哺乳瓶から大量のマイクロプラスチックが放出
粉ミルクを調乳する際に、哺乳瓶から大量のマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック粒子)が放出されていることを確認したとする研究結果を、ダブリン大学トリニティカレッジ(アイルランド)のLiwen Xiao氏らが報告した。
同氏らは、乳児がミルクとともにマイクロプラスチックも飲み込んでいる可能性があるとして、警鐘を鳴らしている。研究の詳細は「Nature Food」10月19日オンライン版に掲載された。
プラスチック製品は劣化すると、マイクロプラスチックやナノプラスチックといった細かい粒子状の破片になる。
われわれがこれらの粒子を日常的に大量摂取していることを示すエビデンスが、現在増えつつある。
しかし、プラスチック製品の材料として世界で最も汎用されているポリプロピレンについては、十分な評価がなされていない。
Xiao氏らは今回、世界的によく使われている10種類のポリプロピレン製哺乳瓶(全世界で68.8%のシェア)を用いて、マイクロプラスチックがどのくらい放出されるのかを調べた。
調査は、国際ガイドラインに則って乳幼児の粉ミルクを準備(洗浄、滅菌、調乳)した場合に、哺乳瓶から放出されるマイクロプラスチックを定量化するためのプロトコルを作り、それに従って行われた。
その結果、70℃のお湯で滅菌して調乳するという標準的な手順を踏んだ場合には、哺乳瓶から1リットル当たり1620万個のマイクロプラスチックが放出されることが明らかになった。
また、お湯の温度を25℃から95℃にまで上げると、哺乳瓶から放出されるマイクロプラスチックの量は、1リットル当たり60万個から5500万個にまで増加し、お湯の温度が高いほど増えることも判明した。
Xiao氏らがさらに、世界の48の国と地域について、哺乳瓶で調乳した粉ミルクを飲んだ生後12カ月の乳児が、ミルクとともに飲み込んでしまう可能性のあるマイクロプラスチックの量を推計したところ、1日当たり平均158万個と算出された。
乳児のマイクロプラスチックへの潜在的な曝露量が最も高かったのは、オセアニア、北米、ヨーロッパで、それぞれ1日当たり210万、228万、261万個と推計された。
ただし、こうしたマイクロプラスチックが乳児に短期的あるいは長期的な健康リスクをもたらすのかどうかについては、現時点ではデータがないため、不明だという。
この研究の付随論評を執筆したウィーン医科大学(オーストリア)のPhilipp Schwabl氏は、「Xiao氏らの研究で検出されたマイクロプラスチックの数は極めて多かったが、これらの摂取が乳児に与える影響、あるいは広く人々の健康に与える影響に関しては、まだ明らかになっていない」と指摘する。
一方、Xiao氏らとともに今回の研究を実施した同大学のJohn Boland氏は政策立案者に対して、プラスチック製の哺乳瓶で粉ミルクを準備する方法に関する現行のガイドラインを再評価するよう求めている。
Xiao氏らは、粉ミルクにプラスチック粒子が放出される量を低減するために親たちがとれる対策として、以下を挙げている。
・哺乳瓶は滅菌後、冷めるまで待ち、使用前に滅菌水で3回以上すすぐ。
・粉ミルクはプラスチック製以外の容器で作り、室温になるまで冷ました上で哺乳瓶に移す。
・哺乳瓶に入れたミルクを激しく振って混ぜない。
・プラスチック製の容器に入った粉ミルクを再加熱しない。
Schwabl氏は「今回の研究データから、今後さらなる研究でマイクロプラスチックが有毒なのか、あるいは食物繊維のような代謝経路をたどるのかを明らかにする必要性が示された。それまではプラスチック製の容器に入れた食品をそのまま温めることは、できるだけ避けた方が良いだろう」と助言している。(HealthDay News 2020年10月19日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s43016-020-00171-y
構成/DIME編集部