目次
『年寄りの冷や水』は、日常会話で使える便利なことわざですが、語源や意味を知らない人もいるかもしれません。そこで、語源や意味と同時に使う場面や具体的な例文も紹介します。言い換え表現についても触れるので、状況に合わせて使い分けてみましょう。
年寄りの冷や水の意味
『年寄りの冷や水』は、年寄りに対して使う言葉ですが、どのような意味があるのでしょうか?また、年寄りといっても、人により認識が異なります。何歳くらいの人に使える言葉なのかについても解説します。
年寄りが無理をすること
年寄りの冷や水は、年寄りが無理をするという意味です。年齢を省みず、けがにつながりかねない危険な行動をしたり、常識的に考えられないような無謀な行為をしたりすることを表します。
例えば、それまで運動をしたことがない年寄りが、いきなり健康のためにジョギングを始めるといった行動に対して使えます。たとえ健康のためとはいえ、運動未経験の年寄りがいきなりジョギングにチャレンジするのは無謀でしょう。そのような状況で使える便利な表現なのです。
何歳くらいの人に使う言葉?
高齢者の定義はまちまちで、明確に決まっているわけではありません。
国連では60歳以上、国際保健機構(WHO)では65歳以上、老年学では65歳となっています。日本の高齢者に関する法律でも、公的年金の受給開始年齢が65歳なのに対し、道路交通法では70歳です。
近年は高齢化が進み、心身ともに若々しい高齢者も増えています。国民の意識調査によると、70歳以上を高齢者と認識している人が多いようです。年齢以外では、体が思うように動かせないと感じるようになった時期とする人が多いという結果になっています。そのため、目安としては70歳以上の人とするとよいかもしれません。
言葉の語源は?
年寄りの冷や水の語源とされる説は二つありますが、それはどのような説なのでしょうか?また、関連が深い『江戸いろはかるた』についても紹介します。
冷や水を飲むことが危険であることから
年齢とともに、胃腸などの機能が衰える人が多いでしょう。そのため、年寄りが胃腸に刺激の強すぎる冷や水を飲むのは危険だということが、語源とされています。
ことわざが一般的に使われ始めたとされる江戸時代には、冷蔵庫はありませんでした。そのため、井戸からくんだ冷たい水に砂糖を加えた『冷や水』が売られていたのです。この冷や水を年寄りが飲むのは体に悪いということから誕生したことわざだと考えられています。
漢方で知られる東洋医学では、冷や水を含む冷たい飲食物は病を引き起こす原因だと考えられています。江戸時代の人に東洋医学が知られていたのかは不明ですが、冷や水が体に悪いという認識があったといえるでしょう。
冷や水を浴びることを指す説も
もう一つの説は、冷たい水を浴びることを指すというものです。自分の年齢を考えずに、冷水を浴びるような無謀な行為はしない方がよいということが語源と考えられています。
冷や水が比喩的に使われていますが、年齢とともに以前は無理なくできたことができなくなってくるのは事実です。できると思って挑戦し、結果けがをしてしまうというのはよく聞く話です。江戸時代の年寄りも無謀なことをしようとして、周りの人をはらはらさせていたのかもしれません。
「江戸いろはかるた」にも登場
近年は『かるた遊び』をする人が少ないため、かるた自体を知らない人もいるかもしれません。かるたは数種類あり、含まれていることわざが異なりますが、年寄りの冷や水は『江戸いろはかるた』に含まれています。
かるたという言葉はポルトガル語が語源で、遊び自体は平安時代の『貝合わせ』が由来です。主に正月に行う遊びの一つで、文字札(読み札)と絵札(取り札)が各48枚あります。読み担当の人が読み札を読み、読み札にマッチする絵札を取る遊びになります。一番多く絵札を取った人が勝者となるのです。
現在は、遊びでなく、子どもが文字やことわざを覚えるためのツールとして使われることもあります。正月に限らずできるので、昔ながらの遊びを家族で楽しむのもよいでしょう。
使い方は2通り、例文も
周りの人が年寄りに対して使う場合と、年寄りが自分に対して使う場合があります。2通り使い方を例文とともに紹介します。
周囲が年寄りをたしなめる目的で使う
周囲の人が年寄りに対して、もう若くないのだから、無謀なことをしないようにという思いを込めて使うことわざです。注意を促したり、たしなめたりする目的で使われます。
状況にもよりますが、「心配している」「体を大切にしてほしい」というニュアンスが含まれていることが多いでしょう。例えば、高齢の親を心配して「急にジョギングを始めるのは、年寄りの冷や水だ」と言う場合は、けがをしたら大変なので、無謀な行動はやめてほしいという意味合いになります。
中には、年寄り扱いされたと気分を害する人がいるかもしれません。使う相手の年齢だけでなく、自分との関係や距離感を考慮した上で使うようにすると安心でしょう。
年寄り本人が自虐的に使う
ポジティブな意味で、年寄りが自虐的に使う方法もあります。「年寄りらしくないけれど…」「年齢にそぐわないけれど…」という意味合いで使います。
例えば、「年寄りの冷や水だけど、海外旅行にはまって英会話の勉強まで始めてしまいました」という使い方です。恥ずかしそうに言ったり、恥ずかしいというニュアンスが伝わってきたりする表現になります。
聞いた相手が思わずほほえんでしまうような、ポジティブな状況で使われることが多いでしょう。
年寄りの冷や水の例文を紹介
日常生活で実際に使える例文を紹介します。状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。
- 孫に頼まれたからといって、運動会のムカデ競争に出場するのは年寄りの冷や水だ
- 定年退職をしたら登山を始めるという父に、年寄りの冷や水だからやめた方がいいと伝えた
- 祖父は「自分はまだ若い」と言ってむちゃをするので、年寄りの冷や水だと家族みんなが心配している
- 久々にゴルフをしたらひどい筋肉痛になり、息子に年寄りの冷や水だと言われてしまった
- 洋画にはまり、年寄りの冷や水ですが、英会話教室に通い始めました
- 年寄りの冷や水と言われないように、適度な運動を続けたい
年寄りの冷や水の言い換え表現をチェック
言い換えできる表現をいくつか知っておくと、表現の幅が広がります。また、似たことわざについても紹介するので、実際に使ってみましょう。
言い換えに使える類語
起こり得る結果を深く考えずに危険な行動をするという意味の『無謀』『むちゃ』などに言い換えが可能です。例えば「運動をしたこともないのに、いきなりテニスのレッスンを受けるのは無謀(むちゃ)だ」のように使います。
日常会話では『無鉄砲』『向こう見ず』『命知らず』なども使いやすいでしょう。「定年退職後はフルマラソンに挑戦したいと言ったら、無鉄砲(向こう見ず・命知らず)だと反対された」という使い方ができます。
似た意味のことわざを紹介
似た意味のことわざに、『老いの木登り』があります。年寄りが木登りをするのは無謀だという意味です。若者には勝てるわけがないし、これから挑戦するのは無謀だと意味の『年寄りの力自慢』も言い換えが可能です。「周りからは老いの木登りと言われているが、ジョギングを日課にするつもりだ」というフレーズで使えます。
『飛んで火にいる夏の虫』も使用可能です。自分から率先して危険な状況やトラブルに飛び込んでいくことのたとえです。いずれのことわざも、そのまま置き換えるだけで使えるので、覚えておくと役立つでしょう。