東野圭吾といえば、これまで多くのベストセラーを生み出してきた人気作家の一人。数々の作品が映像化され、普段本を読まない人でも「名前を知っている」ほど知名度の高い作家だ。 作家としてのキャリアは30年以上で、現在までに出版された本も数多い。興味あるものの「どれから読んでいいのか迷ってしまう」という人もいるだろう。
そこで本記事では、東野圭吾の経歴などを紹介した上で、初めて読む人でも入りやすいシリーズ作品から、新作までおすすめ作品を紹介する。東野ワールドを堪能してほしい。
【目次】
・新作紹介
東野圭吾とはどんな人物?
はじめに、ミステリー界の第一線で活躍する人気小説家、東野圭吾とはどんな人物なのかを紹介する。作品の特徴として、作者の経歴や経験が反映されているものが多い。そのため、背景を知ることでより一層楽しめるはずだ。
経歴
1958年、大阪市生野区に生まれその地で育つ。少年時代の体験などを綴ったエッセイ『あの頃僕らはアホでした』によると、成績は「オール3」で、読書少年でもなかったそう。当時過ごした街が、『白夜行』や『浪花少年探偵団』シリーズの舞台となっている。
大阪府立大学工学部電気工学科在学中は、アーチェリー部の主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、専業小説家としてのキャリアをスタートする。『放課後』は、大学時代のアーチェリー部主将の経験が反映された作品と言われている。
1998年に『秘密』を刊行すると一躍ブレイクし、以後人気作家の仲間入りを果たした。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。
主な作品一覧
作品数が多い東野圭吾だが、主な受賞作品についてはおさえておきたいところ。第134回直木賞受賞作『容疑者Xの献身』は彼の代表作といっていいだろう。第6回本格ミステリ大賞受賞、「本格ミステリ・ベスト10」1位、「このミステリーがすごい! 」1位、「週刊文春ミステリベスト10」1位、とあらゆる賞を総なめしたモンスター作品だ。
受賞こそ叶わなかったものの、候補作として挙げられたものもチェックしておきたいものとして、ブレイクするきっかけとなった『秘密』、ミステリー史に燦然と輝く傑作と評される『白夜行』、恋愛をテーマにした長篇ミステリー『片想い』、犯罪加害者の家族を扱った社会派小説『手紙』、『白夜行』の興奮がよみがえるミリオンセラー『幻夜』の6作品。
直木賞以外では、第31回江戸川乱歩賞受賞『放課後』、第43回新風賞受賞『流星の絆』、第7回中央公論文芸賞受賞『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、第26回柴田錬三郎賞受賞『夢幻花』、第48回吉川英治文学賞受賞『祈りの幕が下りる時』がある。
出典 公式サイト|容疑者Xの献身
シリーズ作品
ここでは、東野圭吾のシリーズ作品を紹介する。一冊ごとに単独でも読めるようになっているが、通して読むことで見えてくるものがある。シリーズごとに作風も異なるため、好みに合わせてセレクトし読破してみよう。
加賀恭一郎シリーズ
本格ミステリーを楽しみたい方は、加賀恭一郎シリーズがぴったり。刑事・加賀恭一郎が活躍するシリーズで、ミステリーでありながら人間模様に焦点を当てた心に染みるストーリーが多いのも特徴だ。デビュー後2作目の『卒業』からシリーズ完結作の『祈りの幕が下りる時』までの全10作。
【加賀恭一郎シリーズ】
『卒業』(1986年)/『眠りの森』(1989年)/『どちらかが彼女を殺した』(1996年)/『悪意』(1996年)/『私が彼を殺した』(1999年)/『嘘をもうひとつだけ』(2000年)/『赤い指』(2006年)/『新参者』(2009年)/『麒麟の翼』(2011年)/『祈りの幕が下りる時』(2013年)
出典 公式サイト|新参者
ガリレオシリーズ
推理ばかりでなく、科学的なアプローチを楽しみたい人にはガリレオシリーズがおすすめ。主人公の物理学教授“湯川学”が活躍するシリーズで、「理系ミステリー」として知られている。短編集が多いのが特徴。工学部出身の東野圭吾らしく、登場するのは理論的に可能なトリックばかり。科学的なアプローチで解決していくので、スッキリとした爽快感が楽しめる。
【ガリレオシリーズ】
『探偵ガリレオ』(1998年)/『予知夢』(2000年)/『容疑者Xの献身』(2005年)/『ガリレオの苦悩』(2008年)/『聖女の救済』(2008年)/『真夏の方程式』(2011年)/『虚像の道化師 ガリレオ7』(2012年)/『禁断の魔術 ガリレオ8』(2012年)/『沈黙のパレード』(2018年)
出典 公式サイト|探偵ガリレオ
マスカレードシリーズ
