■茂木雅世のお茶でchill out!
最近、気になって仕方がないものがある。
どんなお茶?と聞かれそうだが、お茶ではない。
お茶の実だ。
それもそこからとれるオイル“茶の実オイル”が気になっている。
以前、茶の実オイルを使った「グリーンティージェノベーゼ」というソースをクラッカーに乗せて頂いたことがあったのだが、脂っこくなくて、とてつもなくおいしかった。
そんな話を友人にすると「お茶って実できるの?…っていうか花もみたことない」という答えが返ってきた。
そうだろう そうだろう…。
私もしょっちゅう見るわけではない。見られたらラッキーとさえ思っていたりする。
実は先日、お茶の実を専門に研究しているお茶の実研究家の下山田力さんとお話をする機会があった。
2012年から農薬・化学肥料不使用でつくった国産のお茶の実オイルを販売する会社を始めた下山田さんは、自分達でお茶の実を栽培するための畑まで作ってしまったという。
ツバキ科の植物であるお茶は、椿に似たかわいい白い花を咲かせ、その1年後に実をつける。
しかし、この“花”と“実”
お茶農家さんが、日々おいしいお茶を作るためにお茶畑の手入れをしているからこそ、通常はあまり目にすることがないのだという。
更に、お茶は自家不和合性の植物で、同じ品種同士だと結実できない特徴を持っている。
しかしその一方で、通常お茶農家さんは品種ごとに分けて育てていることが多いため、実が出来やすい環境ではないというのもお茶の実をあまり目にしない理由の一つであるようだ。
そんなお茶の実だが、いっぱい集めたとしてもほんの少しのオイルにならないというのだから驚く。
超、超、貴重な存在なのだ。
見た目のかわいさだけでなく、その存在のレアさ。
お茶好きとしては、どうしたって気になってしまう。
聞けば、この茶の実オイルは食べるだけでなく、肌に塗っても良いという。
下山田さん自身も、もともと肌が弱く、茶の実オイルに興味を持ったのもそういうことが重なったからだそうだ。
試しに、下山田さんが作っているという茶の実オイルを配合したというクリームを手に塗ってみたが、驚くほどしっとりしていて、感動した。
マリーゴールド色のオイル。ナッツのような芳醇な香り。
控えめに言って最高なのだ。
オイルをただ眺めているだけでも心が洗われるような美しさなので、デスク横に置いて、良く眺めている。
下山田さんが茶の実オイルの事業を始めた頃は、まだ情報も少なく、お茶の実メインで事業をしている人もほぼいなかったそうだ。
誰もやっていないのだったら、やってみようと手さぐりながら続けてきたそうだが、その努力もあったからだろう、最近では茶の実オイルに興味を持つ人も増え、仲間も増えてきたという。
現在では、そんな仲間とともに年に一度「茶の実油サミット」を開催し、茶の実オイルにまつわる情報交換などをするまでになっている。
近年、耕作放棄地が増えているが、こうした放棄されたお茶畑にはお茶の実が生っていることが多い。
お茶の実。そしてそこからとれるお茶の実オイル。
これから色々な面で注目される存在になるのではないかと個人的にもとてもとても注目している。
ポーチにポンと茶の実オイル。
リラックスしたい時に手の甲にちょっと出してぬりぬり…という新たな楽しみを手に入れてしまった私。
尊すぎるお茶の実オイルへの偏愛が止まりません。
文/茂木雅世(もき まさよ)
お茶好きが高じて、2009年仕事を辞めてお茶の世界へ。2010年よりギャラリーやお店にて急須で淹れるお茶をふるまい始め、現在はお茶にまつわるモノ・コトの企画・商品プロデュース・コラム執筆やメディア出演などの活動を行っている。
ゆるっとお茶を楽しもうが合言葉の“ゆる煎茶部”代表。
FMyokohama「NIPPON CHA茶CHA」では最新のお茶情報を毎週発信中。
煎茶道 東阿部流師範/日本茶アーティスト/ティーエッセイスト
オフィシャルサイト:https://ocharock.amebaownd.com/
Twitter:https://twitter.com/ocharock