何か事件や炎上騒動が起こると、必ず動き出すのが“特定班”だ。“特定班”は、ネット上で匿名の有志たちにより結成される。
怒りと正義感に燃え、執念深く、様々な分野の専門家・事情通である彼らは、密接に連携しながら犯人特定を行う。
しかしときには暴走に歯止めがかからなくなり、事件とまったく無関係の犠牲者が出ることも。
Netflixで2019年より独占配信中の『猫イジメに断固NO!: 虐待動画の犯人を追え』は、動物虐待犯・猟奇殺人鬼の犯人を特定するべく奮闘した特定班に焦点を当てる、ドキュメンタリーシリーズ。
特定班のメンバー、警察、弁護士、犯人の母親などへのインタビューを交互に挟みながら、異様な事件の謎を紐解いていく。
あらすじ
アメリカ・ラスベガスのカジノでデータ・アナリストとして働く女性ディアナは、仕事に誇りを持つ動物好きの女性。自称“パソコンオタク”だ。
仕事後に“ボーディ・ムーバン”のハンドルネームでネットサーフィンをするのが息抜きだった彼女は、ある日子猫が虐待される動画を観てしまう。
怒りに燃える彼女は、ネット仲間に呼びかけて犯人特定を始める。
特定班の執念深い捜査により浮かび上がったのは、美しいが不気味な雰囲気が漂う謎の青年だった。
動物虐待事件は、猟奇殺人事件の危険な兆候とも言われている。
そして特定班が恐れていたことは、現実となった。
見どころ
“事実は小説よりも奇なり”。
二転三転する予測不能なミステリーに、ドキュメンタリーであることを途中から忘れてしまうほどだ。
広大なネットの海に犯人が散りばめた小さな手がかりを一つひとつかき集め、犯人のお気に入りと思われる映画も隅々までチェックする特定班の執念には、圧倒させられる。
特定班のリーダーであるディアナは、人気海外ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』に登場するテクニカル分析官ペネロープ・ガルシアにどことなく雰囲気が似ている、聡明で心優しき女性。
彼女は決して特定班としての活動を手放しに誇っている訳ではなく、自省する冷静さも持ち合わせているようだ。
犯人のことがどうしても許せなかったと語る彼女は、同時に昨今目立つ“探偵気取りの特定班”にも警鐘を鳴らす。
無実の人を自殺に追い込むことも、特定班自身が危険に晒されることもゼロではない。
一時的な感情に突き動かされて取り返しのつかない行動を取る前に、一度深呼吸して画面の向こうにいる人の気持ちや人生に想像力を働かせることも大切だ。
Netflixオリジナルシリーズ『猫イジメに断固NO!: 虐待動画の犯人を追え』
独占配信中
文/吉野潤子