2010年代の新たなシリーズものとして始まった「マスカレードシリーズ」。ホテルマンとして現場に潜入した新米刑事と、その教育係のホテルウーマンというコンビが、ホテルを訪れる客の中から犯人の真相に迫っていくストーリーだ。ホテルコンシェルジュの業務内容も非常に細かく描写されており、ホテルの仕事に興味がある人も必読。
【マスカレードシリーズ】
『マスカレード・ホテル』(2011年)/『マスカレード・イブ』(2014年)/『マスカレード・ナイト』(2017年)
出典 公式サイト|マスカレード・ホテル
映画化、ドラマ化された名作
ここでは、映画化、ドラマ化された東野圭吾の作品を紹介する。先に映像作品を観てから読むもよし、すでに小説を読んだことのあるなら、原作との違い楽しむもよし。
白夜行
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の男が殺された。次々に容疑者が浮かぶものの、結局事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子“桐原亮司”と、容疑者の娘“西本雪穂”は事件後、別々の道を歩んでいくが、二人の周囲にいくつもの恐るべき犯罪の形跡が見え隠れする。しかし、証拠は何もない。そして19年の歳月が流れ……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。超大作でありながら、ページを繰る手が止まらなくなるほどラハラさせられるノンストップミステリーだ。
流星の絆
惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった3兄妹。彼らは養護施設で幼少期を過ごした後、妹“静奈”が詐欺にあったことから、詐欺をはたらくようになっていく。事件から14年後、彼らの前に両親を殺した犯人に似た人物が現れ、3人は復讐を計画する。しかし、完璧だったはずの計画がある誤算によって破綻していく……。タイトルにあるように、本書は「絆」がテーマ。ミステリー要素を取り入れつつも、兄妹間の絆や妹の恋愛を描くエンタメ作品で、広い層におすすめできる名作だ。
出典 公式サイト|流星の絆
秘密
妻と小学5年生の娘を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。「夫婦とは?」「愛とは?」「父とは?」「妻とは?、非情な運命は愛する人を二度奪っていく。東野圭吾の出世作と評される、初の受賞作。タイトルの本当の意味がわかった時、涙が止まらくなること間違いなし。
出典 公式サイト|秘密
新作紹介
最後に、東野圭吾待望の新作を紹介する。まだまだ勢いの止まらない彼の新作を、いち早くチェックしよう。
ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
2020年11月30日発売の最新作。ほとんどの人が訪れたこともなく、訪れようともしない名もなき町。寂れてはいても観光地であるその土地では、再び客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。しかし、世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。町は望みを絶たれてしまう。そんなタイミングで殺人事件が発生。犯人はもちろん、犯行の流れも謎だらけ。「俺は自分の手で、警察より先に真相を突き止めたいと思っている」颯爽とあらわれた“黒い魔術師”が知恵と仕掛けを駆使し、犯人と警察に挑む。世情を反映しながらも、普遍的に描く、圧巻の離れ業を味わえる一冊。
クスノキの番人
2020年3月17日発売。解雇された職場に盗みに入り逮捕された“玲斗”は、弁護士費用を支払ってくれた伯母から、「クスノキの番人」をするように命じられる。その木に祈れば、願いが叶うと言われているクスノキ。その番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす物語。丁寧に重ねられるエピソード、それらが伏線となり感動のラストへ。
希望の糸
2019年7月15日発売。ある日、閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。捜査線上に浮上した常連客だった一人の男性は、災害で二人の子供を失い深い傷を抱えていた。容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。「家族」という非常に難しいテーマに向き合う一冊。
出典 公式サイト|希望の糸
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文/oki