株主になると割り振られる株主番号は、信託銀行から送付される『株主への配当金のお知らせ』等で確認することができます。この株主番号はどんな意味があり、どのように権利にかかわってくるのでしょうか。
株主番号とは?
証券取引所で日々売買されている株式は、株主がころころ変わります。その中でも、投資してくれている株主には配当金、株主優待、議決権の権利が与えられます。
株主がころころ変わる中で誰にこの権利を与えるのかというと、株式を発行している企業は1年に1、2回権利日を設け、その権利日に株主になっている人に権利を与えます。その他の日に株主となっていても権利を得ることができません。
株式には受渡に3営業日かかるため、権利日とされる3営業日前までに購入していることが必要となります。例えば、2020年11月30日が権利日であれば、3営業日前の26日の15時までに購入すると、直近の権利を得ることができます。
株主番号は、権利日等に株主になっている人を識別する番号です。
同一住所・同一氏名の株主に対して一つの株主番号が割り当てられます。そのため、同じ名義であれば、A証券で100株、B証券で100株と2以上の証券会社で別々で同じ銘柄を保有していてもまとめて200株となり同じ株主番号にまとめられます。
株主優待の長期優遇特典
株主優待は、権利日までに株主になっていればその権利を得られます。そのため、株主優待のある株式を権利日に保有し、翌営業日に売却してしまっても直近の株主優待を受け取ることができます。そこで、企業は長期で株式を保有してくれる株主を増やすために、長期で株主になってくれている人を優遇する政策をとる会社もあります。具体的には、長期保有の株主に、株主優待をグレードアップさせ、同じ株数でも長期保有の人の方が手厚い株主優待になるようにする政策です。
例えば、日本航空(銘柄コード:9201)の株主優待は、JALグループの国内定期航空路線片道1区間が株主優待券1枚で50%割引となりますが、3年(7基準日)連続で保有していると300株なら1枚、1,000株以上なら2枚、10,000株以上なら3枚と、通常の株主優待で受け取れる枚数に追加で受け取れます。
どうやって長期保有しているかどうかを確認するかというと、株主番号です。株主番号は売却すると番号が変わるため、番号が変わらなければ長期で保有していると判断できるわけです。
JALの場合、7基準日に同じ株主番号であれば長期でずっと保有していることになり、長期株主優待特典を受け取れるわけです。逆に3年保有していても、途中で売却していることがあると、この基準日の株主番号が変わっており、長期優遇特典を受け取れません。
どんなときに株主番号が変わる?
株主番号は、一度売却すれば変わりますが、厳密には変わらないこともあります。
株式は、証券会社で購入すると証券保管振替機構(以下:ほふりという)で電子的に集中保管され、売買等に伴い名義は変わっていく株主名簿を管理しています。それぞれの上場会社はどの株主に権利があるのかどうかを確認するため、さらに株主名簿管理を信託銀行の証券代行部に任せています。信託銀行は、ほふりに登録されている株主名簿を株主に通知が必要になる都度名寄せし、株主名簿を作成します。
具体的には、配当金、株主総会に議決権行使などの権利が得られる日に株主となっている人の名前をほふりから名寄せし、権利のある株主の名簿を作成して、それぞれの株主に通知します。
上場企業が指定する信託銀行は四季報で見ると、[名]〇〇信と記載してあります。四季報は証券会社の銘柄詳細で見ることができたり、書店で冊子として売られていたりします。有料ですが、オンライン版の四季報もあります。
株主番号が変わるのは、厳密にはこの名寄せ時に株主が変わっているかどうかです。
株主番号は、名寄せしたときに異なる株主になっていると番号が他の株主に振られ変わります。
名寄せは既存株主に関係するコーポレートアクションが起きた時に行われます。
■名寄せされるコーポレートアクション
・配当金
・株主総会
・株主優待
・臨時株主総会
・株式分割
・株式併合
・株式交換、移転
・会社合併
・TOB(公開買付)
株主が変わるのは売却だけでなく、相続、贈与、貸株サービスを利用してときなども該当します。
一方、名寄せされない間は株主が変わっていても株主番号が変わりません。
例えば、配当金の権利を得られる基準日に株主となっており、その後売却して再度次の権利日の前に株主になっていれば株主番号が変わりません。
ただし、予期できない臨時株主総会などのコーポレートアクションがあったときは、名寄せされそのときに株主でなければ株主番号が変わってしまいます。
コーポレートアクションは予期できるものではないため、長期優遇特典目的の投資であれば、基準日と基準日の名寄せれない間に売却するのはおすすめできません。
なお、1株でも保有していれば株主番号が変わらないため、長期優遇特典のある株式を売却する場合は一部株式を残して、後で買い戻せば長期優遇特典を継続できます。
文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。