ハリウッド映画に登場する犬はほぼ死なない
しばしば洋画に犬が登場することがある。
どんなジャンルにも彼らは出演するものだけど、基本的には主役になることはない。
主人公の飼い犬だったり、せいぜい心を通わせる友人としてのポジションがあたえられるというパターンが御の字だろう。
が、これがSF映画やホラー映画になると、ちょっと立ち位置が変わってくる。
こういったジャンルのハリウッド映画を観ていると、とにかくこの手の映画に登場する犬はタフなのだ。
強くて勇敢という属性をあたえられがちなハリウッド映画のわんちゃんたち!
ハリウッドのSFやホラー映画は数あれど、その中には犬が登場する作品はかなりの数にのぼる。
そしてそういった作品に登場する犬は、信じられないぐらいに勇敢かつ幸運で「あ〜もう絶対無理でしょ」という状況からでも生還しがちだ。
いくつか例を挙げたい。
1996年公開の『インデペンデンス・デイ』では、宇宙人の大規模な地球征服と人類の抵抗が主軸となる映画だったが、この映画にはゴールデンレトリバーが登場する。
このレトリバーは大変に賢い犬で、ある母子と一緒に避難中、円盤からの攻撃に伴う爆風に見舞われるが、決死のジャンプによってすんでのところで難を逃れ、生き延びた。
合成の上手さと爆発の迫力から序盤の一番の目玉のようなシーンである。動物好きは絶対に手に汗握る場面なので記憶に残っているという方も多いかもしれない。
また、2018年に公開された『ザ・プレデター』にも、難を逃れて生き延びる犬が登場した。
さらに本作では、プレデターが使役する狩猟犬も登場したが、この狩猟犬のうちの1頭が人間の味方をして一緒に戦うことになる。
相手が相手だけに「うわぁ、このわんちゃん絶対死ぬじゃん」と身構えていたが、かなり頑丈な身体を持っているので無事に生き延びてくれた。
このように、ハリウッド映画にはしばしば犬が登場し、彼らは基本的に生き延びることが前提で話が進むことが多い。
そのため「ハリウッドのホラーやSFで犬が登場してピンチに陥っても、基本助かるので安心していい」みたいな論調まであるほどだ。
ただ「ハリウッド&犬」という安心感を裏切る映画も…
しかしながら、ハリウッド映画だからと言って、登場する犬の全てが助かるというわけでもない。
ちょっとやんちゃな映画監督の手にかかると、ハリウッド作品でも犬が序盤で退場してしまうということもあるのだ。
代表例は1996年公開の『マーズ・アタック!』だろう。
監督はティム・バートンが務めているが、本作ではこれまでの映画のセオリーが結構意図的に無視されている。
地球にやってきた火星人は、人類とのセレモニーの最中に飛び立った平和の象徴のハトを撃っちゃうし、「安心してください」という音声を流して人を呼び寄せて撃っちゃう。
しまいには、登場する2頭の犬のうちの1頭も撃っちゃうし、残った1頭は人間と頭を入れ替えるという意味のない実験の犠牲にしてしまう。
コメディ色の強い映画なのであまり悲壮感がないのが、犬好きに対してのせめてもの慰みだろうか。
それから、毛色は違うが2007年公開の『アイ・アム・レジェンド』でも、犬の死が描かれている。
もっともこれは原作に沿う形のシナリオであるし、主人公と相棒の犬の絆が強く強調される悲しい最期というシーンなので、ショッキングながらそこまで嫌悪感はおぼえないはずだ。
筆者はもうこのシーンが辛くて辛くてしょうがないんだけど、「意味がある死」という描き方筋が通っているので秀逸に感じるところである。犬好きにも評価が高い映画だ。
おわりに
ハリウッド映画は全世界に向けて配給されるが、メインの客層となるとやはりアメリカ本土の観客たちだ。
だからこそハリウッド映画では、犬の扱いをおろそかにしないという見えない不文律があるのではないか、と個人的には思っている。
その不文律を逆手に取る作品だって、だからこそ際立った印象を見せるわけだ。
つまり大ざっぱにまとめるとこうなる。
「やっぱりアメリカ人って犬大好きなので、なんだかんだ映画で酷い目に遭っても生還させがち。だけどたまにめっちゃ裏切ってくる監督もいるよ」である。
逆に、序盤は主人公が犬と暮らしていたのに、後になって全く登場しなくなる映画もチラホラある。
こういう映画は割と現地でも「あの犬はどうなったの? 雑じゃない?」との指摘を受けやすいようだ。
文/松本ミゾレ(PETomorrow編集部)
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