8月31日、としまえんが94年の歴史に幕を閉じた。
東京都練馬区で生まれ育った私は、
1歳から大学を卒業するまで、
ほぼ毎年、としまえんを訪れていた。
幼い頃は、家族でプールに出かけた。
高校時代は、電車代が惜しくて、自転車で1時間かけて通った。
20歳の成人式も、としまえんで行なわれた。
最後に、どうしても「さよなら」が言いたくて、
友達を誘って、10年ぶりに行ってみることにした。
入り口に並んでいるだけで、懐かしくて震えた。
乗り物もプールも、ほとんど変わっていなくて、
たくさんの思い出がこみ上げてきた。
10代の頃はとにかくお金がなかったから、
今回は、好きなだけ食べて飲んで、贅沢をしてみた。
夏休みなので、もちろん子供もたくさんいたが、
それよりも、かつて子供だった、
おにいさんおねえさんのほうが多かった。
同じように、お別れをしにきたんだろうか。
当たり前にそこにある時は、何も思わないのに、
なくなると知ってから、急に寂しくなる。
私は、何て勝手なんだろう。
大好きな山下達郎さんの名曲『さよなら夏の日』は、
としまえんの流れるプールが舞台だったと、
ご本人がラジオで話しているのを聞いた。
令和2度目の夏に、昭和がまた消えた。
いろいろあったけど、果たして私は、
雨に濡れながら、大人になれたのかしら。
さよなら夏の日。
写真は、としまえんから見上げた空。
よく晴れていて、切なかった。
Natsumi Uga
テレビ朝日アナウンサーを経て、昨年からフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初の冠番組『川柳居酒屋なつみ』(テレビ朝日)、『テンカイズ』(TBSラジオ)などに出演中。4月からはMCを務める「土曜はナニする!?」(関西テレビ・フジテレビ系)がスタート。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME12月号に掲載されたものです。