いよいよボルボの電動化が完了した。日本におけるボルボの電動化は、48Vマイルドハイブリッドに続き、リチャージプラグインハイブリッドと呼ばれるモデルでまずは完結。もはや純ガソリンエンジン搭載車はカタログから消えたのである。これまで、ボルボはPHVをTWIN ENGINEと呼んでいたが、ここにきてリチャージプラグインハイブリッドに改名したというわけだ。ちなみに、今後、登場するピュアEVモデルは、リチャージピュアエレクトリックと称することになる。
ここではそんなボルボのコンパクトSUV(と言っても全幅は1875mmもあるのだが)、XC40リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプションの2021年モデルに試乗した(2021年モデルから5年保証に)。
XC40と言えば、日本国内導入時の初試乗で、50mも走らないうちに、感動に値する走行性能を見せつけ、2018-2019年日本カー・オブ・ザ・イヤーで満点の10点を配点。その年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた輸入車でもあるのだが、以来、さまざまなXC40に試乗し、その都度、進化の度合いに驚かされ続けてきたクルマでもある。
リチャージプラグインハイブリッドになっても内外装に大きな変化はないが、パワーユニットはボルボ初の1.5L 3気筒ガソリンターボ、180ps、27.0kg-mに、10.91kWhのリチウムイオンバッテリーと81ps、16.3kg-mを発生するモーターをアドオン。組み合わされるミッションは7速DTC(デュアルクラッチトランスミッション)だ。気になるEV走行可能距離はカタログ値で45.6km。実質35kmぐらいになるだろうか。
XC40の内外装に大きな変化はない・・・と書いたが、エクステリアではフロントフェンダー左側に充電用のリッドが付き、また、インテリアでは、電動車専用のメーターになるのは当然として、センターコンソール後端の後席エアコン吹き出し口が、V60リチャージプラグインハイブリッドとは違って残されたものの(左右Bピラーのエアコン吹き出し口がないため)、ぴったりティシュボックスが収納できたセンターコンソール内のボックスは浅くなっている。ただし、今風のソフトパックのティッシュ300枚150組なら入ることを確認している。ガソリン車時代との違いはそれぐらいなのである。
おっと、ドライブモードについても、リチャージプラグインハイブリッドならではだった。つまり、基本的にモーター走行をする「ピュア」、モーターとエンジンを適切に使って走るデフォルトの「ハイブリッド」、エンジンのみで走り、モーターがアシストする「パワー」、そして好みに合わせてセッティングできる「インディビジュアル」、SUVならではの「オフロード」の5種類になっている。また、バッテリーを温存する「ホールド」、エンジン主体で走り、バッテリーを蓄える「チャージ」モードも縦型ディスプレー内で選択することができる。
そんなXC40リチャージプラグインハイブリッドで走り出せば、バッテリーが十分に充電されていれば、無論、モーター走行を開始する。19インチという大径タイヤを履いていながら、良路では静かに、滑るようにスムーズに走る。アクセルレスポンスはまるで右足とモーターが直結しているかのようで、加速性能はトルキーそのもの。走りやすさ、扱いやすさは文句なしである。特にパワーモードでの加速力は血の気が引くほどで、エンジン+モーターの底力を見せつけてくれた。
もちろん、安定感も鉄壁だ。100kg近い重量のバッテリーを低い位置に搭載するため、重心が下がり、SUVらしく高い位置に着座しているにもかかわらず、終始、安定感・安心感たっぷりの走行を披露する。前後左右の姿勢変化も最小限だった。
ただし、さすがにスポーティーな19インチタイヤの装着で、段差越えや荒れた路面では、ゴツゴツしたタッチを伝えてくる。試乗して気になるなら、タイヤのダウンサイズを検討すべきだろうか。また、3気筒ターボエンジンは、アイドリング時、それなりの振動をステアリングやペダルに伝えてくることがある。これまでの4気筒エンジンではなかったことだ。加えて、ブレーキペダルの操作感は、ガソリンモデルにくらべ、やや踏力に慣れが必要だと感じた。
とはいえ、走り出してしまえば、3気筒感は皆無、どころか、エンジンが始動している状態でも、エンジンの存在をほとんど感じさせない静かさに支配されることになる。耳に届くのはロードノイズが主体で、エンジン本体の静かさ、さらにはエンジン回りの遮音、吸音が徹底されているからだと思われる。とにかく、モーター走行、ハイブリッド走行を問わず、素晴らしく静かでスムーズなのが、XC40リチャージプラグインハイブリッドなのである。
今回、フル充電状態でスタートし、その後無充電で高速道路50%、一般道50%の行程で、東京から千葉・鴨川の往復約250kmを走破した時のハイブリッド燃費は約19km/Lと、1.8tもの車重のSUVとしてかなりの好燃費を記録。もちろん、途中で充電すれば、さらに経済的なドライブが可能になるはずだ。ピュアEVと違い、自宅に充電設備がなくても所有しやすく、電欠の心配がないのも、リチャージプラグインハイブリッド=PHVの特徴、魅力と言える。
XC40リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプションの価格は649万円。48Vハイブリッド最上級車種のXC40 B5 AWD R-Design、589万円より60万円高になるものの、補助金によってその差は大きく縮まる(600万円ちょっとというイメージ)。言い方を変えれば、PHVのボルボでもっともリーズナブルに手に入れられる1台が、このXC40リチャージプラグインハイブリッドT5インスクリプションということになる。すでに触れたように、2021年モデルのXC40は5年保証となり、世界最高レベルの先進運転支援機能=インテリセーフとともに、絶大なる安心が得られるチョイスとなりうるのである。
個人的なわがままを言わせてもらえば、ボルボ60シリーズ以上にある前席マッサージ機能とシートベンチレーション機能を、ぜひXC40にも設定してほしいと思っている。ロングドライブでの肉体的疲労低減、暑い日の乗車直後の心地よさ、衣服の背中の汗シワ防止にとても役立ってくれるからである。
ボルボXC40
https://www.volvocars.com/jp/cars/new-models/xc40
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。