歴を振り返るとともに、現在までに発表した作品をジャンル別に紹介していく。
【目次】
住野よるとはどのような人物?
住野よるは、大阪在住の小説家。その名前から勘違いされがちだが、男性だ。「住野よる」というペンネームは、「教室のすみっこにいるような子の夜に創造性があるはず」という意味を後付けた、と本人が語っている。
高校時代から執筆活動を開始していたが、本格的にプロ作家を目指したのは大学の頃から。働きながら電撃小説大賞に複数回応募していたが、なかなか一次選考に通らず、作風を見直して書き上げた『君の膵臓をたべたい』はページ数が合わずに応募を断念。
だが、「この作品だけはどうしても誰かに読んで欲しい」という思いがあり、「小説家になろう」という作品投稿サイトに同作品を投稿する。すると次第に評判となり、とある作家の目に留まったことから編集者の耳に入り、デビューに至ったという。
彼の作品は、若い頃に誰もが経験するような、周りの人間と関わり合う中で感じる痛みや矛盾を描いたものが多い。有川浩の『海の底』、乙一の『失はれる物語』などが、自身の小説の書き方に影響を与えたと言及している。
映像化されたおすすめ小説
住野よるの作品は、書籍化されたものがまだ10作にも満たない中ですでに2本が映像化されている。原作を読んだ人も、また違った作品の一面を楽しむことができるだろう。まだ未読の人は、住野ワールドの導入としてもおすすめ。
君の膵臓をたべたい
住野よるの名を世間に知らしめたデビュー作、『君の膵臓をたべたい』。ある日、高校生の主人公は病院で一冊の文庫本を拾う。「共病文庫」と題されたその本は、クラスメイトの山内桜良が秘かに綴っていた日記帳だった。そこには、膵臓の病気により彼女の余命が残りいくばくもないということが記されていた。家族以外で唯一、彼女の秘密を共有した主人公と桜良は、さまざな交流を重ねていくが……。衝撃的なタイトルの意味を含め、随所に仕掛けが施された名作。
出典 公式サイト|君の膵臓をたべたい
青くて痛くて脆い
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた「僕」は、大学一年の春、秋好寿乃に出会う。周囲からは浮いているれど、誰よりも真っすぐだった寿乃の理想と情熱に触れ、「僕」と寿乃は二人で秘密結社「モアイ」をつくる。それから三年後、「僕」のそばから寿乃はいなくなり、彼女のついた嘘がトゲのように心に刺さっていた。傷つくことの痛みと青春の残酷さを描いた作品。2020年8月、杉咲花と吉沢亮主演で映画化された。
出典 公式サイト|青くて痛くて脆い
青春、恋愛小説
住野よるの真骨頂ともいえるのが青春小説。思春期ならではの葛藤や挫折、そこからの成長の過程を読みやすい筆致で綴り、彼ならではの遊び心ある仕掛けが随所にちりばめられている。
よるのばけもの
主人公の安達は、いつからか夜になるとばけものに変身してしまうようになった。ある夜、宿題を忘れたことに気づいた安達は、ばけものの姿のまま学校に向かう。誰もいないと思っていた教室には、クラスメイトからいじめを受けている矢野さつきの姿が。いじめられっ子とよるのばけもの、昼間は互いに関わらない二人だったが、共に「夜休み」の時間を過ごすようになる。
出典 公式サイト|よるのばけもの
か「」く「」し「」ご「」と「
みんなには隠している、少しだけ特別な力を持った5人の高校生。そんな5人の「かくしごと」が照らし出す、お互いへのもどかしい想いが詰まった短編集。物語は全5話から成り、主人公である5人の高校生、京、ミッキー、パラ、ヅカ、エルそれぞれの視点で、登校拒否や修学旅行などの日常をモチーフに、甘酸っぱくも爽やかな交流が描かれている。
出典 公式サイト|か「」く「」し「」ご「」と「
この気持ちもいつか忘れる
2020年9月に発売された新作で、初の恋愛長編作品となる。文庫本は未発売。住野よるが学生時代から敬愛するバンド、「THE BACK HORN」とのコラボ作品で、限定版にはCDが付属されている。まばゆい光の元で出会った、退屈な日常に絶望する高校生カヤと、爪と目しか見えない異世界の少女。真夜中の邂逅を重ねるうち、互いの世界に不思議なシンクロがあることに気づいた二人は、とある実験を始める。
出典 公式サイト|この気持ちもいつか忘れる
日常を描いた小説
住野よるの描く日常系の小説は、どちらも中高生以外が主人公。小学生と社会人、年齢は大きく異なるが、どちらもさまざまな人との出会いや交流を通して、「幸せ」とは何かを考えさせられる作品だ。
また、同じ夢を見ていた
「人生とは〇〇みたいなものよ」が口癖のちょっとおませな女の子、小柳奈ノ花。ある日、草むらで一匹の猫と出会ったことをきっかけに、さまざまな人との交流が始まっていく。とても格好いいアバズレさん、手首に傷がある南さん、そして一人静かに余生を過ごす老女。人生とは何かを探す奈ノ花に、3人は様々なかたちでヒントをくれる。「やり直したいこと」がある、”今”が上手くいかないすべての人に贈られた作品。
出典 公式サイト|また、同じ夢を見ていた
麦本三歩の好きなもの
住野よる初の社会人主人公、麦本三歩をめぐる短編小説集。こちらも文庫本は未発売だが、同名のコミックスが出版されている。図書館勤務の麦本三歩は、ぼうっとしていて少し天然。朝寝坊と本とブルボンのお菓子とチーズ蒸しパンが好きで、時には友人の不幸な話に触れ涙を流し、また時には一緒に旅行に行った友人の幸せを祈る。そんなありふれた、けれど愛おしい三歩の日常を描いた作品。
出典 公式サイト|麦本三歩の好きなもの
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文/oki