秋の七草の一つとして知られる『吾亦紅』とは、どのような植物なのでしょうか。ここでは、吾亦紅の基本情報や開花時期、育て方についてもご紹介します。秋に咲く花を身近に置いて、季節の移り変わりを楽しみましょう。
吾亦紅とは?
吾亦紅は植物の一種で、『ワレモコウ』と読みます。国内に広く自生しているので、見掛けたことのある人も多いかもしれません。まずは、吾亦紅の基本知識を知っておきましょう。
特徴と基本情報
細い茎のてっぺんに穂を付ける吾亦紅は、バラ科の多年草です。穂の色は赤茶色が一般的ですが、白色の穂を付ける種類もあります。
日本では華道や茶道の世界で親しまれてきた他、庭植えや切り花としても人気の植物です。また、吾亦紅には薬草としての一面もあり、古くは止血や火傷の手当にも使われていました。
『吾木香』『我吾紅』『我毛紅』などと表記されることもあり、源氏物語に登場することでも知られています。
開花時期と花の見頃
吾亦紅の開花時期は6~9月ごろと長く、主に秋の花として親しまれている植物です。冬になると地上に出ている部分は枯れてしまいますが、翌年の春にはまた芽吹いて花を咲かせます。
穂全体で一つの花だと思われがちですが、実はこの穂は2mm程度の小さな花の集合体です。開花の際には、穂の上から下に向かって順番に色づいていきます。
この色づきが長持ちするのも、吾亦紅の大きな特徴です。吾亦紅の花には花びらがなく、色づいているのは『萼(がく)』の部分にあたります。花が終わっても萼は残るので、長く色づいて見えるというわけです。
吾亦紅の種類、花言葉
ここではもう少し吾亦紅について詳しく解説していきます。吾亦紅は、種類の多い植物です。主な種類や花言葉についても知っておきましょう。
観賞用から食用までたくさんの種類
切り花としてよく使われる『ヤクシマワレモコウ』や、コンパクトに育てることができる『タンナワレモコウ』などは、飾ったり育てたりする鑑賞用に向いた種類です。道端でよく見掛ける品種としては、ロシアからモンゴル、中国東北部、朝鮮半島、日本列島まで幅広く分布する『ナガボノワレモコウ』が知られています。
また、吾亦紅には食用になる『サラダバーネット』という品種があるのをご存じでしょうか。若い葉が食用となり、サラダなどに利用されます。一般的なスーパーでは入手しにくいものですが、自宅で育てれば一風違ったサラダを食卓に出せるでしょう。
代表的な花言葉は「変化」
吾亦紅の代表的な花言葉は『変化』ですが、その他にも『移り行く日々』『もの思い』『憧れ』『移ろい』『愛慕』などがあります。
『変化』という花言葉の由来は、吾亦紅の穂の上から下に向かって順番に花が咲いていく特徴にあるそうです。また『もの思い』という花言葉には、細長い茎を風に揺らす姿が投影されているといわれています。
さまざまな種類のある吾亦紅ですが、品種や色別の花言葉はなく共通です。
吾亦紅の育て方をチェック
吾亦紅は日本に古くから自生している植物で、庭や鉢植えでも育てやすい植物です。「育ててみたい」という人のために、基本となる栽培環境や用土の使い方はもちろん、ポイントとなる水やりや肥料の与え方についても解説していきます。興味があればぜひ自宅で育ててみましょう。
栽培環境と土台になる用土
どのような植物であっても、上手に育てるポイントは栽培環境と用土の調整にあります。吾亦紅は日陰と過湿が苦手なので、『日当たりが良く風通しの良い場所』で育てましょう。
ただし、葉に斑模様が入っている種類の場合は、葉が焼けてしまうリスクを避けなければなりません。真夏は直射日光を避け、遮光できる環境に移動させるのがおすすめです。庭植えにせず、鉢植えにしておくと移動が簡単になります。
用土については、市販の一般的な培養土を準備すれば十分です。吾亦紅はもともとやせ地でも育つ強い植物なので、さほど土の種類を選びません。
水やりはしっかりと
吾亦紅は湿気を苦手とする一方で、乾燥にも弱いという特徴があります。そのため、栽培中は定期的な水やりが欠かせません。土の表面が乾いてしまったら、たっぷりと水やりをしましょう。
鉢植えの場合は、鉢の底からあふれるくらいの量を目安にすれば大丈夫です。夏は1日に1~2回くらいの頻度で水を与えましょう。
庭植えの場合は、基本的には水やりは不要です。ただし、晴天続きの場合には土の状態を細かく確認しましょう。乾燥していたら水やりを行います。
肥料の与え方
吾亦紅は、あまり肥料を必要としない植物です。そのため、庭植えで育てる場合には肥料を与える必要はありません。鉢植えの場合は育成状況に合わせますが、肥料の与え過ぎには注意しましょう。
本来はやせ地でも育つ植物なので、肥料を多く与えると枝や葉ばかりが茂ってしまい、風情が失われてしまいます。必要に応じて与える際は、あくまでも『控えめな量』がポイントです。時期としては、生育期を迎える前の、春から夏が適切です。
室内で秋を感じる 吾亦紅の生け方
秋の七草の一つである吾亦紅は、季節の訪れを感じさせる植物です。ぜひ自宅に飾って、色づいた穂で室内を明るく演出してみましょう。
吾亦紅は、メインにも引き立て役にもなれる花です。生け花で楽しむのも風情がありますし、ドライフラワーにすればインテリアにも重宝します。
花器に合わせて吾亦紅だけで生ける
まずは、吾亦紅だけでバランスよく生けるコツを知りましょう。吾亦紅の丈が長めの場合は、花瓶と吾亦紅の高さのバランスが重要です。
器に対して、吾亦紅を2倍くらいの丈にしておくと、美しくまとまります。ガラスの花瓶はもちろん、和の雰囲気を持った陶器の器にもなじみます。穂の色と器の色にも気を遣うと、センスよく生けられるでしょう。
吾亦紅は、1本の茎から枝分かれしながらたくさんの穂を付けます。何本も同時に生ける際には、枝が重ならないように奥行きを出してあげるのがおすすめです。枝分かれしている部分を短く切れば、コンパクトにかわいらしく生けることもできます。
吾亦紅をアクセントにして生ける
別の花をメインに生け、吾亦紅をアクセントに使う方法もあります。吾亦紅は、細かく枝分かれしながら小さな穂を付けるので、大きく目立つ花の引き立て役にもぴったりです。
アレンジメントや花束に混ぜると秋らしい雰囲気に仕上がるため、花屋でも人気の花です。
自宅で生ける場合は、メインの花の周辺に混ぜながらボリューム感を意識しましょう。丈の長さも調整すると、全体的に調和のとれた仕上がりになります。
ドライフラワーにもおすすめ
吾亦紅は水が切れても形をキープしやすいため、ドライフラワーに向いた植物です。吾亦紅だけで束にするベーシックな方法もアリですが、他の花と混ぜてリースや花かんむりにしても楽しめるでしょう。
ドライフラワーを美しく仕上げるポイントは、大きく2点あります。1点目は、長い枝ほど下に配置して重ねることです。そうすることで仕上がりが立体的になり、インテリアとして映えやすくなります。
2点目は、下向きにつるして乾かすことです。花瓶などに立てたままで乾燥させるてしまうと、穂の重みで茎が曲がってしまい、形がくずれてしまいます。
また、吾亦紅をドライフラワーにすると、穂から細かい花がぽろぽろと落ちてくることがあります。そのようなときは、あらかじめスプレーなどで固めておくと、花の落下を防ぐことが可能です。
構成/編集部