ニューノーマルな生活にあやかったニューノーマルな投資信託。下落相場でも資産を痛めにくいファンドはいかがだろう
ボラティリティ・インデックス(略称:VIX)を活用した投資信託なら相場の混乱期でも収益の期待度が高く、自分の投資ポートフォリオに含めておきたいものだ。ここではそんなVIXを活用した投資信託を2ファンド紹介しよう。
■VIXを活用した投資信託2ファンド
データは2020年11月27日時点のもの。楽天ボラティリティ・ファンドは、スルガ銀行だと毎月分配型のみの取扱。また申込手数料は、ネットからの申込だといずれも無料となっている。
米国株式ボラティリティ戦略ファンドは2020年の10月に登場した新しい投資信託で運用実績がまだ無いので投資は特に慎重にならざるを得ない。一方の楽天ボラティリティ・ファンドは運用開始から6年以上が経過。コロナ禍による相場の混乱が起こった2020年の4月頃には価格が上昇した実績がある。また毎月分配型と資産成長型の2種類がある。
相場の先行きが不安だと値が大きくなるのがVIXの特徴
コロナ禍によってダメージを受けた経済に対しての回復期待や金融緩和政策により、日経平均株価が11月24日には一時2万6200円台をつけ、1991年5月以来29年半ぶりの高値となった。12月3日現在では未だに高値を更新している。
相場の下落を逆手に取った「ベア型」の投資信託を購入しておくのもアリなのだが、今のような上昇局面では手が出しにくいのも正直なところ。
そんな状況での新規投資に活用できるのがボラティリティ・インデックス(略称:VIX)を活用した投資信託。VIXとは恐怖指数とも呼ばれ、株式市場が今後大きく下がるのかといった相場心裡を表すように計算されている。
VIXの計算のもとになるのは「S&P500種株価指数」(以下、S&P500)という米国市場での代表的な500銘柄の株式の平均株価。この平均株価が将来どのような価格になるのか予測する「オプション取引」の値動きを基にVIXを計算する。値動きが大きくなる相場の混乱時にはVIXの値は上昇し、平常時には値が下降する仕組みとなっている(下図)。
■S&P500とVIXの値動きイメージ
引用元:米国株式ボラティリティ戦略ファンド(為替ヘッジなし)の商品内容説明資料/アストマックス投信投資顧問(以下、アストマックス社資料)
米国株式ボラティリティ戦略ファンドでは高度な金融工学モデルで投資対象を調整
VIXを使ってどのように混乱時でも収益をあげるかを詳しく見てみよう。まずは「米国株式ボラティリティ戦略ファンド」から。このファンドは、VIX指数とS&P500指数の先物取引に対して投資するのだが、その投資割合を相場の状況に応じて機動的に変えている。 平常時にはS&P500を多め、混乱時にはVIXを多めにするのがポイント。
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引用元:アストマックス社資料
左:平常時 右:混乱時の投資割合イメージ
ところでS&P500やVIX指数にどうやって投資するのか?という疑問が湧くが、米国の証券取引所がこれらの指数を投資対象とできる金融商品を提供している。
投資割合の決定は収益率が最大化にできるような高度な金融工学モデルを使っていて合理的な算出根拠がある。このファンドではABRダイナミックブレンド・エクイティ&ボラティリティ指数(略称:ABR指数)をベースにしている。実際に過去15年間のリターンを比較してみると、S&P500だけに投資したときよりも高いパフォーマンスを発揮していることがわかる(下図)。
今後も同様なパフォーマンスを発揮できるかという保障はないが、利益が最大化するように工夫したモデルを使っていて、プロならではの技が込められているので、投資してみる価値はあるだろう。為替ヘッジを行っていないので、円高時にはABR指数の成績が良くても為替損が発生する点には留意しておきたい。
楽天ボラティリティ・ファンドはVIXの売り持ちと買い持ちを操作
次に楽天ボラティリティ・ファンド。VIX指数に注目し、市場が混乱しているときは値が上昇していくと利益が出る「買い持ち」平常時では値が下降していくと利益が出る「売り持ち」を切り替えることで収益が得られる機会を多くしている。
引用元:楽天ボラティリティ・ファンドのファンド説明資料/楽天投信投資顧問(以下、楽天ボルティ資料)
机上計算だけでなく実際にコロナ禍時でも収益が得られているので(下図)、有事に備えた投資ポートフォリオの一つとして期待できる。
楽天ボラティリティ・ファンドは想定外のリスクに備えたポートフォリオとしての活用例をあげているので、このファンド単体だけに投資するのは、よろしくないことがわかる。
引用元:楽天ボルティ交付運用報告書
同ファンドの運用報告書によればVIX指数への投資比率は約50%。残りは米国債券に投資しているため、ファンド中でも全てリスクを取っているわけではなさそう。また為替ヘッジを行っているので円高時でも為替損を小さく抑えられる。
相場の混乱発生時を意識した投資を心掛けたい
コロナ禍だけでなく2008年に起きたリーマン・ショックなど相場の混乱や大きな下落というのは数年単位で発生するもの。インデックスファンドを使ったほったらかし投資で利益を狙うのもよいが、今回紹介したようなファンドにも投資をしておくと、有事の時の資金を確保しやすいメリットがある。
自己責任が付きまとう投資だからこそ。混乱発生の備えは万全に行っておきたい。
文/久我吉史