日常履く靴を安く済ませるか、それとも高級なものを選ぶべきか?
冠婚葬祭やフォーマルなイベントに出席するための靴であれば、誰しも迷わず高級品を選ぶだろう。が、この記事ではあくまでも「日常で履く靴」としてご紹介したい。
まあ、近所のコンビニに行く程度ならサンダルでもいいのだろうが、たとえば神奈川県相模原市橋本在住の人がアリオ橋本へ買い物に行く時に履く靴は何を選択すればいいのか……という問題である。ローカルなたとえで申し訳ないが。より普遍的な表現をすれば、地元のイオン系列の店へ行く時に履く靴……ということだ。
せっかくだから、こういう時でも高い靴を履いてみよう。
おすすめの理由1.持ち主の足に靴がフィットする
最近の筆者が履いているのは、レッドウイング6インチ“ラインマン”2924である。
知っている人はご存じのはずだが、これはABC-MART限定商品。実売価格はちょうど3万円程度だった。
筆者の足は甲高幅広と言われている日本人の中でもさらに甲高で、実測よりも大きいサイズのものを選ばないと入らない。欧米規格の靴であればなおさらだ。足の長さは実寸25.5cmなのに、この記事のラインマンのサイズは10Dである。アメリカ規格の10は、日本では28cm。そうでなければ、本当に入らない。
しかし、この靴を履き始めて1週間もすると足にフィットしてくる。やはり革が伸びているようで、筆者のややこしい形の足にピッタリ密着するようになった。
恐らく、この靴を中古品として他人に譲渡しても、すぐに返品されてしまうだろう。もはやこの靴は、筆者の足の形状を覚えてしまった。「持ち主の身体に適合するブーツ」というレッドウイングの評判は、ただの噂ではない。
おすすめの理由2.靴磨きで大抵はカバー。だから傷を恐れなくていい
さて、筆者は二輪乗りである。
MTバイクの操作をここで簡単に説明すると、シートにまたがった時の右足に後輪ブレーキのペダルがあって、左足にギアチェンジペダルというものがある。ギアを上げる際は左手のクラッチレバーを引きながら左足の甲でギアチェンジペダルを跳ね上げる。「ライダーの履く靴は左右の経年変化が異なる」というのは、そのような動作があるからだ。
筆者のラインマンも例外ではなく、左足の一部分が妙に黒ずんでいる。ここで筆者はギアチェンジペダルを操作している、ということだ。
街歩きだけでなく、バイク移動の際もラインマンを履いている筆者。
知り合いにこの話をした時、「3万円もした靴なんだろ? そんな雑に扱うな! バイクに乗ってない時にその靴を履け!」と言われてしまった。お互い、庶民である。庶民の経済感覚で言えば、3万円の靴は年に数度しか訪れないイベントで履くべきものであり、足の操作を必要とするバイクに乗る時には履くな! 傷がついたらどうするんだ! ということだ。
実際、筆者のラインマンは結構傷が入っている。
不思議なことに、筆者の場合は右足にもよく傷が出る。だが、このくらいなら靴磨きで綺麗にすることができる。
「日常シーンで履く靴だからこそある程度高級なものを選ぼう」という内容の記事を書いた理由は、単に自分の持っている靴を自慢したいからではない。3万円以上の靴を履いているから、手入れもマメにするようになる。どこかでついてしまった傷が気になり、その度に靴磨きに勤しむようになる。それを広く伝えたかったからだ。
高いものは手間がかかる。1足1000円のズックなら傷つこうが汚れようが気にならないが、レッドウイングはそうはいかない。高級な靴を毎日惜しみなく履いているからこそ、生活習慣も良い方向へと改善されていく。これは素晴らしいことじゃないか!
おすすめの理由3.消費でなく修理して履き続けるのが結局は得
1組ウン万円のものを「高いものだから」という理由でなるべく使わずにいる。これはもったいないことではないかと筆者はだんだんと感じるようになった。
たとえば、この靴。
上の画像で筆者が履いているのは、アルファインダストリーズのエンジニアブーツ。とある個人経営の小売店で買ったものだ。値段はやはり3万円ほど。ネットで検索すれば2万円以下での販売も見受けられる製品だが、だからといって筆者は後悔していない。実店舗で買うだけの価値はあるものだし、そもそもレッドウイングやチペワのエンジニアブーツよりもだいぶ安い。
そして、このエンジニアブーツは相当履き込んでいる。内張りはすでにボロボロだ。では捨ててしまうか? とんでもない。修理に出せばいいじゃないか!
そういう方向に考えが向くから、普段履きの靴に3万円以上のものを選ぶのは決して「もったいない」ことではない。そして、できればネットではなく実店舗で靴を買いたいところ。ネット売買にありがちな「サイズが合わない!」という失敗も回避できるし、そもそも実店舗(特に個人経営の店)の減少は製造産業にとってダメージ以外の何ものでもないからだ。
「サプライチェーンの効率化で実売価格が大幅に安くなった」と言えば聞こえはいいかもしれないが、それによって失われてしまうモノやコトも存在する。
高いものには、それ相応の付加価値があるのだ。
取材・文/澤田真一