■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
キャンパーだったら、ロープワークを熟知しているはず。そう思われがちだが「もやい結びと引き解け結び、巻き結びくらいしかできない」「ロープワークを覚えたけれど、どんなときにどんな結びを使えばいいのかわからない」というベテランキャンパーは意外に多い。
テント設営、カヌーの係留などロープを使うシーンは多いけれど、テントやタープの張り綱には自在金具が付いているし、係留では巻き結びくらいしか使わない。使わないことは忘れてしまってもしょうがない。
さらに、ロープの通し方が少し違うだけで全く別の名前になるなど、どうにもロープワークにはわずらわしさがつきまとう。
「わかりづらく感じるロープワークですが、固結びを数回繰り返すだけで自在結び、トラッカーズヒッチができるんです。固結びだけって聞けば、やってみようという気分になるでしょう?」と言うのは、低山小道具研究家の森勝さん。http://www.morikatu.jp
【固結び】
だれもが知っているもっともシンプルな結び方。
【二重止め結び】
ロープをふたつに折って固結びをすると二重止め結びになる。輪っかの大きさが固定される結び方。
【引き解け結び】
固結びの途中で、ロープの端を輪から抜かないまま引き締める。これも名前を知らなくても大抵の人ができる結び方だ。二重止め結びとは異なり、力を加えると輪の大きさが変わる。
【ひと結び】
棒などに固結びをすれば、それだけでひと結びと言われる結び方になる。ツルンとしたタープポールなどには固定しづらいが、角張った木などには仮止めできる。
【ふた結び】
ひと結びの外側にもう一度固結びをする。これがふた結びで柱などに結びつけてもほどけにくい。
「よくテントに張り綱を結びつけるのはもやい結びでって言われますが、ふた結びでもいいんです。ちょっとほどくのが大変だけど、張り綱をつけっぱなしにするならこれで十分」(森さん)
【トラッカーズヒッチ】
柱にふた結びでロープを結びつけたら、もう片方の柱(下写真内右)の手前で引き解け結びか二重止め結びで輪を作る(写真内左)。柱(写真内右)にロープをかけたら先ほど作った輪に通し、ロープの端をギュッと柱方向に引っ張り、ふた結びで止める。
固結び3回で、トラックの荷台に荷物を固定する、タープを木にかけるなんてときに重宝する結び方になる。
「途中の輪が滑車の役割をして、軽く引っ張るだけで2本の柱の間を渡すロープをピンピンに張れます。この仕組みを知れば、段ボールや新聞紙をまとめる時にも応用できますよ」(森さん)
【自在結び】
ペグや柱にロープをひっかけたら、ペグに近いところでひと結び。その先でふた結びをする。3回の固結びで自在結びになる。
先にふた結び、最後にひと結びをする方法も教えてくれた。
「自在結びはどっちをスライドさせればいいのかわからない、こんがらがるという相談を受けることが多くて。
ボクは、ロープの調整をするためならふた結びだけでいいと思っています。これならふた結びの位置をスライドさせるだけで迷いません。ロープの端がほどけるのが心配なら、(上写真のように)ロープの端をひと結びでとめればいいんじゃないかな」(森さん)
【フィッシャーマンズノット】
2本のロープを結びあわせるのも固結び2回でOK。
片方のロープを芯にしてひと結び。結び目を裏返しにしてから、もうひとつのロープも同様にひと結び。結び目がふたつできたらロープを引っ張って密着させるだけ。ひと結びだけでは強く引っ張るとほどけてしまうが、ふたつにするとほどけにくくなる。
【本結び】
最後に、固結びではないけれど2本のロープをつなぐ基本の結び方も教えてくれた。
細くて滑りやすいロープなら固結び2回のフィッシャーマンズノットが有利だが、一般的な張り綱ならこれで十分。
ロープの端を半分に折って持ち、輪を作る。もう1本のロープの端を輪に通してから巻き付けるだけ。
テントやタープのループをロープの輪に見立ててロープを結ぶ。結ぶのもほどくのも簡単なので、補助ロープの取り付けに重宝する結び方だ。
「便利で使い勝手のいい結び方がいっぱいあって、ロープワークを活用している人たちが“こっちの結び方がいい”などと口を出しがち。親切ゆえのアドバイスなんだけど、モノにしていない人が応用を聞いてもこんがらがっちゃいます。これがロープワークは面倒、難しいと言われる理由では」と森さんは分析する。その点、固結びでできることなら覚えるのも簡単だ。
自在金具が壊れるといった小さなトラブル、クラフト遊び、引っ越し作業など、手持ちのロープを使ってサッと対応すれば、たとえ固結びしか知らなくても上級者っぽく見えるはず。
「固結びは簡単だけどほどきにくいのが残念。でも、自在結びやトラッカーズヒッチの最後は、引き解け結びのようにロープの端を通しきらないようにすることでほどきにくさを解消できます」(森さん)
そのうち覚えた結び方にも不満が出てくるだろうが、そうなってからほかの便利な結び方を覚えたり、結び方を組み合わせたりしても遅くはない。
救助など命に関わる作業ではないのであれば、型にはまらず自分が使いやすいようにアレンジしていいのがロープワークのおもしろさ。
ロープワークなんて! と毛嫌いせず、まずは固結びからはじめてみよう。
取材・文/大森弘恵