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CO2が増えない燃料「バイオディーゼル燃料」がもたらす3つのメリット

2020.11.08

近年、注目されている環境に優しいディーゼルエンジン用の燃料「バイオディーゼル燃料」。この燃料には、どんなメリットがあるのか、動向を探ってみた。

バイオディーゼル燃料って?

バイオディーゼル燃料とは「BDF(Bio Diesel Fuel)」とも呼ばれるもので、菜種油や廃食用油などを用いて製造される、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料だ。

バイオ燃料とは、バイオマス(生物資源)を原料とする燃料で、化石燃料の代替燃料として期待されている。

バイオ燃料を燃焼させても、化石燃料と同様に二酸化炭素(CO2)が発生するが、植物はそのCO2を吸収して生長し、バイオマスを再生産する。そのため、全体として見れば大気中のCO2が増加することはないという「カーボンニュートラル」が成り立ち得るといわれている。

バイオディーゼル燃料活用事例

バイオディーゼル燃料は、国内外ですでに多くの自治体や団体、企業が製造しているが、直近ではこんなニュースがある。

●ファミマのトラックがバイオディーゼル燃料で走った!

株式会社ファミリーマートと株式会社ユーグレナが共同で、こんな取り組みを実施した。

ファミリーマートでは日々、「ファミチキ」などのホットスナックが店内で揚げて作られているが、その使用済み食用油とともに、微細藻類である「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」を配合した「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を製造し、横浜市内を走行するファミリーマートの配送車両に使用する循環型の取り組みだ。

バイオディーゼル燃料で走る配送車での環境保全の取り組みが、今後、小売業界、運送業界で拡大していくことを目指した。バイオディーゼル燃料に「ユーグレナ」を配合することの独自性も特徴的だ。

●エミレーツ航空がドバイでバイオディーゼル燃料の乗務員専用バスの運行を開始

エミレーツ航空は、環境管理に力を入れており、地上での業務においても電気自動車を導入するなどして、地球環境保護への継続的な取り組みを行っている。

先日、ドバイにおける客室乗務員専用バスの3分の1近くをバイオ燃料で運行し、環境に配慮した活動をさらに増やしていくことを発表した。

エミレーツの契約サービスプロバイダーであるAl Wegdaniyahは、UAE(アラブ首長国連邦)の主要なバイオ燃料生産者の1つであるNeutral Fuels(ニュートラル・フューエルズ)が提供するバイオディーゼルを使用して、すべての道路で運行することを約束し、地元で調達した使用済み食用油を原料として利用している。

客室乗務員の送迎バスは、自宅と空港間で運行しているが、ドバイだけでも約50台だとし、通常の月の平均走行距離は70万キロに達するという。

この取り組みだけでも、年間75,000キログラムの二酸化炭素削減効果があると推定されている。エミレーツは他の輸送業者とも協力し、この取り組みを輸送機全体に拡大していくという。

バイオディーゼル燃料の主なメリット3つ

バイオディーゼル燃料は、主にどのようなメリットを持つのか。ユーグレナ社で「ユーグレナバイオ燃料」のサプライチェーン構築(品質保証含む)に携わるに携わる、バイオ燃料事業課の神永将司さんに聞いた。

1.カーボンニュートラル

先述の通り、バイオディーゼル燃料には「カーボンニュートラル」という強みがある。

「燃焼段階ではCO2を排出しますが、植物の生長過程で光合成によりCO2を吸収しているため、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロとなります。ライフサイクル全体でのGHG(温室効果ガス)の発生も従来燃料と比較して大幅に減らすことができます」

ちなみに微細藻類の「ユーグレナ」も生長過程で光合成によりCO2を吸収するため、植物同様にバイオディーゼル燃料に寄与するという。

2.硫黄分が少ない

バイオディーゼル燃料は硫黄分をほぼ含んでいないため、燃焼時に排出される硫黄酸化物(SOx)が少ないとされる。硫黄酸化物(SOx)とは石油や石炭など硫黄分が含まれる化石燃料が燃えるときに発生し、ぜん息や酸性雨の原因となるものだ。

「ユーグレナバイオディーゼル燃料は分析結果としてサルファーフリーであることを確認しています。」

3.一般のディーゼルエンジンに使用できるものもある

バイオディーゼル燃料は、船舶や大型自動車、飛行機などの一般のディーゼルエンジンに使用することができるものも開発されている。車両によっては不具合が出るものもあるといわれているが、改良が重ねられている。

「ユーグレナバイオディーゼル燃料は、化石燃料由来の軽油を使用している既存のエンジンでも問題なく使用可能で、軽油を100%代替できるため、特別に仕様変更をする必要はありません。

ユーグレナバイオディーゼル燃料の燃焼特性について、車での全負荷性能試験と排出ガス試験をいすゞ自動車に実施してもらった結果、性能は石油由来の軽油とほとんど同じであることを確認しています。バイオ燃料だからといって燃焼時の出力が不足することはなく、また同時に特殊なガスを排出することもありません」

「バイオジェット燃料」の日本初の商業フライトの日が近い!?

ユーグレナ社は、2018年10月末、横浜市鶴見区に日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを竣工しており、バイオジェット燃料にも「ユーグレナ」を活用することが期待されている。

神永さんによれば、近年は、世界中でバイオジェット燃料を使った商業フライトが当たり前になっており、海外では21か国で25万回以上の航行の実績があるなか、日本ではバイオジェット燃料を使った商業フライトはいまだ0回という状況だという。

航空需要増が予測される中、ICAO(国際民間航空機関)が定めるCO2排出量を現状水準に維持するには、バイオ燃料を使用することは必須であり、バイオジェット燃料市場は世界的に大きな拡大が予測されているという。

2019年初旬には、国内大手航空会社2 社が海外からのバイオジェット燃料購入を発表した。これを受け、ユーグレナ社は日本初のサプライヤーとして市場創出するチャンスであると見込んでいるという。

「今後は、『陸・海・空』のモビリティにバイオ燃料の導入を予定しています。航空業界への新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく、スケジュールについては航空会社と協議しながら判断していくことになっていますが、今後ジェット燃料に展開していく予定です」

バイオディーゼル燃料やバイオジェット燃料が、日本国内で当たり前になる日が近づいていることは確かであるようだ。

地球温暖化をはじめとした環境問題への関心が高まる中、一つの主要なキーワードとしてとらえておきたい。

【取材協力】株式会社ユーグレナ

【参照】国立環境研究所 環境展望台「バイオディーゼル – 環境技術解説」

取材・文/石原亜香利

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