コロナ禍の今、子どもを連れての外出は何かと気を遣う。そこで、公共交通機関を利用するよりも、なるべく車で移動しようと意識しているファミリー層は多いに違いない。
そんな「家族の車利用の実態」に関する調査がこのほど、全国の30代から50代で、子どもがいる男女300名を対象にして実施された。
さらに、脳研究者の池谷裕二氏に車の広さや快適性がどのように家族に影響を及ぼすのかコメントが寄せられたので、併せて紹介していきたい。
コロナ禍での家族の移動手段は「自家用車」が圧倒的な1位!
コロナ禍で家族の移動手段について、調査を実施したところ、家族での外出の際に「自家用車」にて移動する人が、全体の約90%と圧倒的に高い数値となった(図1)。
コロナ禍でも移動する際に公共交通機関を避け、より安全に移動する手段の一つとしてやはり注目されていた可能性が高いと推測できる。
さらに、アフターコロナでも積極的に利用したい手段について調査したところ、「自家用車」が約8割と多数を占める結果となった(図2)。これは、単にコロナ禍のみでなく、今後も家族で出かける際の手段として、自家用車が増えていくことが予想される結果となった。
車内空間にストレスを感じている人が2人に1人!家族間でもソーシャルディスタンスが必要!?
車内空間に対する家族のニーズを調査したところ、ストレスを感じる要因として、「車内空間の狭さ」が一番多くの回答を占め(図3)、2人に1人が車内空間の狭さにストレスを感じていることがわかった(図4)。
また、約6割が家族間でも適度な距離を保つ必要があると回答し、家族においても一定のディスタンスが必要だということがわかった(図5)。
車内空間にも快適性や広さを求める声が7割!
また、自家用車に求める機能を調査したところ、「家族が広々座れるスペース」や「くつろげる快適性」を求める声が多数あがっており(図6)、約75%の家族が自家用車にリビングのような広くて快適にくつろげる居心地も求めていることが調査からわかった(図7)。
<専門家プロフィール>
池谷裕二(いけがやゆうじ)
1970年生まれ。1998年に東京大学にて薬学博士号を取得。2002~2005年にコロンビア大学(米ニューヨーク)に留学をはさみ、2014年より現職(東京大学薬学部教授)専門分野は神経生理学で、脳の健康について探究している。また、2018年よりERATO脳AI融合プロジェクトの代表を務め、AIチップの脳移植によって新たな知能の開拓を目指している。文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、日本学術振興会賞(2013年)、日本学士院学術奨励賞(2013年)などを受賞。著書に『海馬』『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』などがある。
■典型的なアジアの家族のパーソナルスペースは40㎝
人の周囲には、その人にとっての個人的な空間(パーソナルスペース)があります。パーソナルスペースに他人が入り込むと心理的不快感が生じます。
そのため人とのコミュニケーションには適した社会的距離があり、パーソナルスペースの広さは対人関係や文化背景によって変わります。典型的なアジアの家族では、自分の左右40cmほどが他者との境界線といわれています。
■ストレスはコミュニケーションだけでなく健康状態にも影響を
一般に、人はパーソナルスペースが侵されると不安や攻撃性が高まります。これは「在住者間攻撃」と呼ばれ、人のみならず動物全般にみられる普遍的な現象で、パーソナルスペースは生物学的に根源的な特性です。
このため、車内のような狭い空間内で長時間パーソナルスペースが侵害され続ける状況は、単に空気がギスギスとして無用な衝突の原因になるだけでなく、強いストレスのもとにもなります。
つまり、くつろぎが損なわれ、穏やかな会話が難しくなるというコミュニケーション上の障害が生じるだけでなく、当人の健康にも関わります。ストレスは自律神経を変調させ、人によっては膀胱への蓄尿量が増え、突然の尿意にもつながります。トイレが自由にならない長距離移動では無視できない問題です。
■車内空間にも必要なのはゆとり
普通車の後部座席でこの距離を確保することはしばしば難しいため、とくに長距離を移動する場合は、少しでも広いスペースが確保できる車が望まれ、上部の天井方向にゆとりがあるほうが左右のパーソナルスペースの許容が高まることも知られています。
このように「車内」という閉鎖空間だからこそ、ゆとりは極めて大切な要素となります。空間的なゆとりは、こころと健康のゆとりそのものです。
<調査概要>
概要:新型コロナウイルスの影響による車の価値の変化に関する調査
日時:2020/10/3~10/5
性別:男女
地域:全国
サンプル数:300ss(子どもがいる30代~50代の男女 各年代100名)
出典元:日産自動車株式会社
構成/こじへい