ルールを知らないでラグビーの試合を観てもつまらない、とお考えではないだろうか。大丈夫! ラグビーがジェントルマンシップに基づいて試合が行われていることや、国を代表する選手が驚異の身体能力を持っていることなどを知ると、ちょっと違った見方が出来るはず。今回はそんなお話を。
ラグビーがジェントルマンのスポーツといわれる理由
激しい試合が終わればノーサイド。そこが美しい!
一般的には、人を殴ったら、最初に殴った人が悪いということになるだろう。
しかし、ラグビーでは殴り返した方が悪いという考えがある。報復はスポーツマンシップに反するということなのだ。
防具をつけず、相手と肉体をぶつけ合うのだから一歩でも引くとやられてしまう。しかし、そういうせめぎ合いの中でも、越えてはならぬ一線の手前で踏みとどまる意識を持ち続けるから、ラグビーは「紳士のスポーツ」と呼ばれるのだ。どんなに激しくプレーしても相手の急所や頭部を痛めつけることはしない。
そもそもは英国のパブリックスクールで、ジェントルマンを養成するためにルールやマナーが重んじられていった。ラグビーが紳士のスポーツと言われるのは、自信の心身を鍛え、相手を重んじる精神からくるものなのだ。
試合中は目を釣り上げて挑んでも、試合終了と同時に目の前の相手と握手する。その精神性こそラグビースピリットそのもの。「ジェントルマンのスポーツ」とは、「相手をリスペクトして初めて成り立つスポーツ」と同意である。
実際に国際大会でも、試合が終わればノーサイド。敵味方なく、その健闘をたたえ合う。激しい試合であればあるほど、試合が終われば永遠の友人となるのがラグビー選手なのだ。
ラグビー選手の驚異の身体能力に注目せよ!
2007年に開催の第6回ワールドカップで8トライを奪い、南アフリカを同大会の頂点に導いたスーパースター、ブライアン・ハバナのポジションはウイング。グラウンドの一番外側に位置し、チームでもっとも足の速い選手が任されることが多いポジションだ。もちろんボールを相手陣地まで運んで、トライをするために。
ハバナは、そのスピードがどれだけ速いのかを表現するため、チーターや離陸前の旅客機とのレースに挑んだことがある。
そんなスピードスターの日本版と言われるのが日本代表として活躍する福岡堅樹だ。2015年ワールドカップで日本代表を率いたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、福岡について「ハバナになれる」と言い続けた。実際、福岡の加速は世界レベルで50メートルを5秒8。相手のディフェンス陣を置き去りにするシーンは必見だ。
ラグビー選手の凄いところは、陸上選手なみの速さを筋骨隆々の体で出せるところ。ちなみに、かつてニュージーランド代表で活躍したジョナ・ロムーは196センチ、119キロで100メートルを10秒7で走った。
体の大きな選手の肉弾戦も見物ではあるが、日本のお得意とするスピード勝負も醍醐味だ。
ワールドカップに出場する選手は俊足揃い。各国のスピード合戦にもぜひ注目したい。
もちろん、パワーの闘いも忘れてはいけないけれど。
ルールを知ることも、観戦の面白みを増すためには大事だが、まずは激しい闘いの中に「ジェントルマンシップ」があることや、「ずば抜けた身体能力」の闘いであることを意識してラグビーを観てみるのもいいだろう。